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仮面うつ病とは「からだの病気という仮面をかぶったうつ病」(※イメージ)
高齢者の10%が「うつ」経験者 抗がん剤や胃薬で発症も〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151121-00000001-sasahi-hlth
週刊朝日 2015年11月27日号より抜粋
高齢者うつとは、高齢者がかかるうつ病のことで、一般的には「何事にも興味がわかない」「ゆううつな、沈んだ気分」「意欲や集中力がない」「寝つきが悪くなる」「食欲がない」などの症状が2週間以上続く。
現在発売中の『週刊朝日MOOK 新「名医」の最新治療2016』の中で、順天堂大学順天堂越谷病院老年期うつ病専門外来の馬場元(ばばはじめ)医師は言う。
「もともとうつ病は診断基準にややバラつきがあります。高齢者うつ、特に65歳以上の老年期うつは診断が難しく明確な有病率を出すのが難しいですが、だいたい高齢者の10%程度はうつ病にかかっている、あるいはうつ病を経験したことがあるといわれています」
2015年10月の総務省統計局による推計では、65歳以上の高齢者人口は3387万人とされているため、高齢者うつの患者数は、未受療患者や治癒患者を含めると340万人以上と推計できる。
高齢者ならではのうつ病の原因、発症の要因はあるのだろうか。馬場医師によると、高齢者のうつ病の要因として、[1]脳の機能低下、[2]心理・社会的要因、[3]身体疾患とその治療に使用する薬剤の影響などが挙げられるという。
最大の要因は加齢による脳の変化だ。脳は加齢とともに萎縮し、機能が低下する。これは人間として避けられない生理的な変化だ。そこに脳梗塞など脳の血管障害を起こすと、脳の血流が悪くなり機能が低下する。すると、起きた出来事に対する柔軟な対応、問題の回避や解決が困難になる。
そこへ高齢者ならではの心理的要因や身体機能の衰えが付加される。心理的なストレスのもっとも大きなものが「喪失体験」だ。
「たとえば、配偶者など身近な人が亡くなるということや退職、子どもが巣立って親の務めを終えるなど社会的役割の喪失もあります。さらに健康な自分が失われる、目が悪くなる、耳が聞こえにくくなる、物覚えが悪くなる、昔はできていたことができなくなるなど、身体機能の喪失も大きなストレスになることがあります」(馬場医師)
加齢にともない増加するがんや脳卒中、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性関節リウマチ、パーキンソン病などの病気によって、うつ症状が出やすくなることがある。また、抗がん剤や肝炎の治療に使用するインターフェロン、高血圧を治療する降圧剤や胃薬、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬など、病気の治療に用いられる薬剤によってうつ症状が引き起こされることもあるという。
「もともと加齢によって弱い状態になっているところにさまざまな心理的、身体的要因が加わる。しかも、これらは65歳を過ぎたころから、わりと短い期間に立て続けに起こることが多い。それらの要因が重なって高齢者うつを発症することが考えられます」(同)
一般的に、うつ病を疑うサインはいくつかある。「何事にも興味がわかない」「何をしても楽しいと思えない」「沈んだ気分になる」「疲れやすい」「意欲や集中力がない」「食欲がない」「眠れない」「人に会いたくない」「自分には価値がないと思う」といった意欲の低下やからだの変化だ。
高齢者うつならではの大きな特徴として「うつ病性仮性認知症」と「仮面うつ病」の存在があると馬場医師は話す。
うつ病性仮性認知症とは、うつ病の症状のひとつとして集中力や判断力が低下し、物忘れが激しくなったり、物事を決められなくなったりと、いわゆる認知症のような症状が起こることをいう。認知機能検査でも点数が下がるため、実際はうつ病なのに医師から認知症と診断されることもある。
「でも、これはうつ病の症状のひとつなので、うつ病の治療をしてうつ病が治れば、認知機能も改善します。これと反対のパターンもあり、認知症の初期症状として、意欲がなくなる、物事に興味がなくなるなど、うつ病と同様の症状が起こることがあります。さらにややこしいのが、うつ病と認知症を合併したり、うつ病が認知症に移行したりすることもあること。高齢者うつと認知症の見極めは医師でも難しく、本人や家族が見分けることは難しいでしょう。おかしいと思う症状がみられたら受診することをおすすめします」(同)
また、仮面うつ病とは「からだの病気という仮面をかぶったうつ病」だと馬場医師は説明する。
「高齢者うつでは、頭痛、耳鳴り、めまい、動悸、胸が苦しい、胃が痛い、下痢、便秘など、からだの症状が前面に出て、心の病気としての症状が見えにくいことが多々あります。症状は多様で人によってさまざまです。内科や耳鼻科などを受診し、原因がわからず、いくつかの病院を回って最終的に精神科に来るというケースも多くあります。本人や家族も、からだに症状があることから、うつ病だとは思わないのです」(同)
からだの症状が同じ時期にいくつも重なって起こる、症状のある場所が移動する、受診して検査をしても異常がないと言われた、頭痛や胃痛などの薬を飲んでも治らない。このような場合、高齢者うつを疑うひとつのポイントになる。
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