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鉛直キラーパルスについては、原発の危険性だけでなく、高層ビルや陸橋なども被害を被る可能性があります。
http://park14.wakwak.com/~tokiwa/kaihou/tokiwa-75/22hiroba-maehara2.pdf
阪神淡路大震災20周年を迎えて思うこと 見落とされてきた地震時鉛直キラーパルス
土木建設系関西地区同窓会 前原 博(土木42年卒)
1.課題とその背景
今年は阪神淡路大震災20周年になり、10月には日本地震学会の記念大会が神戸で開かれます。4年前には東日本大震災が起こり、津波の大被害と深刻な原発事故が生じ、まだ復旧も緒に就いた程度で深い爪跡を残しています。 ところで大地震の自然現象には破壊的な衝撃的鉛直動の現象があるのに、現在それがすっかり忘れられていることに気付かされました。
この現象の一端は古くから知られており、船舶工学の専門家から“地震時に船舶を損壊さす波は粗密波(縦波)であることは常識である。”と指摘されました。けれどもその波動は旧来の地震計では記録できない周波数帯にあるため、これまでに正確には記録されていません。そのため地震学や耐震工学の専門家を始め論壇やマスコミ、さらに業界や世間一般も、海では常識の事柄が陸では現在すっかり忘れられています。
兵庫県南部地 震(M7.3、1995)では衝撃的鉛直震動による構造物の破壊例が多くあり
ましたが当時それらは例外とされました。その 後、 新 潟 県 中 越 地 震(M6.8、2004) で は 2515gal、岩手 ・ 宮城内陸地震(M7.2、2008)では3866gal、クリストチャーチ地震(M6.1、2011)では2159galの鉛直動が記録され、都市部でも1851galが生じて大きな値が注目されるようになりました。
そして東北地方太平洋沖地震(M9.0、2011)が起きました。阪神淡路大震災でも想定外という言葉が使われましたが、衝撃的鉛直震動による破壊例は例外という範疇に当時は納められました。しかし原発事故を目前にしては、想定外も例外も認められなくなりました。こうした情勢に至り、この現状を是正すべきとの思いを持つ人達が4年前に集い活動を始めました。その内容の一部を話の糸口として震災20周年を迎えての随想を述べさせて頂きます。
2.阪神淡路大震災当時からの雰囲気
阪神淡路大震災当時の出版本に、図-1(a)(b) ,の跳び石と跳び埋もれ木の絵があります。例外とされた橋脚の特殊破壊の例(図-2と図-3)等を被災現場で見た視察の方々は、ほぼ全員が衝撃的鉛直震動による破壊と直感していましたが、地震計による記録波形が後日公開されると、その見方は取り上げられなくなりました。
これには、阪神淡路大震災の復興では、まず復旧を優先したことと、追って提訴された震災訴訟問題で、構造物破壊の原因は地震計に記録された水平地震動(設計震動の約3倍)によると限定されたことがあります。そのため学界や官界及び実業界の震災報告書や、その後の耐震指針等では(水平)設計地震動(せん断波・横波)の種類と大きさのみが対象にされました。
図-1の文献の例があり、図-2と図-3の事例等を多くの専門家が視察しているので、震災の復旧時点では、難しい鉛直震動現象は後回しにして、まず復興させてからと、私も構造技術者の一員の気取りでいました。復興して周辺が落ち着いたら、衝撃的鉛直震動の課題に取組む時期が来ると予想していました。
しかし、震災訴訟の和解までに10年を要したことと、その間に震災関連の資料は訴訟担当部所のみしか扱えず、秘匿に近い状態になり、被災事例の詳しい比較検討はできない状況が永く続きました。15年後に一部開示されましたが、以前と似た状態で現在に至っています。
3.近年の調査内容から
問題の強力な衝撃的鉛直震動の現象は、地震計による正確な記録波形がないので、その正体は不明です。現状でそれを調べるには海震や跳び石の現象、体験証言及び構造物の破壊状況等の資料を詳しく調べることです。そうした中でわかった重要な事柄を以下に述べます。
(1)海震現象からわかったこと
図-4は伊豆半島東方沖地震(M6.7,1980)での余震時にハイドロホンで計測された波形の一例で、現在ある観測波の内の貴重な例です。周波数分析がされてないので、波形図から卓越周期は60〜70Hzと推定しました。この周波数帯では旧来の地震計では記録されません。
表-1は昭和三陸地震(M8.1、1933)での海震の体験記録です。本震でも余震でも強烈な鉛直震動を永く受けています。他にも海震の体験記録は多くありますが、国内で船が被害を受けた事例は報告されていません。
表-2は海外での海震による損壊例に、兵庫県南部地震でのフェリーの被害を加えたもので、まれに大型船が海震の被害を受けています。
図-5は兵庫県南部地震時の明石海峡付近のフェリーの位置図です。その中のあさぎり丸とクイーンダイアモンド号の詳しい位置が図-6です。この両船は海震の衝撃を二度受けており二度目の方が強力です。クイーンダイアモンド号の体験記録と、検潮所記録による津波波源域の研究文献を元に、離岸距離(2km)と波速(700m/分)から二度の衝撃波の間隔を約3分と推定しました。この時間間隔はあさぎり丸が2度目の衝撃を受けるまでに行った点検時間に馴染む時間です。最近得た事柄ですが、能登半島地震(M6.9、2007)で富山湾水橋港沖1km程(震源距離80km弱)のプレジャーボートが、初期衝撃後ラジオの地震情報を聞いた直後に衝撃を受け、右舷が身長程上がり転覆しています。
