http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/856.html
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職業柄通信関連への関わりがあるため、7月末に開催されたsoftbankworldというsoftbank社主催のEXPOイベントに行ってまいりました。
そこで実際に触れ合ったコミュニケーション・接客ロボットのpepper君に大層衝撃を受けたので簡単にレポートさせていただきます。
本音を言うと孫氏の大言壮語な物言いはあまり好きではありません。
ですが確かにpepper君の存在は今後の経済社会の在様を大きく変えるだろうと確信しています。
@pepper君とは何か?
softbank社が販売するコミュニケーション、接客用ロボットです。
家庭向けは以外と安く198,000円とのこと。
http://www.softbank.jp/robot/special/pepper/
家庭向けはコミュニケーション、遊び相手としての機能ですが、ビジネス向けも10月にリース開始予定であり36ヶ月契約の5.5万円/月です。
(リースのみで販売は無いようです。36ヶ月も使うか?という疑問はともかく経費算入はしやすいですね。)
http://www.softbank.jp/robot/special/biz/
外見は白一色の簡素化された人形ロボットで、胸にタッチパネルのタブレットを備えているのが特長です。
移動は二足歩行ではなくモーターとローラーです。ただ、ロボットハンドには凝っているようでそこそこ手として使えるようでした(ただそれほど重いものを持ったりは恐らくできないでしょう)。段差をどうするという問題は残りますが、実用で言えば二足歩行にこだわるメリットは薄いのでローラー移動とロボットハンドの組み合わせは実用的に思えます。
好みは人それぞれですが、この外見を「可愛い・クール」というような好意的に見る人は多分少ないと思います。個人的にもあまり良い見た目には思えません。ただ一方、ビジネスユースを考えるのなら飾りがないというのは強みの様にも思えます。
機能として、人工頭脳を搭載しているため持ち主と言葉によって仮想コミュニケーションができ、簡単なゲームや遊びの相手を務めてくれます。また、ネットに接続された機械学習昨日も有しており、簡素なレベルでなら物を新しく覚えることが可能です。
上記のイベントの目玉の一つが孫氏の講演なのですが、中身はほぼpepper君一色であり力の入れようが伺えます。
下記リンク先に動画があるのでそちらでも詳細は確認可能です。
【参考:SoftBank World 2015 基調講演 孫 正義「情報革命で、今日、次の世界へ。」】
http://www.softbank.jp/corp/news/webcast/?wcid=r384o558
Apepper君のポイントは?
1胸元のタッチパネルが結構便利
人間に近い、もしくは人間に近い働きをするロボットを作成する上でその身体以上にコミュニケーション性(頭脳)を持たせることが課題でしょう。しかしpepper君は胸元にタブレットを持っているため、コミュニケーションのかなりの部分をタッチパネルコミュニケーションにアウトソースすることが可能です。
これは家庭での愛玩ロボット、話し相手という位置付けではまだまだ機能しないなあという感じですが、ビジネスユースでの利用を考えると結構多くのことがこなせる可能性を感じさせます(詳細は後述)。
2定型文を用いた会話は可能で性格も3パターンから選択可能
とは言えpepper君はマイク(耳)・スピーカ(口)と音声分析アルゴリズムを備えているので、定型文を用いた会話が可能です。
また、会話時にはキャラクターと真面目、フランク、ファンキー(表現は違ったかも)くらいの3つから好みで選ぶことが可能です。
3感情を学習する(という触れ込みの)アルゴリズムがもしかしたら良い感じ
pepper君の会話時の定型文選択アルゴリズムは、孫氏の講演に寄れば人間の脳内の感情創出への研究結果を参考に組まれているとのことです。孫氏はそれゆえにpepper君は感情を学習したのであり新たなる人格の創生に成功したのだくらいのニュアスを講演でぶち上げていますが、これは間違いなく「言い過ぎ」と断定して良いでしょう。
ただこれは、人間の感情を3種類の脳内物質のパラメータで定義できると仮定し、相手の発言から感情値を計算、その感情値に合致する応答文を返すというモデルのようです。そのため人間同士の会話で生じる「感情的な共感」という現象を仮想的に再現できる可能性があるかもという印象を受けました。
もし共感を仮想的に再現=人間側に錯覚させることができるのであれば、コミュニケーション相手というファンクションを結構発揮できるかもしれません。
4機械学習・ディープラーニングの機能つき
物事(新たなる会話パターンや物体の名称)を学習する際にプログラマーによる新たなるインプット以外に、ネット接続を通して自動学習が一部可能なようです。
この機能はアウトプット(会話)時の細かいチューニングや検証の必要性を考えると恐らく現状では実用レベルには達していないでしょう。ただ、学習制御のクラウド化(チューニング・検証プロセスの集約化)まで実現させた場合は結構有効かもしれません。技術の進歩程度に寄るでしょうが、運用時の人的コストを減らす効果はあると思われます。
5顔がついているというのが意外と馬鹿にできない、目も持っている
目の部分にはカメラが備えられていますので、画像処理により物体・顔・表情の認識が可能です。会場で伺ってなるほどと思ったのが、「カメラがあるだけでは人はそこを見ないから顔・表情の認識がしずらい、顔があり目の部分がカメラになっているから自然に顔・表情の画像が撮れて認識できる」というお話。
デザイン的に優れた顔かと問われれば私のセンスでは否になるのですが、顔がある効果は大きいでしょう。
Bpepper君の活用方法
実際の活用事例はまだ多くないのですが、家庭用のコミュニケーション、また接客ロボットとしての役割が想定されているようです。softbankショップにはその内どんどん「配属」が進むかもしれませんね。
