今更だな>北海道大の日置(へき)幸介教授は最近、米国で開かれた地球物理学連盟の学会で、「地殻が揺れる数分前、最長で数日前から地表と空気の電磁気信号が異常な状態となる事実を確認した」 大分前からある話で 既にここでも紹介した www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~geodesy/jindex.html http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~heki/pdf/Heki_ZJ2012.pdf 地震予知総合研究振興会「地震ジャーナル」53 号, 2012 年 巨大地震直前に増える電離圏の電子 日置 幸介 北海道大学理学研究院 1.はじめに 1855年の安政江戸地震の直前に永久磁石が磁力 を失った話を聞いて、幕末の賢者佐久間象山は地 震予知器を作ったそうだ(榎本, 2002)。トリブッチ (1985)は、大気中の帯電エアロゾルによって同じ極 性に帯電した物体間の静電気的な反発でこの現象 が説明できるとした。米国では1989年のロマプリ ータ地震直前にULF帯の電磁波放射があったこと が報告されている(Fraser-Smith et al., 1990)。このよ うに地震が電磁気的な前兆を伴った事例は多く知 られている。 今日の電磁気的な地震前兆の探求は、地電流 (Uyeda and Kamogawa, 2008)や、VLF 帯(Molchanov and Hayakawa, 1998)やVHF帯(Moriya et al., 2010)の 電波伝搬異常が中心となっている。それらは限ら れた数の特定の観測点で特殊な目的のために設置 された観測装置によるものであり、一般的に地震 との空間的な相関を立証することは容易でない。 フランスのDEMETER衛星(e.g. Němec et al., 2008) は、これを乗り越えるために打ち上げられたもの だが、衛星が震源域上空を通過する頻度は限られ る。こんどは時間的な相関の立証に問題が生じる のだ。 2011年3月11日の05:46UTに発生した東北地方太 平洋沖地震は、太平洋プレートが東北日本の下に 沈み込む日本海溝のプレート境界を、長さ約450 km、幅約200 kmにわたって破壊した。国土地理院 が運用するGEONET (GPS Earth Observation Network)は、日本列島に敷き詰められた千局を超 える全地球測位システム(GPS)の連続観測点から 成り、1990年代半ばの観測開始以来日本列島の地 殻変動を観測してきた(e.g. Heki, 2007)。GEONET は日本列島の大地の動きをほぼ二次元的にとらえ られるが、東北沖地震に伴う地殻変動もOzawa et al. (2011)を始めすでに多く報告されている。 超高層大気である電離圏には太陽からの放射に よって中性大気から弾き出された電子が多く漂っ ており,日本上空では高度300km付近で最も電子 が濃い。高度約2万kmのGPS衛星から送信されたマ イクロ波は電離圏通過時に電子によるわずかな遅 延を受ける。遅延はマイクロ波の周波数の自乗に 反比例する。それを利用して、異なる周波数のマ イクロ波の遅延を比べれば、衛星と受信機を結ぶ 線上にある電子の総数(Total Electron Content, TEC)がわかる。ここでは、GPS網によって見出さ れた、巨大地震に先だって生じる電離圏のTEC異 常(Heki, 2011)について紹介する。 2.2011年東北沖地震とTECの変動 TECを用いた研究の対象のひとつに、固体地球 における現象に起因する電離圏の擾乱がある。地 震時電離圏擾乱(Coseismic Ionospheric Disturbance, CID)はその一つであり、GPSを用いた最初の研究 (Calais and Minster, 1995)以来、筆者を始め複数の 研究グループが取り組んでいる。その実体は震源 域における地面や海面の上下運動や表面波(この 場合はレーリー波)によって励起された音波(Heki et al., 2006; Rolland et al., 2011)、あるいは内部重力 波(Occhipinti et al., 2008)が電離圏高度まで伝搬し て作った電子の濃淡である。 ウェブ(terras.gsi.go.jp)で公開されている全国約 千二百点の国土地理院GPS連続観測網のデータを 用いて,2011年東北沖地震前後のTEC変化を調べ てみた。図1Aは地震前後のTECの変動をそのまま 描いたものである。なおGPS位相データには整数 値バイアスがあり、時間変化のみが意味を持つ(絶 対値に意味がない)。