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P&G「ファブリーズ」
世界の巨獣P&G、日本へ本気の攻勢始動 花王とライオンは「蹴散らされる」のか
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11231.html
2015.08.23 文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役 Business Journal
米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G、本社:シンシナティ、オハイオ州)は、欧米では「日用品分野の behemoth(ビヒモス:聖書に出てくる巨獣)」と呼ばれる。「モンスター」を越える世界的巨大企業だ。
180カ国以上に展開し、2015年6月期の売上高は830億ドル(前年比0.6%増)もある。1ドル120円で換算すると約9兆9600億円にもなり、10兆円にも達するかという勢いだ。営業利益は153億ドル、経常利益は149億ドルで前年からは微増だが、対売上高でみると営業利益率が18.4%、経常利益率は18%と、類まれな高収益企業といえる。
■大変革
そのP&Gに今、大きな動きが出ている。
A・G・ラフリーCEO(最高経営責任者)兼会長が実質引退し、社長兼CEOにグローバル・ビューティ・グルーミング&ヘルスケア部門長のデイビッド・テイラー氏が11月に就任する。ラフリー氏は00〜09年にCEO職を務めて業績を大きく伸ばし、名経営者と謳われた。2度目のCEOとして復帰したのが13年のことだった。
しかし、残念ながら2回目のCEO登板では大きく業績を伸ばすことはなく、今回の交替となった。テイラー氏は80年にP&Gに入社し、ベビー・ケアやホーム・ケアなどの日用品を担当し、北米、ヨーロッパ、アジアで働いた経験を持つ。
トップ人事に伴い、大きな動きもあった。香水メジャーとして知られる米コティ(本社:ニューヨーク)に125億ドル(約1兆5250億円)で傘下の43ブランドを売却すると表明したのだ。売却されるブランドの中には、「ウエラ」(ヘア・ケア)、「カバーガール」「マックスファクター」(化粧品)、「ヒューゴ ボス」「グッチ」「Dolce & Gabbana」(香水)、その他ヘア・スタイリング関連のブランドが含まれる。
今回切り離されるブランドには有名なものも含まれ、また売却金額は巨額であり、両社にとっては重大な戦略的意思決定となった。P&G側では「選択と集中」を進め、「中期的にはベビー・ケア、ファミリー・ケア、フェミニン(女性)・ケア、ファブリック(衣類)・ケア、ホーム・ケアの分野に注力する」(7月16日付「Forbes Online」記事より)と見られている。
■「企業マーケティング大学」
P&Gが手放した、輝くようなブランド群に圧倒される。同社の場合は、数百に上るブランド群を買ったり売ったり育てたりして、そのポートフォリオを柔軟に組み替えてきた。
強みの源泉として注目すべきは、P&Gの「ブランド・マネジャー」制である。他の企業では「プロダクト・マネジャー」と呼ばれることもあるが、その規範となっているのはP&Gだ。
ブランド・マネジャーは担当したブランドについて、世界中でのビジネス展開に責任と権限を持つ。R&D(研究・開発)から生産計画、マーケティング、そしてもちろん売上高と利益責任にも同様である。よって、P&G社内にはブランドの数だけ企業家がいるという状況だ。
そのため、「企業マーケティング大学」との異名を持つP&G出身者は、世界中のパッケージ・グッズあるいは消費物企業から引っ張りだことなっている。BtoCの分野では世界中で尊敬されている企業だ。
■類まれな経営技能
引退することになったラフリー氏は、『P&G式「勝つために戦う」戦略』(朝日新聞出版、13年刊)を著している。共著者が同社の戦略コンサルタントとして、ラフリー氏を支えたロジャー・L・マーティン氏だ。マーティン氏は米トロント大学の経営学部長で、同書は主としてマーティン氏の筆によると思われるが、学者がまとめてくれたお陰で逆に「ラフリー経営」がとてもわかりやすく描き出されている好著だ。
本書で、P&Gには長きにわたって米ハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏がコンサルタントとして関与していたことを知った。ラフリー経営は、ポーター氏の掲げる特に次の2つのセオリーに立脚している。
・ポジショニング
・「コスト・リーダーシップ戦略」か「差異化戦略」の選択
そして、P&G流の競争戦略として、次の「5つのステップの戦略カスケード(滝)の統合」というセオリーに行き着いた。
・勝利のアスピレーションは何か
・戦場はどこか
・どうやって勝つか
・どんな能力が必要か
・どんな経営システムが必要か
セオリーの詳細については同書を参照していただきたいが、通読して私が強く感じたことが2つある。
まず会社全体で採択する競争戦略がしっかりセオリー立てされ、それを全組織が世界中で徹底的に共有している。方法論が同じなのだ。単一企業でこれだけしっかり自社の戦略をセオリーとしてまとめ、実践しているケースは稀である。
そしてP&Gでは、世界中で多数のブランド展開における新しい経験や消費者知見を限りなく積み上げ共有している。これだけ優れた理論体系を持った巨大企業が「ラーニング・オーガニゼーション」として、さらにその経営技能に磨きをかけ続けているのである。
■日本市場に激震か
P&Gで起きている大きなうねりに呼応して、日本法人であるP&Gジャパンでも社長の交代が発表された。米国本社でアフリカ担当のバイス・プレジデントだったスタニスラブ・ベセラ氏の就任が8月に発表された。日本人社長だった奥山真司氏と交替する。
外資系企業で本社から社長が送り込まれる、そしてその人材は本社でも副社長だった。これは、日本市場を本格的にてこ入れしようという意欲の現れと受け止められる。日本の15年6月期業績は公表されないが、売上高は6%程度の伸び、利益は大幅な増益とみられている。
いよいよ本気になった「日用品、トイレタリーのビヒモス(巨獣)」P&Gの攻勢に、国内市場トップの花王、そして2位のライオンはどのように立ち向かおうとしているのだろうか。注目されるところである。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
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