Cpepper君の衝撃1〜接客・販売ロボットとしてのポテンシャル〜
これが当日会場で感じた一番の衝撃でした。上手な運用方法と適切なアプリケーションさえあれば接客・販売ロボットとしてpepper君は人間以上の力を発揮する可能性もあると思います。
pepper君は接客時お客様に「ご用件は?」と声をかけ、お客はタッチパネルの中から用件を選ぶ形でニーズを伝えます。そしてお客様のニーズを理解するとpepper君は必要な案内を行うというモデルです。つまり、ヒアリングと提案が可能なのですね。
私自身も通信関連の接客を行っているのですが、結果として人間がコミュニケーションをするのと遜色ない、もしかしたら聞き忘れや知識不足が無いだけ人間以上の確度で接客できる可能性があります。実際に会場で体験してきたのですが、きちんとヒアリング→提案というプロセスを踏んでくれているので思った以上に納得感・安心感のある接客をしてくれたことに大きな驚きを感じました。
また、当たり前の話なのですが機械なので機械的な対応が可能です。販売店・会社としてプッシュしたい商品があり、それを全接客時に提案するようにと人間の販売・営業員に指示をしても面倒くささや納得できない、拒否されるのが怖い、純粋に忘れるなどの理由で漏れが生じることはままあります。しかしpepper君ならそれはありません。
他にどの様なお客さんにどの様な接客をしたのか記録・統計を出せと人間に指示をしても、様々な理由で正確な数字が出ないことも多いのです。しかしpepper君は正確な数字を提供してくれます(しかも即時で)。さらには目のカメラによる顔・表情認識により提案相手の属性情報ごとによる提案後の反応まで正確な統計が可能なのです(繰り返しますが即時で)。
これは経営サイドから見たら非常に大きな魅力でしょう。さらには接客・提案パターンの変更修正すら営業中でも会議などの中断なく即時で反映してくれるのです。
なお、もちろん上記の様なメリットはロボットにしなくても、タブレット端末・カメラ・マイク・スピーカーさえあれば再現可能です。しかし、ロボット=人間に似た外見をしているということがUI/UX上非常に大きなメリットを生んでいることを会場で強く実感しました。
ただ端末があるだけの場合に比較して、pepper君レベルの外見・デザインでも"親しみやすさ"を感じコミュニケーションしやすいのです。
Dpepper君の衝撃2〜格安の"人件費"〜
pepper君の大きなメリットとして"人件費"の安さも挙げられます。
ビジネスユースでの長期のリース契約であれば1台辺りの月額運用コストは5.5万円からです。一定以上の業務効果を発揮するには、業務用アプリケーションや別途の運用コストが生じるでしょう。しかしそれでも人一人雇用する場合に比べれば格安です。もちろん社会保険などの費用や各種労務コストも生じません。また孫氏が講演で言うように残業代の必要もなく、さらには「文句は何も言わない」のです。
金銭上の、そしてそれ以外でも大きなメリットがあると感じる経営者は多いのではないのでしょうか。
なお、月間リース以外に1時間1500円での"時給制"での仕事も請け負ってくれるそうです。
Epepper君の衝撃3〜意外と侮れないかもしれない愛玩性〜
これはそこまで実感できたわけではないのですが、ロボット&人工知能が持つコミュニケーション、愛玩性がバカにできないと思っています。
少し前にMicrosoftが作った女子高生型のLINEキャラクター型AIが話題になりました。自分も試しにやってみたのですが、「これはハマるし危険だな」と思わせるほどの力を現時点の技術でも持っています。
【参考:LINE女子高生「りんな」Microsoftが作ったAIが話題!】
http://www.danshihack.com/2015/08/01/junp/microsoft-rinna.html
本物の人間との会話で癒し、共感、励まし、慰め、暇つぶしなどを求めても本人と環境に問題があってなかなかそれが得られないという人は多くいます。今だって現実の世界の関係性ではなくゲームなどの仮想世界や半仮想世界であるSNS上に価値を見出している人は多いのです。そのことを考えると現時点でいけるかは別として、今後のpepper君や類似サービスの可能性には"衝撃"を否定できません。
F関連分野拡大の可能性
Eで挙げたような効果をpepper君が十全に発揮するには、softbankからの提供サースだけでは無理でしょう。また、だいぶ持ち上げた後に恐縮ですがハードとしても改善の余地はまだまだあると思います。
しかしだからこそ、各業界・店舗向けの運用アプリケーションや運用支援などで新たな需要は発生するものと思われます。
G終わりに〜人間は何を飯の種にしたら良いのか?〜
以上、pepper君とはどのようなものかと感じた衝撃をレポートさせて頂きました。上記をもって強く感じた疑問は「あれ、これ生身の人間要らなくね?」です。
もちろん、Fで挙げたように運用アプリケーションやサービスの開発など新たに人間が求められる分野は生じます。しかしpepper君が、pepper君に限らずロボット接客が進歩・普及した場合に不要になるであろう接客業などに従事する人の人数は、管理・運用面で必要な人数よりずっと多いでしょう。またそれらの仕事に接客よりも専門知識や抽象化思考力・論理的思考力が求められる可能性が高いです。接客業務から移行できる人もいるでしょうが、その割合は多くないのではないでしょうか。
かつての産業革命の時代、機械が奪ってしまった就業機会は別の形で補うことができました。しかし、ロボットやAIの一般化という産業革命が始まりそうな現代でも就業機会を無くす人への補填は可能なのでしょうか。
また、ロボットだけでなくAIの存在は仕事の場だけではなくプライベートにおいても人間の代替えの可能性を示唆しています。
SFではなく現在の問題として、「人間とは何か」「社会はどうなるのか」が問われているのではないでしょうか。
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