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人体に危険なマイクロビーズ、化粧品やソープで使用野放しの実態!米国で禁止の州も
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12717.html
2015.12.04 文=佐々木奎一/ジャーナリスト Business Journal
「マイクロビーズ」という言葉をご存じだろうか。これは、化粧品、洗顔剤、ボディソープなどの「パーソナルケア製品」に含まれる「微細なプラスチック粒子」である。マイクロビーズの大きさは1mm以下で、消費者のバスルームや洗面所から下水処理施設のフィルターを通過して川や湖、海に、毎年何百万トンも流れ込んでいる。マイクロビーズは殺虫剤などの化学物質がつきやすく、これを食べた動物プランクトンや魚が体内に有害物質を蓄積する恐れがあり、食物連鎖で環境全体を汚染し、人間にも深刻な影響を与えるリスクがある。
そのため、たとえば米国ではコロラド、コネチカットなど8つの州で、マイクロビーズを含むパーソナルケア製品の製造を2017年末から禁止し、18年末に販売を禁止する法律を制定した。さらにカリフォルニア州では今年10月、生分解性のマイクロビーズを含め20年までに禁止するという法案を制定した。
筆者は昨年8月、ある媒体でマイクロビーズについて取材をした。その時は、英字新聞に基づき当時日本で売り出し中の洗顔剤、ボディソープ、歯磨き粉を対象に調べた。この取材のなかで、「製品の成分表示のなかで、マイクロビーズをどう表示しているのか?」という筆者の質問に対し、いくつかの社は「ポリエチレン」「ポリエチレン末」と回答していた。そして今年夏、マイクロビーズは「ポリエチレン」「ポリプロピレン」と表記されているケースが多い、と書いてある英字新聞を筆者は読んだ。
そこで今回は改めて「ポリエチレン」「ポリエチレン末」「ポリプロピレン」と表記されているパーソナルケア製品を独自調査した上で、取材を行った(参考:サイト「業界動向SEARCH.COM」、NPO法人・動物実験の廃止を求める会(JAVA)など)。対象は以下の26社である。
【取材対象企業】
資生堂、花王、カネボウ化粧品、ポーラ・オルビスホールディングス、コーセー、マンダム、ファンケル、ノエビアホールディングス、ドクターシーラボ、ミルボン、ナリス化粧品、P&Gジャパン、富士フイルムヘルスケアラボラトリー、サンスター、日本メナード化粧品、ライオン、ユニリーバ・ジャパン、ホーユー、アルビオン、日本ロレアル、ピアス、再春館製薬所、ロート製薬、クラシエホームプロダクツ、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン)、エスティローダー
製品の成分表示を、サイト「化粧品成分情報サイト美肌マニア」に基づき調べた。同サイトの「化粧品成分検索」で、「ポリエチレン」「ポリエチレン末」「ポリプロピレン」と入力すると、製品名がズラリと出てくる。
驚くべきことに、特にポリエチレンの入っている製品は、スクラブ洗顔剤のみならず、以下のように化粧品全般に及んだ。
アイケア、アイリンクルクリーム、ゴマージュ・ピーリング、コンシーラー、コンディショナー、ジェル・クリームチーク、ジェルアイライナー、トリートメント、パウダーチーク、パウダーファンデーション、フェイシャルマスク、プレストパウダー、ペンシルアイライナー、ポイントリムーバー、ボディソープ、マスカラ、リップグロス、リップケア、リップライナー、口紅、洗い流すパック・マスク、洗顔料、頭皮ケア
その数800製品以上(大手29社のうち17社の製品。グループ企業の製品含む)。
■さまざまな製品で使用
欧米では報道の影響もあり「マイクロビーズ=スクラブ」のイメージが強いが、スクラブ以外のものが実に多い。今年夏に国連が発表した「Plastic in Cosmetics 2015 Fact sheet」というマイクロビーズについての報告書によると、消臭剤、シャンプー、コンディショナー、リップスティック、ヘアカラー、シェービングクリーム、日焼け止め、虫よけ、モイスチャライザー、ヘアスプレー、フェイシャルマスク、ベビーケア製品、アイシャドー、マスカラなど、さまざまな製品にマイクロビーズが入っているという。そして、多くのサイズは1〜50マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)と小さい。
