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自分を励ます独り言、実際に効果的=英研究
セルフトークは感情のコントロールだけでなく、より良い成果を挙げる上でも有効であることが調査で明らかに
By SUSAN PINKER
2016 年 7 月 29 日 16:29 JST
たいていの人は自分の能力を高めたいと考えている。「競争相手より自分のほうが優れている」と自分に言い聞かせることは米国人にとって当たり前のことであり、自信を持てない人は米国人ではないかのような印象さえ与えかねない。
とはいえ、自分を鼓舞すれば本当により良い成果を挙げられるのだろうか。
心理学の世界では以前から、セルフトークや自己教示、つまり望んでいない思考や行動を変えるために自分自身に語りかけることで、気持ちも切り替えられることが分かっている。
セルフトークは認知行動療法の技術の1つで、例えば、落ち込んでいるときに「私は新しい友達をつくることができる興味深い人間だ」とか、「私は一度に1つのことに集中できる」といった言葉を自分にかければ、考え方や物事に対応する能力の修正に役立つ。
最近、インターネットを使った大規模な研究が行われ、こうしたセルフトークが感情のコントロールだけでなく、より良い成果を挙げる上でも有効で、しかも効果が比較的早く現れることが分かった。
研究のきっかけとなったのはスポーツ心理学。この分野の研究によると、スポーツ選手は短時間の持久力テストや、バレーボールのサーブなど一瞬の間に高度な技術を発揮する場合に自分に声をかけることで、粘り強さを発揮できることが証明されている。
研究は英ウルバーハンプトン大学のスポーツ心理学者アンディ・レーン氏が指揮し、BBCの一部門であるBBCラボ(現在は閉鎖されている)が協力した。俳優のリッキー・ジャベイス氏と陸上短距離選手のマイケル・ジョンソン氏が2012年のロンドン五輪の前にBBCに出演し、この研究を宣伝したところ、心理学研究としては極めて多い4万5000人近くが被験者として研究に参加した。
被験者は自宅のコンピュータで質問票に従って自分の感情について回答してから、数を見つけるオンラインゲームを行った。研究は1年かけて行われ、今年3月に学術誌「フロンティアーズ・イン・サイコロジー」に発表された。
研究では、練習と基準検査を終えた被験者を無作為に、「セルフトーク」グループ、より速く反応する自分を想像する「イメージ」グループ、起きるかもしれない状況への反応をゲームをしながら考える「if-thenプラニング」、比較対象のための統制群の4つに分けた。
被験者は前回の自分の成績だけでなく、被験者の技術レベルに調整されたアルゴリズムという「敵」より優れた成績を出すよう求められた。プレッシャーがかかったときに、どのようなテクニックが感情のコントロールに役立つかを知るためだ。
研究の結果、単純なセルフトーク――「一番になりたい」や「できるかぎりがんばるぞ」などの言葉を自分にかけること――が最も有効で、動機を高める言葉を使った場合は特に有効だったことが分かった。「90点をとるぞ」など具体的な目標を重視したセルフトークはあまり効果がなかった。
ただし、水泳でタイムを縮めようとしたことがある人や、バイオリンを弾きこなせるように努力したことがある人なら分かることだが、努力と技術は全くの別物であるということに注意することが必要だ。
フロリダ州立大学のロイ・バウマイスター心理学教授は上記の研究で行われたような数を見つける課題について、「努力に基づくもので、技術はあまり関係ない」と指摘。「この場合、セルフトークは努力に対して有効である可能性がある。技術についてどうかは、私にはよく分からない」と語った。
レーン氏も、研究結果を当てはめるのは例えばウエートトレーニングや短距離走など非常に大きな力を発揮することが必要な短時間の課題にとどめるべきと認めている。
「このような状況下では、人は自分に否定的な言葉をかけることが多く、その結果、不愉快な感情を抱える。しかし感情を訓練して、『あと5秒か10秒がまんできる』と自分に言い聞かせることも可能だ。やる気を失う代わりに、もう少しがんばるように自分に言い聞かせるべきだ」(レーン氏)。
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「脳トレ」で認知症の発症を遅らせられるか
「スピードトレーニング」の効果を示す研究結果
脳トレゲーム「ダブルディシジョン」の一場面。プレーヤーは2台の青い車を見分けないといけない
By SUMATHI REDDY
2016 年 7 月 29 日 15:34 JST
ある特定のタイプの頭の体操が、認知症の発症を遅らせることに初めて成功するかもしれない。
新たに発表された10年間にわたる研究の結果によると、コンピューターを使う脳トレーニングで視覚情報の処理をより迅速に行わせる「スピードトレーニング」による効果が、一般によく知られた他の2つの脳トレ法(記憶力の訓練と、論理的思考の訓練)による効果よりはるかに高かった。研究チームは、合計11〜14時間のスピードトレーニングを行っただけで、10年後の認知症発症リスクが48%も減る可能性があることを突き止めたという。
この「高齢者向け先進的認知力トレーニング(ACTIVE=Advanced Cognitive Training in Vital Elderlyの略)」の研究結果は、カナダ・トロントで開かれていた国際アルツハイマー病会議(AAIC)で24日に発表された。行動的介入が認知症の発生を抑制し得ることを示した初の研究だと考えられている。年を取っても頭を柔らかく保つため、さまざまな脳のトレーニングを実践する人は少なくない。