仰角が低い(地平線に近い) 衛星では電波が電離圏を斜めに貫くため,遅延が 見かけ上大きくなる。そのため昇っては沈むGPS 衛星の動きに応じて、TECはU字型のゆっくりとし た変化を示す。地震発生時(5:46UT)には八個のGPS 衛星が観測可能であったが、音波によるCIDは5, 15, 26, 27, 28の各衛星で、地震約八分後に始まる不 規則な乱れとして見える(Astafyeva et al., 2011)。ま た衛星18, 22で地震の40-80分後に生じたきれいな 振動は内部重力波によるもので、地図上に描くと 震源を中心としたきれいな同心円状とな る (Tsugawa et al., 2011)。電離圏を高度300 kmの薄い 層で近似して、その層を視線が貫く点の地図上へ の射影をSIP (Sub-ionospheric point)と呼ぶ。その軌 跡を図1Bに示す。 次に地震直前の非振動的なTEC変化を取り出し て眺めてみよう。図2Aは東北から関東にかけた五 つのGPS局から15番衛星を通して見た東北地方上 空のTECの時間変化である。斜め方向のTECなの で見かけのU字型変化が見える。地震十分後のCID に加えて、地震の60分前から40分前あたりから顕 著な正の異常が始まっていることがわかる(電子 数の絶対値の増加というより周囲に対する相対的 な増加)。異常は東北の局で大きく,震源域から 離れるに従って小さくなる。TEC異常は,CIDによ る電離圏の揺れが治まった頃には消えている。こ こではOzeki and Heki (2010)に倣い、鉛直方向の TECが時間の三次多項式に従うと仮定して最小二 乗法を用いてモデルを推定した(なめらかな曲線)。 推定の際には、地震に伴う異常部分(UT5.2-6.0)を 除いている。 モデルからの差に天頂角の余弦をかけて鉛直方 向に射影したものを「異常」と定義し,地震の一 時間前、二十分前、一分前におけるそれらの分布 を色で図3に示す。一時間前にはなかった正の異常 が二十分前には現れており、地震に向けて大きく なっている。異常の大きさは鉛直方向で最大で約 2.3 TECU (1 TECUは1 m2 あたり1016個の電子があ ることを示す)で、この時刻の全電子数の一割弱に 相当する。TECが正異常を示す地域は震源域とほ ぼ重なる。同時に震源域から遠く離れた西南日本 では負の異常が現れており、異常が電子の「純増」 ではなく「移動」によるものであることを示唆す る。 図2や図3と同様の図は15番衛星以外に9, 26, 27 番の諸衛星を用いても描くことができるが、それ らはHeki (2011)のオンライン付属資料を参照され たい。正の異常が現れる領域は衛星によって微妙 に異なるが、それは本来三次元的な分布を持つ電 子密度を高度300 kmの面に二次元的に投影したこ とからくるものである。 全球電離圏地図(Global Ionospheric Map, GIM) は世界中のGPS局を用いて(ただし日本からは数 局のみ)日々作成されている。図2左には、スイス・ ベルン大学のデータセンター(ftp.unibe.ch)からダ ウンロードしたGIMを用いて、0038局と15番衛星 を仮定して計算したこの時刻の斜めTECの変化も 描いてある。GIMの空間分解能の目安は緯度が2.5 度、経度が5度程度 (Mannucci et al., 1998) と低い ため、細部は失われているが、本研究で求めた地 震前のTEC正異常と同様の正異常が見られる。こ れはGIMの導出に岩手県水沢局(図2B)のデータ が用いられているためであろう。 3.他の大地震との比較 TECは地震がなくても宇宙天気の都合でしばし ば上昇する。たとえば太陽フレアに伴って紫外線 の放射が増えれば電離が促進されて電子が増える。 ただしこの場合昼半球全体で電子が増え、震源上 空のTECだけが増えることはない。またオーロラ 帯から巨大な波が南下してくることもある(大規 模移動性電離圏擾乱)。2011年東北沖地震はたま たま磁気嵐の最中に発生しており、地震と関係な い擾乱が多く発生していた可能性がある。 図2や図3で見られたような地震前TEC異常が東 北沖地震の前兆であるかどうかを判断するには, 他の巨大地震の前にも類似の現象がみられるかど うかを調べるのが早い。そこで,2010年二月に発 生したチリ地震(Mw8.8) (Moreno et al., 2010)、2004 年十二月のスマトラ・アンダマン地震(Mw9.2) (Banerjee et al., 2005) 、2007年九月のスマトラ・ブ ンクル地震(Mw8.6) (Gusman et al., 2010)の前後の TEC変化を,入手可能なGPSデータを使って東北 沖地震の時と同様な解析を行ってみた。