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理不尽な暴言吐く老人は寿命が短い?新聞や本を読まない人も死亡率が高い!
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12943.html
2015.12.20 文=熊谷修/人間総合科学大学教授 Business Journal
本連載前回記事をお読みいただき、健やかな老後を実現するには、若い頃から自身の「手段的自立」「知的能動性」「社会的役割」の能力を高める努力を怠ってはならないことはおわかりいただけたであろうか。今回はそのなかの知的能動性の能力に関して刺激的な科学データを紹介しながら、人生後半の余命のミステリアスな部分について解説したい。
超高齢社会の社会犯罪が知的能動性の能力と深くかかわっていることは意外と知られていない。シニアを標的にした振り込め詐欺が頻発している。これでもかといわんばかりの警鐘情報には触れていても、実践に行動に移せないシニアが犯罪の標的なりやすい。
この原因のひとつに、知的能動性の衰えによるリテラシー能力の低下があることを見逃してはならない。公衆の面前で理不尽な暴言を吐くシニアの悩ましい行動を目にしたとき、知的能動性の能力低下が背景にあることも考慮する必要がある。加齢に伴い知的能動性が低下することは普遍的な変化であり、早く低下してしまうのかどうかが問題となる。若者も他人事ではない。理不尽なシニアの光景を目にしたときは、将来の自分を見ているのかもしれない。
■知的能動性と余命の関係
ここで興味深いデータを紹介しよう。知的能動性の能力レベルと余命の関係である。調査対象は地域社会で元気に暮らしているシニア約1200名である。まずベースライン(初回調査時)に面接し知的能動性の能力レベルを評価する。能力レベルは次の4つの質問項目で評価できる。「はい」「いいえ」で回答を求め、「はい」が1点、「いいえ」が0点となり、満点は4点である。
(1)年金などの書類が書けますか
(2)新聞を読んでいますか
(3)本や雑誌を読んでいますか
(4)健康についての記事や番組に関心がありますか
(1)の項目は、記入を求められた書類に迅速な対応ができるか否かの確認である。ホテルのチェックイン時の書類記入をおっくうがったり、金融機関での書類の記入要領にしたがった対応に時間を要したりするなどの変化として、能力低下の兆しがあらわれる。若い諸君は大丈夫であろうが、75歳以上のシニアではよく見られる光景である。
(2)は、所要時間を聞いてはいないが、新聞を30分以上読むか否かの確認である。新聞には今日の主要テーマ、政治、国際、経済、時事、社会、名物コラムなどがある。幅広くこれらすべての情報に目を通すには最低30分は要する。
(3)は定期的に本や雑誌を読んでいるか否かである。(4)は自身の健康に目を向けライフスタイルの改善に意欲的か否かを聞いている。(2)〜(4)に関しては、「いいえ」の回答になってしまう若者も多いのではないだろうか。
実はこの能力が、人間の余命と深くかかわっている。ベースラインで4点満点のグループと3点未満のグループに分け、その後7年間追跡調査した。その結果、3点未満のグループの総死亡リスク(死亡率)は、4点のグループの約2倍の値を示していた。念を押すが、この1200名は一見するととても元気で明晰なシニアばかりである(平均年齢は約70歳)。
この関係は、余命の最大の規定項目の年齢、女性は男性より余命が長いという男女差、喫煙、運動習慣、からだの栄養状態など余命を決める多くの項目の影響を考慮しても変わることはない。そして誤差や偶然であらわれたことをほぼ完全に否定できるとてもしっかりした関係である。
このような関係は、身の回りの生活をコントロールする能力である「手段的自立」や隣人を愛おしむ能力である「社会的役割」の能力ではみられることはない。つまり、「知的能動性」の能力にみられる特徴的な関係である。「知的能動性」の能力が、他の2つの能力に比べて秀でて余命に影響するということは、とても大切にしなければならない能力であることを意味している。
換言すれば、シニア世代の余命は人間としての素敵度で決まるということである。このデータは我々の人生の歩み方に対してとても大きな示唆を与えていると思う。
これは人間の余命のミステリアスな部分である。この事実は医学では説明できない。いや、しようとしないほうがいいのかもしれない。
(文=熊谷修/人間総合科学大学教授)
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