ACTIVE研究の一環として発表された先行研究では、試した3種類の脳トレがすべて、認知機能および(食事を作るなどの)日常生活能力の改善につながることが示されていた。中でもスピードトレーニングは、その他の脳トレ法を上回る効果を示した。例えば自らの過失による車の衝突事故の発生を減らす、健康状態の悪化を防ぐという点で効果が大きかった。スピードトレーニングは、うつの症状を予防する効果を示した唯一の介入法でもあったという。
脳トレゲーム「ダブルディシジョン」の上級レベルの一場面。プレーヤーは多くの障害物の中でルート66の標識の位置を見つけないといけない
オハイオ州クリーブランドに本拠を置く医療機関クリーブランド・クリニックのウェルネス(健康)研究所の代表を務めるマイケル・ロイゼン氏は「これで認知症発症のリスクを50%近くも減らせるのだとしたら、すごいことだ」と話す。同氏はこの研究に関わっていない。
研究は米国立老化研究所や国立看護研究所から資金援助を受け、全米各地の6つの試験現場で、65〜94歳の健康な人2832人を対象に実施された。被験者は、3つの認知訓練プログラムのうち1つを受ける群か、コントロールグループ(比較対照群)にランダムに割り当てられた。記憶力訓練と論理的思考訓練は、スピードトレーニングのようにコンピューターを使うのではなく、インストラクターに付いて行われたが、これら2つの訓練によって認知症発症のリスクが下がることはなかった。
認知症発症リスクが48%低下
スピードトレーニング群の被験者は、1日1時間のトレーニングを5週間にわたって10回(合計10時間)受けた。インストラクターは手助けのため近くにいた。一部の被験者は1年後と3年後に追加の強化訓練を受けた。
サウスフロリダ大学加齢医学部バード・アルツハイマー病研究所のディレクター、ジェリー・エドワーズ博士 ENLARGE
その結果、合計10時間のトレーニングを受けただけの被験者が10年後に認知症を発症するリスクは、平均で33%低下した。これに対し、追加訓練も受けた他の被験者のリスクは48%低下した。このデータはまだ査読を受けておらず、医学誌にも発表されていないため、暫定的なものと考えられている。今回の最新分析を指揮し、会議で発表したジェリー・エドワーズ博士(サウスフロリダ大学加齢医学部バード・アルツハイマー病研究所のディレクター)は、チームとしてできるだけ早急に結果を公開したいと思っていると述べた。
脳トレゲームは近年大きなビジネスになっている。だが一部の研究者たちは、ゲームが認知力の低下を抑えられる、あるいは症状を改善させられるといった脳トレプログラムのメーカーの主張に懐疑的な見方を示している。
連邦取引委員会(FTC)は今年、脳トレプログラム開発会社Lumos Labsを相手取った欺瞞(ぎまん)広告をめぐる訴訟で、同社に200万ドル(約2億1000万円)を支払わせることで和解した。FTCは同社が開発した脳トレプログラム「Lumosity」について、認知症や加齢に伴う認知機能低下を予防するという虚偽の主張を行ったとして提訴していた。
「脳トレ製品の大半は科学を超えている」
デューク大学神経認知障害プログラムの代表を務めるムラリー・ドレイスワミ博士は「現在販売されている脳トレ製品の大半は、宣伝文句が行き過ぎで、科学を超えてしまっている」と述べ、「今回のACTIVEの結果は、この分野の信頼性を大きく向上させるに違いない」と話した。一方で同博士は、どの程度多くのスピードトレーニングが最適かという疑問はあると指摘し、結果を再現するためにさらなる研究が必要だと付け加えた。
フロリダ大学臨床・健康心理学部の代表を務めるグレン・スミス氏は、認知症を引き起こす神経生理学的プロセスにスピードトレーニングが影響を及ぼすかどうかは不明だと語る。ただ、そうした脳トレゲームは少なくとも、人々が認知症につながる何らかの脳の変化に直面した際に回復する力をつける助けになり得るという。同氏は同じような脳トレゲームを使って別の研究を行っている。
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研究で使用されたスピードトレーニングは、研究者によって開発されたが、2007年にポジット・サイエンス社(サンフランシスコ)にその権利が取得された。より使いやすいバージョンのゲーム「ダブル・ディシジョン」は、ポジット社のオンライン認知訓練サービス「BrainHQ」の一部として提供されている。会費(ダブル・ディシジョンの使用権を含む)は1カ月で14ドル、1年間なら96ドル。同社は今回の臨床試験の結果を基に、米食品医薬品局(FDA)に対して医療機器として申請する計画だと話している。
ダブル・ディシジョンでは、視線の中央に表示される物体を見分けると同時に、周囲に表示される物体も認識する必要がある。正解すると、表示のスピードが速くなったり、邪魔が入ったり、物体の区別がつきにくくなったりする。
http://jp.wsj.com/articles/SB11625300680616714172704582218330937134096?mod=wsj_nview_latest
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