特に、2010 年チリ地震と2007年ブンクル地震は、地磁気活動 が静穏な時期に発生しており、地震前に同様な TEC異常が生じたかを見ることは重要だ。 その結果,チリ地震では17, 20, 23の三つのGPS 衛星で、東北地方太平洋沖地震の半分程度の大き さの正のTEC異常が地震の40-50分前に始まり,電 離圏が揺れ始めるまで継続していたことが確認さ れた(図4)。同様のTEC異常は2007年ブンクル地震 でも8, 25, 27の衛星で見いだされた。2004年スマト ラ・アンダマン地震の発生時は地磁気活動がやや 活発であったが、どの地震よりも大きな5 TECUに 達する地震前のTEC正異常が、もっとも地震モー メント解放の大きかった断層セグメントの上空で 見られた。図5はこれらのM9クラス地震から代表 的なTEC変化データを取り上げて比較したもので ある。ちなみに2005年ニアス地震(Mw8.7)について も地震前後のTECを調べたが、その時間帯はプラ ズマバブルの活動によるTECの乱高下が激しく、 意味のあるデータが得られなかった。 次にM8クラスの地震に目を転じる。1994 年北 海道東方沖地震(Mw8.3)(Tsuji et al., 1995)は、東北 沖地震が発生するまでは、GPS連続観測網が整備 されて以来最大の地震であった。この地震の前に は弱いTEC正異常が見つかった(図5)。一方2006 年千島地震(Mw8.2)や2003年十勝沖地震(Mw8.0)で は、地震時のCIDは綺麗にみえるものの、地震前 のTEC異常は確認できなかった。本現象はM8台で も大き目の地震でようやく見える前兆なのだろう。 Heki (2011)のオンライン付属資料では、図2に示 された曲線の一つについて、同一の局と衛星の組 み合わせでのTEC変化を地震前後四か月にわたっ て調べたものを掲載している。最大の異常は本研 究で示した地震直前のものだったが、それ以外に もある程度大きなTEC上昇が数回みられた。それ らはすべて秒速数百メートルで極域から南下して くる大規模移動性電離圏擾乱だった。 4.モデル 地震直前になぜ上空でTECの正異常が生じるか の本当の理由はわからない。しかし地表近傍に正 電荷が溜まることで説明できる可能性はあると思 う。正電荷を供給するメカニズムとしては,圧縮 された火成岩から正孔が拡散してくる現象が室内 実験で知られる(Freund, 2001; Takeuchi et al., 2006) が、実際の地震前にそのような現象が生じたこと を野外で直接観測した例はない。 Kuo et al. (2011)は、地表の電荷によって大気中 に上向きの電流が流れ、電離圏に達して地磁気の 磁力線に沿った領域の電位を上げることを数値計 算で示した。電位の高い領域から放射状に生じる 電場が磁場と相互作用することによって、西側で は電離圏電子が下降、東側では上昇する。その結 果、本研究で見いだされた程度のTEC変化もつく れるらしい。いずれ原因を特定するには、電磁気 的なセンサーを備えた観測局をGPSと同じくらい 密に展開する必要があるのかも知れない。 5.おわりに これまでの地震前兆報告の多くは普遍性に乏し く追試が容易でなかった。しかしGPSデータの入 手は簡単で,それを用いたTECの解析も難しくな い。筆者のホームページではRINEX形式のGPS生 データから衛星ごとのTEC時系列の情報を抽出す る簡単なプログラムを公開している(日置他, 2011) ので、興味を持った読者各位は自ら試してほしい。 地震直前のTEC異常の物理的過程が解明され、 直前予知に有用であるという合意が得られれば、 TECの分布と変化がリアルタイムで監視される時 代が来るかも知れない。データ収集には技術的問 題はないが、ゆっくりと始まるTEC異常を宇宙天 気の影響と区別するソフトウェア的な課題は残る だろう。かつては盛んだった地震直前予知研究は、 我が国では兵庫県南部地震以来久しく沈滞してい る(上田、2011)。本件を機会に実用化に向けた 研究の活性化を期待したい。 文献 Astafyeva, E. I., P. Lognonné, and L. M., Rolland (2011), First ionospheric images of the seismic fault slip on the example of the Tohoku-oki earthquake, Geophys. Res. Lett., L22104, doi:10.1029/2011GL049623. Banerjee, P., F. F. Pollitz, and R. 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