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人体六〇〇万年史(上・下) ダニエル・E・リーバーマン著 現代環境と人類のミスマッチ
柔らかいソファに半ば寝そべって、ポテトチップをぼりぼりと食べ、ワインを飲みながら本書を読んでいた。大変に面白いので、もう何時間も読み続けている。そうして夜中の2時に最後まで読み終わったところで、著者のメッセージはこうだ。
「柔らかい椅子に座って、ジャンクフードを食べ、アルコールを摂取し、夜更かしして細かい字の書物を何時間も読む一方で、運動をしないという生活は、私たちにとって快適で楽しい生活には違いないが、人類全体を長い目で見て不健康にし、医療費のかかりすぎる社会を生み出す元凶である」。なぜなら、私たちのからだは、現代の先進国での暮らしに適応するように進化したのではないからだ。
直立二足歩行する人類が出現したのがおよそ600万年前。私たち自身であるホモ・サピエンスという種が出現したのがおよそ20万年前。この間の99.9%を、私たちは狩猟採集民として進化した。それは、毎日10キロほど歩いたり走ったりし、槍(やり)を投げたり、地面を掘ったり、収穫物をかついで運んだりして上半身を使い、そうやって食べる物と言えば、多種多様の、しかし筋だらけの植物、脂肪のほとんどない野生動物の肉や魚で、甘いものと言えば蜂蜜ぐらいしかないのだ。
1万年ほど前に農業が始まったが、それは人類の生活の大転換点であった。定住生活が始まり、1つか2つの作物だけでカロリーをまかなうようになる。摂取カロリーは多くなったが、栄養素のバラエティは貧弱になる。そして、多くの人間が一カ所にかたまって暮らすことにより、伝染病が急速に広がった。
そして、およそ250年前に産業革命が起こり、電力と機械が普及して、生活はどんどん楽で快適になっていく。食品の世界にも革命が起こり、より甘くて柔らかく脂肪に富んだ食品が工場で安く大量生産されるようになる。これが第2の大転換点。文化は発展し、冒頭に述べたような時間の過ごし方が普通になる一方、肥満と運動不足などに起因する病気が蔓延(まんえん)する。これは、私たちのからだと現代環境とのミスマッチから起こるのだ。
著者は自然人類学者で、どんな活動にどれだけのエネルギーが必要かをきちんと示して、ミスマッチのすごさを見せつける。さあ、これはみんな理解できるが、ではどうしよう? 著者は最後に4つの処方箋を示してくれるが、果たして人類は、この快適さのシステムを自ら作り変えることができるだろうか?
原題=THE STORY OF THE HUMAN BODY
(塩原通緒訳、早川書房・各2200円)
▼著者は米ハーバード大教授。
《評》総合研究大学院大学教授
長谷川 眞理子
[日経新聞11月8日朝刊P.23]
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