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若いうちの薄毛化・大量の抜け毛に要注意!なぜ起こる?無理に止めると慢性化の危険
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12805.html
2015.12.10 文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士 Business Journal
忙しさや悩みが続き、抜け毛が多くなる経験をしたことのある人は、多いでしょう。仕事が夜遅くまで続き、睡眠時間を削るような生き方をしている人は、若くても髪の毛が薄くなり歯も弱って抜けそうになります。このような反応は、病気をつくる基本現象になっています。
髪の毛は皮膚が特殊化した組織です。歯は骨がさらに特殊化した組織になっています。多細胞生物は、部分部分で細胞を特殊化して、全体として調和するような構成をとっています。しかし、ストレスが強くのしかかると、特殊化を維持するエネルギーが低下するので、この特殊化した組織を保持できなくなってしまいます。見方を変えると、特殊化した組織を切り捨てて最少のエネルギー消費で命をつなぐ反応といえるでしょう。
特殊化した組織を切り捨てる反応は、基本的にはマクロファージが行い、そこにマクロファージから進化した白血球群も加わってきます。髪の毛を切り捨てるのは、皮膚の下に存在するマクロファージであるランゲルハンス細胞です。歯や歯槽骨を切り捨てるのは、骨に存在するマクロファージである破骨細胞です。そもそもマクロファージは、多細胞生物になる前の単細胞生物時代の名残の細胞で、アメーバ様のオールマイティの能力を持った細胞です。
徹夜をする、真夜中までパソコンを使う、一日中休みなく働くなどの急激なストレスが加わると、私たちの肝臓、腎臓、膵臓が悲鳴を上げて破壊されます。これらが急性に破壊された病気が、それぞれ、劇症肝炎、急性糸球体腎炎、急性膵炎です。
■熱心に止めると慢性化
では、これらのメカニズムを考察してみましょう。
肝臓は腸上皮から胆汁をつくる外分泌腺として進化してきました。もともと肝類洞は体腔に開いていましたが、その後、門脈の進化とともに血管系につながっています。特殊化の度合いが強いのです。腎臓はえらの血管系から排泄器官として進化しています。一時、造血も行っていました。腎糸球体は毛細血管の特殊化の極限にあるでしょう。膵臓は腸の分泌腺から分かれ、特殊化した臓器です。
いずれにせよ、この3つの臓器は内臓の中でも特殊化の頂点にあるので、ストレス感受性が高いわけです。強いストレスがかかると、特殊化を切り捨てる反応が起こります。マクロファージから進化した顆粒球が切り捨て反応の前線に立ちます。末梢血でも激しい顆粒球増多が見られます。これに、CD8陽性T細胞やマクロファージも加わります。
これらの切り捨て反応は、ストレスが除かれると止まり、修復のための炎症が起こります。プロスタグランジンやアセチルコリンやヒスタミンなどによって血流を増やす反応です。一転してマクロファージが修復反応に加わります。ストレスが長引くときは、血流不足に強い線維芽細胞が出現します。このとき、腎糸球体の血管内皮細胞が管(くだ)であることをやめ、タンパク尿や血尿が出現します。
マクロファージは血球系細胞を進化で生み出していますが、血管内皮細胞もマクロファージ由来です。血球を流すため自らが管になったのです。ストレスが強いと特殊化を維持できなくなり、糸球体から血液成分が漏れ出します。このようにして、内臓疾患の発症メカニズムが明らかになります。病気からの脱却は、ストレスからの脱却にかかっています。炎症は治癒のための重要なステップなので、熱心に止めると病気は治らず慢性化してゆきます。
(文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士)
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