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「時代は健康経営 これをやらねばブラック企業 」
三越伊勢丹と味の素はメンタル疾患をこう防いだ
2015年6月18日(木)河野 紀子
「健康管理は従業員の責任」。そんな前時代的な経営は、もはや通用しない。従業員の健康こそ、企業の競争力を高める経営の最重要課題と位置付け、その増進や維持を図る「健康経営」に取り組む企業が増えている。
日経ビジネスは6月15日号の特集で、SCSKやロート製薬、コニカミノルタ、伊藤忠商事、味の素、東急電鉄、内田洋行など先進企業の取り組みを掲載した。活力ある働き方を実現する「戦略投資」として、健康経営を推進することは、エクセレントカンパニーの新条件だ。
健康経営を進める上で、大きなテーマの一つに従業員のメンタルヘルス問題がある。うつ病などのメンタル疾患による休職や退職をどのように防ぐか――。独自のプログラムを作って、運用し始めている企業が出てきた。新入社員向けの研修を導入した三越伊勢丹ホールディングスと再発を防ぐ味の素の事例を紹介する。
「吉本さんがうつ病を発症した原因としてどのようなことが考えられますか」「あなたが吉本さんであれば、どの場面で、どのような対処をしますか」──。
昨年10月、三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、首都圏の店舗で働く月給制の契約社員200人弱を対象に入社半年後の研修を開いた。
「自己成長につながるセルフマネジメント」と題したこの研修で、参加者は百貨店の新入社員に見られがちな境遇のシミュレーションを通して、ストレスに強くなるための考え方や行動を、個人やグループワークで学ぶ。
三越伊勢丹HDの首都圏の店舗に勤務する契約社員向けの研修風景。自分のストレスの度合いを知り、ストレスを感じる時にどう対処すればよいのかを、グループディスカッションなどを通して学ぶ
研修では、事前に自己のストレスの度合いを調べた「ストレスチェック」の結果もフィードバックする。
10月といえば、年末商戦に向け繁忙期に突入する時期。それまではフレッシュな気持ちで働いていた新入社員たちも、業務量が増えてきて徐々にストレスを抱えるようになる。ストレスをうまく解消できないままでいると、仕事上の悩みを抱えて休職や退職に至ってしまう恐れがある。
「入社前の研修で『仕事がつらくなったら誰かに相談しよう』と伝えてはいるが、新入社員は働き始めると日々の業務に追われて、誰にも相談できず抱え込んでしまいがち。研修にはそうした状況を改善する狙いがある」と、三越伊勢丹HD人事部労務担当の名倉三佳マネージャーは話す。
リアルなシミュレーションを基に議論
研修の内容は、三越伊勢丹HDの子会社である三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズが作成した独自プログラムで、今では他企業や大学の研修にも利用されている。
以下は、参加者がグループディスカッションに使う架空の事例だ。
今年春、契約社員として入社した吉本彩さん(20歳)。独り暮らしでまじめな性格だ。婦人靴ショップに配属されたが、常に忙しい職場で、分からないことがあっても指導役の先輩たちになかなか相談できなかった。
6月にお中元ギフトセンターに長期応援で派遣され、入社同期と一緒に働くことで、仕事に充実感を覚えた。だが、7月に元の部署に戻ると、指導をしてもらえず、孤立してしまう。指導役からは「言われたことだけやればいい」「こんなことも知らないの」と叱られるようになった。
8月に休暇を取り家族旅行をして気分転換を図ったが、休暇明けの通勤途中でめまいがして倒れた。指導役からは「だらしない」と叱られた。
吉本さんは上司に、「指導役の先輩に恐怖を感じるので代えてほしい」と相談したが、取り合ってもらえなかった。それからというもの、休みの翌朝になると倦怠感や頭痛に襲われて、遅刻や欠勤が増えるようになった。食事が取れなくなり、昼休みを一人で過ごすことが多くなって、10月に医者から「軽度のうつ病」と診断された――。
