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異常な猛暑で経済マイナス成長?「猛暑で消費拡大」がはらむリスク
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11239.html
2015.08.24 文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト Business Journa
今夏は、冷夏予測から一転して暑い夏になった。気象庁は6月時点で、エルニーニョ現象の影響を受けて今夏は平年に比べて曇りや雨の日が多くなると予測していた。しかし、同庁は7月に入ると、8月にかけて東日本などで平年と同様に晴れの日が多くなる見込みと発表し、先の予測を修正した。
各業界においても、猛暑の影響が出ている。過去の経験によれば、猛暑によって業績が上向く代表的な業界としては、エアコン関連や飲料関連がある。また、目薬や日焼け止め、虫除けといった製薬関連のほか、旅行業界やプールなどの水に関連する業界も猛暑では業績が大きく伸びる。そのほか、冷菓や日傘などのメーカーも猛暑の年には業績が好調になる傾向がある。
さらに、飲料の販売比率の高いコンビニエンスストアや、猛暑による消費拡大効果で広告代理店の受注も増加しやすい。飲料の販売増に伴い、缶・ペットボトルやそれらに貼るラベルのメーカー、原材料となるアルミニウムの圧延メーカー、商品を包装するダンボールメーカーなどへの影響も目立つ。加えて、ファミリーレストランなどの外食産業、消費拡大効果で荷動きが活発になる運輸、猛暑で外出しにくくなることにより販売が増えるゲーム関連なども猛暑で業績が上がったことがある。
一方、一部の食料品やガス、テーマパーク、衣料品などの関連業界では、猛暑がマイナスに作用した例も見られる。
■天候と消費の関係
夏の気候と消費の関連性について、国民経済計算を用いて7〜9月期の実質家計消費の前年比と東京・大阪平均の日照時間の前年差を見ると、両者は驚くほど連動性があり、日照時間が増加したときに実質家計消費が拡大するケースが多いことがわかる。従って、単純な家計消費と日照時間の関係だけを見れば、猛暑は家計消費全体にとっては押し上げ要因として作用するといえる。
そこで、国民経済計算のデータを用いて気象要因も含んだ家計消費関数を推計すると、7〜9月期の日照時間が同時期の実質家計消費に統計的に有意な影響を及ぼす関係が認められる。過去の関係からすれば、日照時間が10%増加すると、家計消費支出が0.4%程度押し上げられる。
従って、この関係を用いて今年7〜9月期の日照時間が1994年および2010年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が平年比でそれぞれ21.6%、13.9%増加することにより、家計消費はそれぞれ0.6兆円(0.9%)、0.4兆円(0.6%)程度押し上げられることになる。
また、家計消費が増加すれば、同時に輸入の増加等ももたらす。このため、こうした影響も考慮し、最終的に猛暑が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、94年並みとなった場合は0.4兆円(0.3%)、10年並みとなった場合は0.3兆円(0.2%)ほど実質GDPを押し上げることになる。このように、猛暑効果は経済全体で見ても無視できないものといえる。
しかし、猛暑後の10〜12月期は反動が予想されることにも注意が必要だ。過去の例では、記録的猛暑となった94、10年とも7〜9月期は大幅プラス成長を記録したが、続く10〜12月期は個人消費主導でマイナス成長に転じている。
つまり、猛暑特需は一時的に個人消費を実力以上に押し上げるが、むしろその後の反動減を大きくする姿が窺える。猛暑効果により売り上げを伸ばす財・サービスは、暑さをしのぐためにやむなく出費するものが多い。従って、今年も猛暑効果で夏に出費がかさめば、秋口以降は家計が節約モードに入ると予想される。
■暖冬でGDPが押し下げられる?
さらに、エルニーニョが冬まで続けば日本は暖冬になることが多い。そして暖冬になれば、季節性の高い商品の売れ行きが落ち込み、いわゆる冬物商戦に悪影響を与えることが予想される。具体的には、冬場に需要が盛り上がる暖房器具や冬物衣料などの売れ行きが鈍るとみられる。
実際、最も暖冬の影響が大きかった06年10〜12月期を例にとってみれば、家計調査における「家具・家事用品」は冷暖房用器具の落ち込みを主因に前年同期比−1.2%となった。また「被服及び履物」も同−5.4%と落ち込んでいる。また、暖房器具等の使用量が減り、電気代が減ることも予想される。06年の家計調査における光熱水道費は、10〜12月期が前年同期比−1.3%と減少している。
一方、暖冬の影響としては、外出しやすくなることも予想される。このため、冬のレジャー以外の外出に関連する支出は恩恵を受けることになろう。例えば、06年の10〜12月期は、家計調査の「交通」「教養娯楽」「保健医療」がいずれも増加している。
そこで、国民経済計算のデータを用いて気象要因も含んだ家計消費関数を推計すると、10〜12月期の平均気温が1度上昇すると、同時期の家計消費支出が0.6%程度押し下げられることになる。
従って、この関係を用いて今年10〜12月期の平均気温が04年および06年と同程度となった場合の影響を試算すれば、平均気温が前年差でそれぞれ0.7度、0.8度上昇することにより、家計消費は前年に比べていずれも約0.3兆円(0.5%)程度押し下げられることになる。
ただし、家計消費が減少すれば、同時に輸入の減少等ももたらす。このため、こうした影響も考慮し、最終的に日照不足が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、04年並みとなった場合、06年並みとなった場合のいずれも0.25兆円(0.2%)ほど実質GDPを押し下げることになる。このように、暖冬の影響も経済全体で見れば無視できないものといえる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)
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