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塩分制限で病気増の危険も…十分な摂取がかえって健康的?制限要は高血圧の人のみ?
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15617.html
2016.06.24 文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長 Business Journal
健康に良い食生活というと、皆さんはどういうものを思い浮かべるでしょうか?
最近では炭水化物を取らない、というのが流行ですが、少し前までは塩分の少ない食事というのが、健康食のイメージでした。それでは、塩分というものは少なければ少ないほど良いのでしょうか?
塩分が多いと血圧が上がって動脈硬化が進むとか、心臓や腎臓の働きが落ちる、というような話もあります。血圧が高くてお医者さんに行くと、「ともかく塩分は取らないようにしなさい」というような指導が今でも行われています。
ただ、その一方で塩分を取ることの重要性が、指摘されることもあります。典型的なケースは熱中症の予防です。熱中症を予防するためには、こまめに水分と塩分を取りなさい、という指導が普通に行われています。高齢者では特に脱水になりやすいので、よりこまめに塩分を取りなさいと指導されます。普通のジュースやお茶、スポーツドリンクでは塩分の補給には不充分なので、専用のイオン飲料を使用するように勧められます。ただ、それは要するに味の付いた塩水なのです。
高齢者には高血圧や心臓病、腎臓病の患者さんが多く、そうした患者さんは日頃は健康のために、塩分を制限するように指導されます。しかし、一旦熱中症の予防ということになると、今度は「たくさん塩分を取りなさい」という指導に変わってしまうのです。
こんなおかしなことがあるでしょうか?
なぜこんな不思議なことが起こるかというと、本当に健康のために取るべき塩分の量というものが、明確ではないからです。医者も栄養士も何グラムの塩分を取るのが正しいのかがわかっていないので、塩分制限が必要だ、ということになると、「塩分を極力取らないようにしなさい」というような具体性を欠く指導になり、逆に塩分の喪失が問題ということになると、「しっかり塩分を取りなさい」というような、これも抽象的な指導になってしまうのです。
シンプルに考えれば、塩分は不足していても過剰でも、同じように体に悪いのです。しかし、問題はその上限と下限が具体的にどのくらいであるのかが、明確でないことです。
■塩分摂取は多くても少なくても病気のリスクに
一体、どのくらいの塩分が本当に体にとって必要で、どのくらいを超えると健康に害になるのでしょうか?
WHO(世界保健機関)は、2025年までに塩分の摂取量を1日5グラム未満にすることを目標に掲げています。1日5グラムというのは、かなりの減塩ですから、世界的にも塩分を制限することが健康に良い、という考え方があることがわかります。
日本人はかつて平均で1日20グラム以上という、非常にたくさんの塩分を取っていました。そのために高血圧が多く、脳出血も多いという特徴がありました。戦後血圧測定が普及し、血圧を低下させるための減塩指導が始まると、血圧は低下し、脳出血も減りました。このことからわかるように、高血圧の患者さんでは、摂取塩分が多いほど血圧は上がり、血圧が上がれば脳出血などの病気も増えます。
こうした歴史的な事実から、塩分は制限するほど健康に良い、という考えが生まれたのです。
ところが、11年の「JAMA」というアメリカの一流の医学誌に、びっくりするような論文が発表されました。
高血圧の患者さんにおいて、塩分摂取量の目安になる尿中のナトリウムの排泄量を、病気のリスクと比較検証したところ、尿中ナトリウム排泄量が4〜6グラムの間が、最も心筋梗塞や心不全、脳卒中による入院のリスクが小さくなり、それより多くても少なくてもそのリスクは増加する、という結果が得られたのです。
尿中ナトリウム排泄量が4グラムというのは、食塩の1日の摂取量が10グラムくらいの場合に相当します。つまり、1日10グラムを切るような塩分制限は、かえって有害な可能性がある、という結果になっていたのです。
ただ、このデータは高血圧の患者さんの臨床試験のデータをあとから解析したものなので、尿中ナトリウム排泄量は病気による影響が否定できません。
そこで、高血圧の方もそうでない方もひっくるめて10万人余という対象者を登録して、前向きにその予後を観察するという研究が、同じ研究者のグループによって14年8月の「The New England Journal of Medicine」という一流の医学誌に発表されました。
その結果によると、尿中のナトリウム排泄量が3〜6グラム(食塩摂取量で推定7.6グラムから15.2グラム)の間が最も死亡と心血管疾患の発症リスクが低く、それより高くても低くても、リスクが増加することが確認されました。
要するに11年の「JAMA」の報告とほぼ同じように、塩分量は多くても少なくても動脈硬化などの病気のリスクになっていたのです。
■単純に「健康には減塩」は、科学的ではない
さらにダメ押しともいうべき研究結果が、今年の「The Lancet」というイギリスの一流医学誌に発表されました。この研究では、高血圧のある患者さんとない人とに最初から分類して、心血管疾患のリスクと尿中ナトリウム排泄量との関連を、再度多数例で検証しています。
その結果によると、高血圧の患者さんでは、塩分の摂取が増えるとともに血圧は上昇していて、食塩の摂取量で10〜15グラムくらいを超えると、動脈硬化の病気のリスクは増加します。しかし、10グラムより少ないとその傾向ははっきりしなくなり、7.5グラムくらいより塩分を制限すると、かえって病気は増えてしまいます。
そして、正常の血圧の人だけで解析すると、塩分は15グラムを超えても動脈硬化の病気は増えず、7.5グラムより制限すると、明らかに病気は増加していました。
つまり、塩分を制限することが健康に良いのは、高血圧などの病気を持っている人だけで、そうでない人にとっては塩分は充分に取ることがむしろ健康的だということが明らかになったのです。
ただ、注意していただきたいことは、高血圧以外にも腎臓病や心臓病では塩分が害になるということで、単純に病気の自覚がなければいくらでもたくさん塩分を取って良い、ということにはならないのです。
従って、血圧の高い方では1日の塩分は10グラムは超えないようにし、血圧が正常であれば、15グラムくらいまでは問題ない、むしろ少ないほうが体に悪い、というくらいに考えていただくのが良いと思います。
「健康には減塩」という考え方は、すべてが間違いということではないのですが、あまり科学的ではない考え方になっているようです。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)
【参考文献】
1.O’Donnell MJ, Yusuf S, Mente A, et al. Urinary sodium and potassium excretion and risk of cardiovascular events. JAMA. 2011; 306: 2229-38.
2.O’Donnell M, Mente A, Rangarajan S, et al. PURE Investigators. Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events. N Engl J Med. 2014; 371: 612-23.
3.Mente A, O’Donnell M, Rangarajan S, et al. Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertention: a pooled analysis of data from four studies. Lancet. 2016 May 20. Pii: S0140-6736(16)30467-6.
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