これほど小さいということは、プランクトンが食べている可能性もあり得るのではないか。
日本海洋生物研究所のHPによると、代表的な海の動物プランクトンのサイズは、最小のピコプランクトン(0.2〜2マイクロメートル)から、ナノプランクトン(2〜20マイクロメートル)、マイクロプランクトン(20〜200マイクロメートル)、メソプランクトン(200マイクロメートル〜20ミリメートル)などさまざまあるという。ナノプランクトン以上のサイズなら、マイクロビーズを食べていても不思議ではない大きさだ。また、最も小さいピコプランクトンでさえ、マイクロビーズと同等のサイズのケースもあるので、魚が間違えてマイクロビーズを食べていることは想定され得る。
実際、環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室が公表している資料「平成26年度 沖合海域における漂流・海底ごみ実態調査委託業務報告書(概要版)」によると、マイクロビーズについて、「動物プランクトンに近い大きさの微細片は、誤食を通して容易に生態系に混入するだろう」と指摘している。
さらに同報告書には次のようにある。
「実際に、これまで実海域で採取された甲殻類や魚類の内臓より微細片が発見され、あるいは貝類体内への微細片の移行を確認した実験結果もある(磯辺ほか, 2012)」
「微細片には有害物質が含まれ、これが誤食を介して生物体内に摂取される可能性がある。最近になって、微細片を体内に取り込んだメダカに、肝機能障害が発現したとの実験も報告された(Rocheman et al. 2013)」
■世界的に廃止の動き
それにしても、洗顔剤などのスクラブの粒々は、いかにも海に流れ出る頃にはビーズ状になりそうな感じはするが、口紅、マスカラ等に含まれるプラスチック成分は、ビーズ状とはいいがたい。
そこで、マイクロプラスチックを担当する環境省の海洋環境室に問い合わせたところ、「口紅などに含まれる微細なプラスチックもマイクロビーズです」という。同室によると、今年のG7の首脳宣言でマイクロプラスチックは世界的問題と宣言されており、宣言の付属書には、マイクロビーズは自発的な廃止、マイクロプラスチックを含む廃棄物は海に出ないよう力を入れると書かれているという。また、大きいプラスチックが海に出て小さくなり、微細なプラスチックになっていくものは「二次的マイクロプラスチック」と呼ばれ、これはペットボトルやビニール袋などのいわゆるプラスチックゴミが微細になってできるマイクロプラスチックであり、化粧品などに入っている微細プラスチック「一次的プラスチック」も、ビーズ状でなくてもマイクロビーズに該当するのだという。
そこで、マイクロビーズの入っていることが確認できた化粧品会社17社に対しては製品名を列挙した前出表をつけ、マイクロビーズが確認できなかった9社に対しては表を除いた上で、国連の報告書が今夏出たことを示し、「マイクロビーズの環境問題について、どういう取り組みをしているか?」「御社の製品でポリエチレン末、ポリエチレン、ポリプロピレン以外に、プラスチック成分の表記名があれば、どういう表記か?」と質問した。
パルファン・クリスチャン・ディオール、ケンゾー パルファム、パルファム ジバンシイ、メイクアップフォーエバーなどのブランドでマイクロビーズが入っているLVMHは、電話で要件を伝えたところ、「取材は受け付けていません」とのことであった。
また、エレガンス、ポール&ジョー ボーテ、エクシアALなどのブランド計208製品でマイクロビーズが入っているアルビオンや、カバーマーク、パピリオなどのブランドで入っていたピアス、メイベリン ニューヨークなどのブランドで入っている日本ロレアル、ホーユー、ナリス化粧品、ライオンは無回答だった。
日本ではマイクロビーズの規制は一切しておらず、野放しの状態であり、欧米と違い業界寄りの日本の行政がマイク ビーズを早々に規制する可能性は低い。消費者としては、商品の成分表示に十分注意を払っていくほかない。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)
→「化粧品大手26社 回答」
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