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抗がん効果が話題のベータ-カロテン「のみ」過剰摂取は危険!がんリスク増大など体に害の恐れ
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12640.html
2015.11.28 文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事 Business Journal
日本には四季があり、それぞれの季節に旬があります。寒い冬でも、大根、かぶ、にんじん、れんこんなどの根菜類や、白菜、キャベツ、小松菜、からし菜、春菊、ブロッコリー、カリフラワーなどのおいしい野菜が旬を迎えます。こうして考えてみると、私たちは本当に豊かな国に住んでいるのだと、あらためてわかります。
「二十四節気」は一年を24等分してそれぞれに名前をつけたもので、中国で考えだされて日本にも定着しました。その二十四節気のうちのひとつが「冬至」で、今年は12月22日です。昔から冬至にはかぼちゃを食べ、ゆず湯に入るという習わしがありました。一年中で夜が一番長く、この日を境に昼の時間が長くなることから「一陽来復(いちようらいふく)」ともいわれ、たとえそれまで運の悪いことが続いていても、運が回復して良い方向に向かう境界になると考えられていたようです。
冬至にかぼちゃを食べる習慣は江戸時代に始まったとされていますが、その理由は定かではなくいくつかの説があります。かぼちゃの色が黄色いため太陽に見立てて、そこに冬を越すパワーがあると信じられていたという説や、いよいよ寒くなってきたときに、夏から秋にかけて収穫・保存したかぼちゃを冬至に出して感謝して食したという説もあります。冬至に小豆粥を食べる習慣のある地方がありますが、かぼちゃと小豆を一緒に炊いて「いとこ煮」と称して食べる地域もあるようです。これらの食材には体を温める作用もあり、冬は特に健康効果が望めます。
■ベータ-カロテンに抗がん効果?
いずれにしても、かぼちゃにはカロテノイドと呼ばれる、私たちの体にとって重要で、冬には貴重な植物栄養素がたっぷり含まれていることは事実です。この栄養素が抗酸化力を発揮して免疫力を高め、風邪をひきにくくさせるということを昔の日本人は知っていたのでしょう。
カロテノイドとは、野菜や果物などに多く含まれる天然色素成分で、これまでにおよそ600種類近く発見されている植物栄養素の中の一群です。リコピン、アルファ-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、ベータ-クリプトキサンチンなどがありますが、最も知られているのはベータ-カロテンでしょう。このうち、アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、ベータ-クリプトキサンチンの3つは、体内でビタミンAに変換されるのですが、「ベータ-カロテンの血中濃度が高い人は、がんの発生率が低い」という調査結果が出たために、ベータ-カロテンに抗がん効果があるといわれてきました。
しかし、その後の調査で、その人たちのがん発生率を低くしていたのは、実はベータ-カロテンだけではなく、野菜や果物に含まれる数多くのカロテノイドを中心とした植物栄養素群だということがわかったのです。
植物栄養素は、そのうちのどれかひとつが重要なのではなく、チームとして数多くの植物栄養素が体内に存在していることが重要だったのです。ベータ-カロテンは適量摂取すれば確かに健康効果をもたらす物質ではありますが、数ある植物栄養素全体の中のひとつの指標でしかなく、それだけを多量に摂取しても効果がないどころか、害にさえなるということがわかりました。
ベータ-カロテンを単体で、つまりサプリメントなどで過剰摂取すると、がんのリスクを増大させる可能性があるといわれています。ベータ-カロテンを自然な食品から摂取する場合には、ほかの重要なカロテノイドを一緒に摂取することになりますが、サプリメントでは違います。健康効果を期待するのであれば、ほかのカロテノイドを一緒に摂らなければなりません。ちなみに全食品中、カロテノイドを最も高濃度に含んでいる食品は、干しあんずだそうです。
■特定の栄養素を摂取しても無意味
筆者が提唱している食事スタイル「オプティマルフードピラミッド」に沿った食事を続けていれば、ベータ-カロテン不足に陥ることはほとんど考えられません。食事全体の40%を新鮮な野菜で占めていれば、ベータ-カロテンの必要量を十分に満たすことになるからです。
このベータ-カロテンの例のように、特定の栄養素に効果効能があるといっても、さらに詳細な分析が行われたときには覆る説もあります。だからといって、「効果効能を謳う一切の情報を信用しないように」と言いたいのではありません。ただ、特定の栄養素を摂ることと自然の食品を摂取することは、まったく違う行為だと理解すべきでしょう。ベータ-カロテンを含んでいる自然の食品には、必ずほかのカロテノイドを含むさまざまな植物栄養素もあります。健康効果をもたらすのは、それらの「総合力」なのだということを忘れないでいただきたいのです。
これは、自然の食品よりも強力な効果効能を期待できるものはない、ということでもあります。
加工食品には、着色と栄養強化の目的で工業製品的につくられたベータ-カロテンが使われています。たとえ1品目に使われている量がわずかであったとしても、複数の加工食品を食べれば相当の量を摂取することになってしまいます。過剰摂取に害があることがわかっても、食品メーカーが食品添加物としてのベータ-カロテンの使用を控えることはありません。むしろ、使用を推奨する傾向があるようにさえ見受けられます。私たちは、製造・販売側の一方的な理屈ではなく、自分が食べる物に含まれる物質を、体の中に入れる合理的な意味合いがあるのかどうかを考えなければなりません。
■健康的で人間らしい食事とは
本来の栄養学は、どのような栄養素が人間に健康をもたらし、どのような物質が害を与えるのかを解明し、それらを反映して、どういう食事が人間にとって最も望ましいものなのかを考え指し示す学問であったはずです。その結果として、人間が最高の健康状態を実現できる具体的な食事の内容と、実践可能な方法を提示するべきなのですが、昨今の栄養学は少し方向性がずれてきているように思われます。
栄養学は日進月歩で、どんどん新しい栄養素が発見されています。もちろん、それ自体は素晴らしいことで、今後も新たなる物質が発見されていくことでしょう。それらの物質が、どのように私たちの健康に役立つのかということも解明されていくでしょう。
しかしそれは、もともと存在している多くの未発見物質のうちから、ひとつの物質が発見されたにすぎません。科学的な分析能力の向上に伴い、今後も発見され続けていくでしょう。要するに私たちは、常にその途上にいるのです。そのプロセスの果てに、いつかは自然の営みのすべてを解明できる日が来るかもしれませんが、今現在私たちが知り得ていることは、その1%にも及ばないのかもしれません。
特定の栄養素に効果を期待するのではなく、自然の恵みをありがたく頂くという、人間らしい食事のあり方を取り戻していきたいものです。そしてまた、栄養学に期待したいのは、わずかばかりの効果が認められた物質を入れた低俗な飲料・食品の研究開発などではなく、人間にとって最も適した食事のあり方をわかりやすく教えてくれることです。
かぼちゃと聞いて、冬至ではなくハロウィンを思い浮かべてしまうという方、この冬から少しだけ思考を変えてみてはいかがでしょうか。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)
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