こうした事例を踏まえて、グループディスカッションを行い、ストレスとどのように向き合い、乗り越えるか、一人ひとりが“自分ごと”として考えていく。研修の内容に感情移入してしまったのか、泣いてしまう人もいたという。
「研修の内容をぜひ私たちの上司にも知ってもらいたい」
参加者からはこんな声が複数上がった。新入社員向けで始まった研修は、職場全体を巻き込んでストレスに向き合う動きにつながっている。
三越伊勢丹HDは研修の手応えを得て、今年から新入社員全員を対象に同様の研修を拡充する。今後は中間管理職向けの研修も作成し、組織の改善に生かしていく予定だ。
自分の軸を見つけて再発防ぐ
三越伊勢丹HDのように、研修を通じてメンタル疾患を未然に防ぐ取り組みが普及するのと並行して、休職から復帰する際のケアに手厚いプログラムを導入する企業も増えている。
味の素もその1社。独自の「メンタルヘルス回復プログラム」を作り、2003年から運用している。
プログラムの特徴は、自己を丁寧に見つめ直してもらうことで、再発予防につなげている点だ。一般に、メンタル疾患は十分な休養や薬物治療で症状は改善するが、それから2〜3カ月後の再発が最も多い。そのため、職場復帰には慎重にならざるを得ない。
休職中に、医療スタッフとの面談を通して、「まじめ」「責任感が強い」「完璧主義」といった自身の性格や考え方の癖などを認識してもらい、その上でストレスとどう向き合ったらいいのかを医療スタッフと考えていく。
「心を病んだ原因となる事象の追究はしていない。自分は何が好きか、何を大切に考えるかといった軸を見つけてもらい、その上で会社が求めるものと自分が求めるものとのバランスを取っていくように勧める」。味の素人事部健康推進センターで保健師を務める大友かおりさんはこう話す。
こうしたカウンセリングを数週間に1回繰り返した後、休職前にストレスが起きていた状況を想定し、どう考え、対処すれば不調にならないかをシミュレーションする。そのシミュレーションに沿って、少しずつ「治療出社」を始める。この期間も休職扱いとし、3カ月間と長めに設定しているのも特徴だ。
一方で、メンタル疾患は早期の発見が重要だ。味の素は年に1回の健康診断を実施した後に、産業医や保健師が社員全員と30分ずつ面談する「全員面談」も実施している。
このほかに部下を持つ課長以上が対象の「上司面談」を通じて、本人からのヒアリングだけではなく、「部下のAさんは最近元気がない」といった上司の情報もすり合わせて、記録に残す。本人の同意を取った上で、スタッフから上司に本人の体調などを伝えることもある。
「これらのプログラムを導入して以降、メンタル疾患による休職の再発率は確実に下がっている」と味の素人事部の島田憲幸部長は話す。
労働政策研究・研修機構が2014年に実施した「第2回日本人の就業実態に関する総合調査」によると、回答した4573人のうち、過去3年間でメンタルが不調になったのは25.7%で、このうち13.3%が結局退職していた。
また、働いている時にメンタルが不調になった人に、働き続けるために必要な支援策を聞くと、「業務内容や業務量への配慮」(42.3%)、「職場の同僚や上司との人間関係を考慮した配置」(34.9%)、「上司や同僚による日常的な声掛け」(29.6%)が上位を占めた。
いずれも形式的なものではなく、きめ細かいケアが求められるものだ。企業は、研修や制度を設けることで安住せず、いかに効果的に機能させるか、運用の工夫が必要になるだろう。
このコラムについて
時代は健康経営 これをやらねばブラック企業
「健康管理は従業員の責任」。そんな前時代的な経営は、もはや通用しない。従業員の健康こそ、企業の競争力を高める経営の最重要課題と位置付け、その増進や維持を図る「健康経営」に取り組む企業が増えている。活力ある働き方を実現する「戦略投資」として、健康経営を推進することは、エクセレントカンパニーの新条件だ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/284163/061700009/
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