2. 2015年11月03日 07:51:37
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2015年11月3日 和泉虎太郎 [ノンフィクションライター] 栄養失調による死者数は殺人被害者の4倍! 統計から読み解く「日本人の死に方」 水戸市と同規模の人口が消える一方、50歳以上の初産が41人いた2014年の日本。溺死はなぜ冬に集中発生し、首都圏では病院で死ぬ人の割合がなぜ少ないのか。2014年の人口動態統計から、驚きの「日本人の死に方」を考察してみよう。毎年、水戸市と同規模の人口が消え、 25秒に1人が亡くなる日本 厚生労働省が発表する重要な統計の1つに人口動態統計がある。人口の動態、つまりは人口が増えたり減ったりするその数値と、増減の原因を調べたものだ。 納得の死もあれば、意外な死も。統計から透けて見える日本人の死に様とは 詳細な報告書は来年春に刊行されるが、9月初旬にホームページで調査の確報値が公開された。ここから、人口が減る、すなわち日本人の死がいかなる現状なのかを読み取ってみよう。
昨年死亡した人は127万3004人。死因別では悪性新生物(がん)がトップ36万8103人だった。 一方、出生数は100万3539人で自然増減数は26万9465人の減。毎年、水戸市、徳島市、福井市と同じくらいの人口が消えていることになる。
ご丁寧なことに25秒に1人が亡くなっているという試算も付けられている(ちなみに、出生は31秒、婚姻は49秒、離婚は2分22秒に1件としている)。 死因の上位はトップの悪性新生物に次いで心疾患19万6926人、肺炎11万9650人、脳血管疾患11万4207人と続く。 その悪性新生物の発生場所であるが、最も多いのは「気管、気管支及び肺」の7万3396人、次いで「胃」4万7903人、「結腸」の3万3297人。
性に特有の新生物としては男性の「前立腺」が1万1507人、女性は「子宮」が6429人、「卵巣」が4840人である。しかし「乳房」は男性の死亡者も83人いる(女性は1万3323人)ことが興味深い。 少ない死因にも目を向けていこう。目及び付属器の疾患による死者は3人、耳及び乳様突起の疾患が12人。慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)22人。歯肉炎と歯周病6人でう蝕(いわゆる虫歯)1人。顔の器官で死ぬ人はほとんどいないようだ。 感染症では、かつて世界中で多くの人を死に至らしめた腸チフス(1947年には936人)、赤痢はゼロ(同7765人)、梅毒は18人(同5501人)。アルコール(による精神及び行動の障害、以下同)325人、アヘン、大麻、コカイン、タバコはゼロだが、揮発性溶剤は1人。ヘビ毒によるもの5人、ハチ14人、ムカデ1人、落雷2人。いろんな意味で、日本はずいぶんと安全になった。 こんな死因もある。栄養失調は1697人で、逆の肥満と過剰摂食64人。日射病熱射病が555人に対して低体温症は826人。 出産の母体の安全性は50倍以上に向上 50歳以上の初産は41人! 長期間でデータを概観すると、まず特徴的なのは、乳児の死亡数の変化である。医療技術の進歩、衛生の徹底などで1歳未満の乳幼児死亡数はベビーブームのピークだった1947年の20万5360人(出生数は267万8792人)から2080人(同100万3539人)まで減少した。出生数の減少に鑑みても40分の1近くまで減少している計算だ。 これと同じくして出産および出産後(産褥期、いわゆる産後の肥立ち)の死亡者数は33人。1947年まで遡ると、この数字は4601人である。出生数の減少を加味した安全性は50倍以上に高まっており、出産が大事業であることに変わりはないが、改善は著しいといえる。 この出生に関しては、もうひとつ、驚くべき数字がある。50歳以上で「超高齢」出産した女性の数だ。
