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長生きする人に共通するたった2つのこと 〜100歳でも健康でいられる「朝昼晩の献立」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46375
2015年11月22日(日) 週刊現代 :現代ビジネス
卒寿を超えても、自分の足で歩けるのはもちろん、驚異の運動能力を発揮したり、現役で仕事を続けている人がいる。彼らは一体何を食べて、元気を得ているのか、食事と長寿の密接な関係に迫る。
■乳製品が寿命を延ばす
「大事にしているのは、三食欠かさず食べることと、腹八分目にして胃に負担をかけないこと。消化を助けるために、必ず30回は噛みますよ」
こう元気に語ってくれたのは、京都府の宮崎秀吉さん。今年の9月、自身のもつ「世界最高齢スプリンター」のギネス記録を更新したばかりの105歳だ。
歓声飛び交う100mのトラックを、背筋をピンと伸ばしたまま駆け抜ける姿は、とても100歳を超えているようには見えない。
この元気は、いったいどんな食事によって支えられているのか。京都府の自宅で宮崎さんの身の回りの世話をしている長女、聖之さんが言う。
「朝食は、6枚切りの食パンを一枚トーストして、マーガリンとジャムを塗って食べています。ジャムは市販のものではなく、静岡に暮らす妹が送ってくれる夏みかんを新鮮なうちに調理したもの。味噌もお米も無添加。牛乳とブロッコリー、フルーツは毎日欠かしません」
昼は、チャーハンや麺類が多く、3時にはカステラなどのお菓子と乳酸菌飲料のおやつも取る。
「夕食は、ご飯に味噌汁。あと、肉屋さんで薄切りにしてもらった牛肉を、野菜や豆腐と一緒に炊いたものを出しています」(聖之さん)
宮崎さんは、血圧やコレステロールも正常値を維持しているという。
専門知識を生かし、栄養バランスに細心の注意を払う人もいる。沖縄県うるま市のあかみちクリニックの院長、医師の田中旨夫さん(97歳)だ。
「朝は、その時々の旬の野菜を炊いたものに少量の水を加えてミキサーで混ぜ、野菜ジュースにして飲んでいます。野菜は、前の晩から炊飯器でかつお節や水といっしょに入れて保温設定にしておくと、翌朝には炊けている。
保温しておくと、ビタミンなどの成分を壊さずに、繊維質を柔らかくすることができて、消化もしやすい。この野菜ジュースとは別に、にんじんとりんごで作ったジュースも必ず飲みます」
朝食後、クリニックに出勤すると、50人以上の患者を診察。午後の診察が5時半に終わると、毎日30分、欠かさず散歩をする。
「坂道を、自分のペースに合わせてゆっくり進み、高台についたら、心地よい風に吹かれながら、夕日に染まった美しい宜野湾を眺め、心を鎮めます」
散歩から帰宅すると、夕食の時間だ。
「夜も、やはり野菜が多いですね。海藻や、きのこ、肉類と一緒に煮たり焼いたりして食べます」
田中さんの大好物がチーズとヨーグルトだ。
「チーズは一口サイズのものをポケットに入れておき、空腹時につまみます。ヨーグルトも毎日欠かさず食べています」
田中さんのように、野菜と肉、乳製品をバランスよく取ることの重要性を語るのは、高齢者の介護・医療に精通する新田クリニック院長、新田國夫氏だ。
「栄養を考えると、野菜は当然のこととして、筋肉を維持する働きのあるタンパク質を取れる肉はきちんと食べた方がいい。さらに、野菜には消化を助ける働きがありますから、肉と一緒に取ることで、タンパク質が吸収されやすくなります。
また、高齢になると、どうしても骨密度が落ちてきて、骨折などの原因となります。防ぐには、乳製品でカルシウムを補ってあげることが非常に重要です」
90歳を過ぎて現役の「動物のお医者さん」もいる。福島県南相馬市の獣医、鹿山忠さん(92歳)はいまも自ら車を駆って地域の農家をまわり、家畜を診療している。
「朝は5時半くらいに起きて、散歩をする。一日で4000歩は歩きます。ラジオ体操をして、それから朝食。メニューはいつもだいたい同じで、海苔か魚の佃煮と、半熟卵か納豆。大根の葉っぱを細切れにした塩漬けに、白米、豆腐やワカメの味噌汁も食べます」
昼食は11時半ごろ。「これは、自分で作ります。だいたい、豚肉と大根、にんじんをバターで炒めたものと、白米を少し食べます」
その後、1時間ほど昼寝をしてから外に出て、人と話したりして過ごす。
「夕飯は7時頃。飲み込みやすいように細切りにした肉と玉ねぎ、かぼちゃなどの野菜をバターで炒めたものが多い。時には魚の煮付けを食べることもあります。
