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糖質制限ダイエットは危険!死亡率増?脳卒中や糖尿病、内臓障害の恐れ
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12174.html
2015.10.30 文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士 Business Journal
ここ2〜3年、「糖質制限食」『ローカーボ(低炭水化物)ダイエット』「糖はいらない」「断糖」「米(パン)は食べるな」『炭水化物が人類を滅ぼす』などという、「糖」を悪者にする書籍が多数出版され、「糖質制限」をすることこそが健康につながるなどという主張がなされている。
これによると、米、芋、パン、ラーメン、うどん、そうめんなどの炭水化物(多糖類)、アメ、チョコレート、ケーキ、砂糖、ハチミツ、まんじゅうなどの甘味、赤ワイン、日本酒などの醸造酒、くだもの、根菜など、糖分を含むものはすべてNGで、結局食べてよいのは「肉類と野菜」くらいなものになってしまう。
この「糖質制限食」を実践して2〜3カ月間という短期間で数キログラム〜数十キログラムの減量に成功し、高脂血症、高血糖(糖尿病)、痛風、脂肪肝、高血圧などが改善した、という人は多い。つまり、カロリー制限による面倒くさいダイエットと違い、簡単にやせられ病気も改善できるとして、人気を博しているわけだ。
しかし、問題が残る。
地球上に、水(蒸気)やガスなどしか存在しなかった太古の時代に、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に太陽光が作用して、ショ糖(C6H12O6)と酸素(O2)がつくられ、生物が生きていける環境が整った。
つまり、地球上に最初にできた栄養素(有機物質)が糖である。糖を構成する「炭素(C)」「水素(H)」「酸素(O)」を並べかえると、「脂肪」はすぐ合成できるし、糖に「チッ素(N)」や「硫黄(S)」をくっつけると、タンパク質の素のアミノ酸もつくられる。
つまり、「生物」は糖を元に発展してきたということになる。よって、「低血糖発作」は存在するが、「低タンパク発作」や「低脂肪発作」は存在しない。
生きていくのに一番大切な「食欲」も糖が調節している。血糖値が低下したら、脳の空腹中枢が「空腹」を感じ、モノを食べて血糖値が上昇したなら、満腹中枢が「満腹」を感じる。
「糖」こそ生物にとって最重要の物質であるからこそ、「食べすぎる」傾向にあり、それが中性脂肪に変化し、肥満、高脂血症を惹起し、その結果、糖尿病、動脈硬化、高血圧、血栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)を誘発することになる。
よって、糖が悪いのではなく「食べすぎ」がこうした生活習慣病の要因なのである。その証拠に、100歳以上の長寿者に、好きな物は何かと尋ねると、必ず1位、2位には「甘いもの」と「果物」が入る。
■糖質制限と病気の関係
このように、生命必須の物質である糖を制限ないし拒否し、肉を中心とする高タンパク・高脂肪食を摂ると、必ずや体に不調が生じてくる。草食動物の象やキリンに肉を食べさせるようなものだからだ。
動物の食性は、歯のかたちで決まっている。人間は32本の歯のうち20本(62.5%)が臼歯(穀物を食べる歯)、8本(25%)が門歯(野菜を食べる歯)、4本(12.5%)が犬歯(肉、魚を食べる歯)であることからして、全体のうち87.5(62.5+25)%が炭水化物(糖)を食べる歯である。
米国のハーバード大学は、糖質制限食を続けると心筋梗塞や糖尿病の発症率が高まるとの研究結果を報告している。日本の国立国際医療研究センター病院も、「糖質制限食を5年以上続けると、死亡率が高まる」と、約1万6000人の死亡者の調査から結論づけている。糖質制限食の問題点・危険性は、以下のとおりとなる。
(1)脳卒中、心筋梗塞などの危険性、死亡率が上がる。
(2)肝機能障害、腎機能障害を誘発する(肝、腎がタンパク質の最終産物の解毒排泄)。
(3)ケトアシドーシス(ケトン酸血症) 糖を制限すると、体内の中性脂肪が肝臓でケトン体という酸性のカロリー体に変化するので意識不明になる危険性がある。
減量するために一時的なショック療法として糖質制限をすることを否定はしないが、数カ月以上続けると危険が伴うことを肝に銘じられたい。なお、糖質制限の危険性について詳しく知りたい方は、拙書『「糖質制限」は危険!』(海竜社)を読んでいただきたい。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)
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