出産数がピークの年となった1947年に450人いた50歳代出産者(さらに驚くことに、そのうち55歳以上が79人いる)は、その後、減り続けて89年から93年の5年間で2人となっていた。ところが、この10年ほどで回復を見せ、2014年は58人となった。そのうち第1子、つまり初産が41人ということにも驚きがある。 死に場所の統計もある。世に言う「畳の上で死にたい」、つまり自宅での死が多い都道府県はどこか。 人口動態統計に都道府県別の「死亡の場所」が集計されているが、全国平均では病院や介護施設などでの、いわゆる「施設内」が85.1、特に病院では75.1%。「施設外」カテゴリーのなかの「自宅」での死亡は12.8%である。 関東の病院事情は最悪 「病院で死にたくても死ねない」 自宅での死亡がもっとも多い、言い換えれば「畳の上で死ねる」割合が高い都道府県は、住宅事情がもっとも悪いはずの東京都で16.8%だ。千葉(15.5%)、神奈川(15.%)も全国的に見て高い方だ。一方で少ないのは九州各県で、8.1〜9.4%だ。 東京で特に自宅での看取りが盛んであるという事実は確認できず、自宅内での不慮の事故が飛び抜けて多い数字もない。住宅事情と自宅での死亡数の数字は、「住宅事情が良い地域ほど自宅での死亡が少ない」という意外な傾向が見いだせるが、ここに因果関係の存在は考えにくい。 首都圏の自宅での死亡の多さと九州での少なさ、これを示唆しているデータは、人口あたりの病床数に求められる。九州では病床数が多く(人口10万人当たり1700〜1950床)、関東の3都県は最低レベル(同900床前後)。関東では病院で死にたくても死ねない、これが実情のようである。 20年前、世界中をパニックに陥れたHIV、ヒト免疫不全ウイルス病は45人。この数字は、この20年間、ほぼ変わりなく推移している。SARSはゼロだ。 さて、交通事故はどうか。統計では「不慮の事故」のカテゴリーに入れられている交通事故による死者は、ピークだった1970年の2万496人から数を減らし、2014年は5717人と4分の1近くにまで減少している。20年前、1995年の1万5147人と比較しても3分の1近い。これは激減と評価していいだろう。 ただし、そのうち、飲酒が絡んでいる事故での死者は227人いる。2004年の712人よりは相当に減ってはいるが、それでも年間に200人以上である。通常、これだけの数の死者を出す原因となっている物質であれば、間違いなく毒物扱いされているはず。酒には、負の特別扱いされている側面があることは知っておくべきだ。 「不慮の事故」には他に「転倒・転落」(7946人)、「不慮の溺死及び溺水」(7508人)、「不慮の窒息」(9806人。うち食物を気管に詰まらせたもの4874人、高齢者が圧倒的に多く、恐らくは餅が多いと推測される)がある。 溺死は12月と1月に なぜ集中発生するのか 「不慮の溺死及び溺水」は、季節の変動要因が大きいことが、他の不慮の事故と違うところである。溺死だから夏に増えると考える向きも多いだろうが、じつは逆。12月と1月の死者数が、7月8月に比べて3倍近くになっている。それは、溺死が海水浴や川遊びではなく、7割以上が浴槽内での溺死であり、さらにそのうち8割以上が70歳以上の高齢者であるからだ。寒いから風呂に長湯、これが死を招くということだ。 さらに「不慮の事故」のなかでの、「航空機事故」での死者は6人で、うち3人はグライダー。航空機の乗降中に死んだ人が1人いる。 雪や氷で滑って死んだ人は6人。犬による咬傷又は打撲は1人、「そのほかのほ乳類」によるものは6人で、そのうち5人は農場が発生場所なので、恐らくは牛か馬である。ちなみに「ワニ」の項目も用意されているが2014年は1人も死者は出ていない。水泳プールでの溺死は転落を含めて4人、これが自然水域(海や川など)になると1612人と圧倒的に多い。 自殺は2万4417人、他殺は357人。自殺では圧倒的に縊首・絞首及び窒息、つまり首を吊る方法が多く、次にガス自殺(その他のガス及び蒸気による中毒及び曝露)、そして飛び降りであり、多くの人に影響が出る列車への飛び込み(移動中の物体の前への飛び込み又は横臥による故意の自傷及び自殺)は533人と、首吊りの3%にも満たない。 他殺(統計上は「加害にもとづく傷害及び死亡」)では、もっとも多いのは鋭利な物体による加害で、120人。内訳は男性66人、女性54人と性差は大きくない。一方で縊首、絞首及び窒息によるものが117人で、特に女性が72人と男性の倍近い数になる。いわゆる殺しのほとんどは首を絞めるか、刺すかであり、拳銃、ライフルともに1人ずつ、刑事ドラマのような射殺は、じつはほとんど起きていない。 ちなみに法務省のまとめによると、未遂犯を含めた殺人事件の国際比較では、日本の人口あたり発生率は米国の5分の1、フランス、ドイツ、英国の半分以下であり、検挙率はドイツと並んで95〜97%(米国は65%前後)。ここでも日本は安全な国なのだということが分かる。 http://diamond.jp/articles/-/80998
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