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酷暑&熱中症、間違いだらけの回避法!エアコン&室内はかえって危険?なしでも快適?
http://biz-journal.jp/2016/07/post_15853.html
2016.07.12 文=新見正則/医学博士、医師 Business Journal
今回は、熱中症の話で盛り上がっています。まず“常識君”が熱中症の説明をします。
「熱中症とは体の体温を下げる機能が正常に働かなくなり、体温が上昇し、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感、疲労感、そして対処が悪いと死に至ることもある状態です」
そこで“極論君”が言います。
「まず熱中症の注意報や警報が出たら、外出などしないで、屋外での仕事も中止して、家の中で過ごすことが危険を避ける最良の手段だ!」
しかし、この意見に常識君は異を唱えます。まず、体温を下げる方法は汗です。熱い汗が滴り落ちるだけでは、体温を冷やす作用はほんのわずかです。汗が蒸発するときに気化熱が体から奪われるので、効率的に体温を低下させることができます。つまり、適切に汗をかいて、そして汗が皮膚から気化することが大切なのです。
夏に道路や庭に水を打つと冷ややかに感じることで、多くの人は実際に気化熱の重宝な働きを実感していると思います。体の水分量が不足して汗が出ない状態では冷却機能は働きませんし、また汗が出ても、汗が蒸発しなければ冷却機能は十分に作用しません。ですから熱中症は室内でも起こるのです。そしてむしろ最近は室内で発生する熱中症のほうが多いともいわれています。
理由は、汗を蒸発させるには不向きな環境があるからです。エアコンに頼っていると、快適な風が入る環境は犠牲になります。エアコンでつくった冷たい空気が逃げないように、環境が密閉されることもあります。そんな時にエアコンの設定温度が高いと、いわゆるジメジメした環境になり、最近の異常な暑さで、汗は出るがその汗が蒸発しにくいので、気化熱による冷却がうまく行われないのです。つまり室内に避難するのであれば、エアコンをしっかりと使うことが必要です。
また、昔の家屋のように風の流れを考慮して設計されていると、エアコンがなくても、適切な風によって汗が蒸発し体温が下がります。また、風がない日でも、昔は団扇や扇子などで風を起こして、そして気化熱を生じさせていたのです。団扇や扇子でなくても、扇風機でも十分にその役割は担えます。つまり、諸般の事情で比較的高温に設定された密室のエアコンや、風通しの悪い部屋でエアコンを使用しないでがんばることは、蒸し暑い環境をつくり出すので気化熱発生による冷却機能をひどく妨害し、むしろ熱中症を引き起こすのです。
■暑さに強くなる方法
次に、非常識君が口を挟みました。「そもそも、熱中症が危険だと言って、屋外から室内に避難することが大問題だ!」と言います。「戸外でも日陰にいて、そして適切に水分を補給して少々の塩分も追加すれば完璧のはずだ」と続けます。屋外は適度に風も吹くから、むしろ室内よりも安全だという主張です。
確かに、そうですね。木立の中を気持ちいい風が吹き抜けるようなところがあれば、熱中症対策にも最良と思います。ただ、最近のコンクリートやアスファルトで覆われた、そして照り返しの強い都会の環境では、気持ちの良い風が吹く場所を見つけるのはちょっと無理かもしれません。
また、非常識君が付け加えます。「暑い場所を避けるから、暑さに弱い体になるのだ。日頃から、少々の暑さは鍛錬と思って、その暑さを味わえば良いのだ!」という主張です。確かに、毎日のように炎天下で激しい運動を繰り広げている高校生などは、滅多に熱中症になりません。一方で、日頃は外での野球観戦などしないような人たちが、たまに野球の応援に行って熱中症になることはしばしば起こります。
暑さに強くなることを暑熱馴化(しょねつじゅんか)と呼びます。ボツボツと鍛えると人の体は強くなるのです。大切なことはボツボツです。突然に今までに経験がない灼熱の環境下は非常に危険です。熱中症注意報ぐらいであれば、みんなで注意しながらの運動も有益かもしれません。しっかりと水分を補って、そして塩分も少々補って、適度の休憩を取りながら周りの人の状態にも気を配って、暑い環境に耐える訓練も実は大切ですね。
小中学校が熱中症注意報のたびに屋外での体育を回避していたのでは、将来建築現場で働く人がいなくなります。工場では暑熱下の部署もあります。熱中症警報の時に無理に体育をやれとはいいません。しかし、少々の暑熱環境は、ある意味ちょうどいい勉強の機会と思って、それを利用することも理にかなっています。
今回の常識君、非常識君、極論君の意見はどれも有益でした。熱中症は汗を適切に蒸発させることができない場合に生じるのです。適切な水分補給と、適切な心地良い風の流れがある環境を整えて、この暑い夏を乗り越えましょう。
(文=新見正則/医学博士、医師)
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