(2)橋脚等の破壊事例からわかったこと
図-7は衝撃的鉛直震動による典型的な橋脚の破壊例が生じた、2本柱区間の構造断面図です。図-8は典型的破壊例の代表で、橋脚(神P465)の柱が引張破壊(爆裂型)をした例です。柱頭部の鉄筋籠が裸状で露出し、中のコンクリートが跳び出して、向こうが透けています。
図-9は同じ橋脚(神P472)の2本の柱で引張破壊((a)爆裂型)と圧縮破壊((b)傾斜型)が生じた例です。図-9(a)、(b)の2本の柱で破壊形態が異なる状況は水平地震動による破壊ではないことを表します。図-8と図-9(a)が示す鉄筋が直立している状態は、この破壊では水平力は作用していないことと、その破壊は主震動の後で生じたことを表しています。そして約100m離れた橋脚(神P477)で図-9(a)、(b)と同じ破壊状態の組み合わせの破壊が生じています。これらの3橋脚の分布状況は橋脚を破壊した衝撃的鉛直震動は孤立波(局在波)である事を表しています。
図-10と図-11は阪神淡路大震災の被害を代表する、倒壊高速道路のピルツ橋脚(17基)の一部で、特殊な痕跡がある四橋脚の内の2例です。この四橋脚の柱は倒壊時に柱長さが約3m短くなりました。図-10では柱鉄筋が全方向に湾曲する軸圧縮提灯座屈をした後に倒れています。
図-11では柱主鉄筋に直角のクビレがあり、それが引張り領域まで分布(白色破線)しています。この痕跡は倒壊前にこのクビレに沿う斜め亀裂の圧縮破壊が生じ(北西側に落下)、その後倒れたことを表します。他の2例の柱は大きな斜め亀裂を伴い北西側に落下(圧縮破壊)しその後倒れています。柱3基が北西側に落ちたことが17基を北側に倒壊させた直接の原因です。
付近の住民の証言では、主震動が治まった後で見た時計は5時48分で、その後階下に降りようと非常階段に出た時に大音響を聞いています。この大音響は衝撃的鉛直動が生じた時と見なせば、前節の海震の事例とも、また前述の橋脚の主震動後の破壊とも傾向が一致します。
そして上記の特殊な痕跡をもつ橋脚4基は不等間隔に生じ、その分布は衝撃的鉛直震動が孤立波(局在波)であることを反映しています。
その他の橋脚にも衝撃的鉛直震動による破壊事例が多くあります。また盤滝トンネルの覆工側面の鉄筋座屈損壊の事例では、トンネル寸法から周波数は100hz程と、損壊規模から局在波の中心規模は10数m程度が推定されます。
一方、建築構造物ではビルで層間破壊をした事例が多くあります。それらのほとんどは目立つ水平変位を伴っておらず、衝撃的鉛直震動による破壊と見られます。特に十勝沖地震(M7.9 1968)での函館大学校舎の破壊例は注目され、驚異的な局在波の存在が予測されます。
4.地震研究の新たな展開への期待
問題にしている衝撃的鉛直地震動の現象は、強力なエネルギーが集中した局在波として生じていることが想像されます。これまでキラーパルスといえば、せん断波の極大波を意味していますが、表題にあげた鉛直キラーパルスは、強力な衝撃的鉛直地震動の局在波を指します。
それを正確に捉えることは容易ではなく、密度の高い観測態勢を敷く必要があります。そして地震の直前予知を実用化さすことが必要です。それには高エネルギー加速器研究機構(KEK)での、粒子加速器の運転管理(性能確保業務)が超高精度地盤変形観測に相当して、地震直前予知の実務を兼ねており参考になります。
また数学モデルとして形が変化しにくい孤立波にソリトンがあります。その中の非線形発展方程式の解の一例に図-12に示す釣鐘型の波形があります。その(a)図は孤立波の断面で、(b)図はその波が連成した例です。エネルギーが集中した局在波の想像図としてこの形が考えられ、非線形波動の研究が望まれます。
5.まとめにかえて
冒頭で述べた海震の常識が、陸で忘れられている現状に関連し、現在の耐震基準には破壊力が強い衝撃的鉛直地震動は欠落しています。
この問題は単に自然科学分野の知識や研究の課題だけでなく、広い分野に係わる総合的な情報管理体制の国民的な課題に行き着きます。かつて敷衍していた海震の常識が有識者だけでなく、世間一般から忘れられていった背景と時代経過には、原発の建設と普及から運転の時代が重なります。国家的施策の表の遂行に伴い、力を持つ影の部分から生じる情報誘導が派生させた、解明しなくてはならない課題です。
一方、原発の安全性は本体部分だけでなく、制御機能が正常に働くことが前提になります。詳しくは知りませんが、複雑で精工な制御装置類は強力な衝撃的鉛直地震動には弱いことが想像されます。その安全対策には、数を減らし、高度な安全管理体制をとる手段しかありません。
((一財)地球システム総合研究所 上席研究員)
補足:海震,橋脚破壊,地震予知の文献(公開)は国交省近畿地整局のHPで、研究発表会欄の防災保全部門の前原・櫻井の論文(平成24年度以降の毎年度)を参照下さい。
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