昔は太っていたけれど、見かねた息子の嫁が、白米など炭水化物を控え、そのぶん野菜と肉をバランスよく取れるメニューを工夫してくれるようになった。彼女が作ってくれるものは何でも綺麗に食べますよ」
これまで挙げた3人のように、家族と同居する人がいる一方、ひとりで暮らし、すべてを自分でこなす人もいる。
「え、食事?好きなモノをね、好きなだけ食べていますよ」
溌剌とした口調で語るのは、家事評論家の吉沢久子さん(97歳)だ。
女性の生き方や家事をテーマに、数々の本を世に送り出してきた吉沢さん。新聞や雑誌の連載を抱え、10月には最新の著書も発売された。
夫と死別したのは66歳のとき。以降、30年以上ずっと都内で一人暮らしを続けてきた。
「朝は、基本的にトーストした食パン。その上にほうれん草のソテーと目玉焼きを載せて、黄身を潰して食べます。他には紅茶と、果物、ヨーグルト。このメニューは、夫と暮らしていた頃からずっと変わりません」
昼食はとらない。
「お昼を食べると、ウトウトと眠くなってしまいます。昼寝をすると、夜に眠れず生活のペースがくずれてしまいます。
食事で気を遣うのは、栄養のバランスです。一日のなかで、お肉と野菜の両方を取れるようにしています」
料理番組にも出演していた吉沢さん。意外にも、塩分や醤油の分量にはあまりこだわらないという。
「夕食には、食べたいものを、好きな味付けで、好きなだけ食べています。天ぷらやとんかつなどの油物も、欲しいときにはお店に食べに参りますし。
もう百年近く生きて、明日はどうなるかわからない。だったら好きなものを食べて、やりたいことをして、毎日を精いっぱい、楽しく生きたいじゃありませんか」
前出の新田医師によれば、塩分や醤油の量をあまり気にしない吉沢さんの姿勢は間違っていないという。
「塩も醤油も、よほどとりすぎなければ問題はありません。むしろ、あまり気にして薄味にしすぎると、味気なくなり、食べる量が減りますから、身体にはかえって良くありません。油物には、消化器に負担をかける部分がありますが、たまに食べたくなったら我慢せず、食べたほうがストレスを溜めこまなくてすむ」
■ステーキだって食べます
10月13日に行われた「はがきの名文コンクール」受賞者発表会。約4万通の応募作のなかから初代大賞に選ばれたのが、埼玉県に住む山口峯三さん(90歳)だ。
受賞挨拶では堂々たるスピーチを披露した山口さん。食生活についても、なめらかな口ぶりで語ってくれた。
「いつも朝食は8時半から9時の間に取ります。
納豆や生卵、魚の干物をおかずに、油揚げやほうれん草など、その日食べたい具材を入れた味噌汁とご飯。毎日茶碗2杯ぐらいは食べていますよ」
その後、足腰を鍛えるための散歩を2時間ほど。あとは、頭の回転が鈍くならないように詰め将棋をしたりして過ごし、昼食はパンや麺類などで適当に済ます。
夕食には、高齢者向けの宅配弁当を頼んでおり、平日は毎日栄養バランスが考えられた食事が届く。
「宅配がない土日は、面倒なので、近所で惣菜を買ってきたり、出前の寿司ですませたりもします。でも、肉が食べたいときは自分でステーキを焼いたり、野菜を食べたいときは鍋を作ったり、その日の気分で料理もします。酒は現役時代から弱くて、いまでもほんの少しワインや日本酒を飲む程度ですね」
このように、食生活にさほど気を使っているようには思えない山口さんだが、唯一心がけているのが「極端な偏食をしないこと」。
「妻の生前は、出されたものを黙々と食べていた。先立たれて自炊をするようになってから、彼女が栄養のバランスに相当気を使ってくれていたことに気がついたのです」
受賞作の手紙の中でも「君のつくる味噌汁(おみおつけ)が飲みてえよ」と、亡き妻に語りかけていた山口さん。
「彼女が作ってくれた味噌汁は、赤味噌と白味噌を絶妙にブレンドしたものだった。今でも自分で味噌汁を作りますが、やっぱり彼女の味にはかないません」
この5人の食生活を見て、前出の新田医師は「非常に納得がいくもの」だと語る。
「皆さん自分が美味しいと思えるものを、好きな味付けで楽しんで食べている。これが一番大切なことなのです。そもそも、健康維持のために特定の何かをたくさん食べたほうがいいという考え方には、あまり意味がない。何事も大切なのはバランス。そして体が欲するものを取ることです」
もう一つわかったのは酒。5人全員が、下戸か「たしなむ程度」と答える。新田医師は「飲み過ぎはよくないが、適量はOK」というが、やはり、長生きする人に大酒飲みはいない。
無限の選択肢がある食事に正解はないが、不正解はある。長生きをしている人たちの献立が、そのことを教えてくれる。
「週刊現代」2015年11月21日号より
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