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<特別対談>内田樹×水野和夫  資本主義の限界とニッポンの未来〜経済が縮み続ける時代をいかに生きるか(週刊現代)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/837.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 21 日 09:15:20: igsppGRN/E9PQ
 

             多くの人が、株価に振り回されている〔PHOTO〕gettyimages


【特別対談】内田樹×水野和夫  資本主義の限界とニッポンの未来〜経済が縮み続ける時代をいかに生きるか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44738
2015年08月21日(金) 週刊現代 :現代ビジネス


日本は好景気って、本当なのだろうか—。ニュースを見ながら、ふと疑問に思ったことが誰にでもあるだろう。転換期を迎えている経済の「仕組み」について、思想家と経済学者が語り合った。

■中国バブル崩壊は必然

内田樹 水野先生とは、前々からお話ししたいと思っていたんです。先生は昨年ベストセラーになった『資本主義の終焉と歴史の危機』で、いま資本主義が限界を迎えていることを、経済史を紐解きながら説明されていた。

株式市場の動向や企業の四半期決算など、狭い範囲の、短い期間の情報に振り回される経済学者が多いなか、先生は時間的にも空間的にも「ビッグデザイン」を描かれていて、新鮮でした。

水野和夫 現在の世界では、いたるところで過剰生産に陥り、これまでのような経済成長はもはや見込めません。これは13世紀以来、8世紀に及ぶ資本主義の歴史でも初めてのこと。世界経済は、歴史上の転換点にあると書いたのが、拙著でした。

内田 水野先生のお話からは、資本主義が限界を迎えた世界の「これから」について、しっかりと考えないといけないと思わされます。

しかし現実には、一般の人たちでさえ、経済成長政策に期待を馳せ、毎日の株価に一喜一憂している。カネ儲けばかり考えているようです。

水野 そうですね。資本主義が行き詰まる一方で、カネ儲けに躍起になる人々が溢れている。

そんな世界の象徴が、中国経済です。大きな歴史の流れの中で、中国がバブルの崩壊過程にあるのは間違いないでしょう。

'80年代の日本では、株や不動産の異常な高騰とともに、実体経済よりも過剰生産に陥った結果、バブルが崩壊しました。中国の現状はさらに過剰です。一例を挙げると、中国のGDPは世界の1割なのに、粗鋼生産は5割も占めています。

内田 中国に限らず、消費動向というものは幻想だと思うんです。日本のバブルの時も、時給750円のラーメン屋のアルバイト店員が全額ローンを組んで、ロレックスの腕時計をはめていたものです。

それは、将来的に収入が増え続けるという幻想に基づいた消費行動で、本人の実力とは無関係。だからやがてどこかで行き詰まる。「爆買い」に走っている中国も同じです。

水野 中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立するのも、「カネを貸すから中国製の鉄を買ってビルでも建てろ」ということでしょう。バブル時の日本の金融機関がそうだったように、AIIBはグローバルな規模で不良債権を抱える危険が高いと見ています。

内田 それでも世界の国々が擦り寄るのは、「鉄火場」がそこにしかないからでしょう。

水野 要は、世界中どこを探しても成長市場などなくなってしまったということです。'90年代以降の世界経済は、「3年に1度バブルが起こり、それが崩壊する」ことを繰り返してなんとか維持しているだけ。中国の場合は、リーマン・ショック後の不況を4兆元(約80兆円)という大公共投資でなんとか救ったわけです。

内田 バブルの後始末をするには、次のバブルをしかけるしかない。

水野 ええ、しかも次のバブルは前回より大きくなければいけない。

内田 ほとんど「バブルの覚醒剤中毒」ですね。もちろん、その中国バブルが崩壊すれば、日本にとっても他人事ではない。

水野 中国人富裕層による日本国内での消費も、打撃が避けられない。中国人の購入で高値を維持してきたタワーマンション市場にもブレーキがかかります。投資ファンドの人たちのように、「下げ」でも儲けられればいいのでしょうが、それほどしたたかな日本人は少ないですからね。

■株価が上がれば幸せか

内田 その投資ファンドの格好の餌食になっているのがアベノミクスなわけですが、正直言って、株価は上がっているものの、好況だという実感はありません。

水野 黒田東彦総裁の号令のもと、日銀がマネーの量を2倍に増やしたことで為替は円安になり、株価は2倍になりましたが、結局はそれだけ。景気はよくなっていません。

内田 不思議なのは、景気がいいという実感はないけれど、株価が上がっているからよしとしようというムードがあること。株価と生活はほとんど関係ないですよね。

水野 私はNHKのニュースで毎日、株価を伝えるようになったのがいけないと思うんですよ。

内田 昔は、プロレスの結果なんかを報道していたのに(笑)。

水野 株価の上がり下がりに必要以上に注目が集まり、株価が経済の状況を示していると錯覚してしまった。'87年のNTT上場が、国民が株に一気に興味を持ったきっかけだったように思えます。

内田 今年秋に予定されている「ゆうちょ銀行」の上場でも、同じことが起こるかもしれませんね。

水野 でも、株価なんて、普通に暮らしている人は知らんぷりをしていればいい。いくら株価が上がったところで、一人あたりの実質賃金は25ヵ月間連続で低下していたんですよ。バブル時は給料が上がりましたが、いまはまったく違う。

内田 いまは年金も株で運用しているから、「株が上がれば国民全員幸せ」という状況にされている。しかしそれも困りモノです。全国民が、知らない間に賭場に引きずり込まれているようなものです。

水野 幸い株価が上がっているからいいのですが、相場は上がれば必ず下がります。相場が崩れたら、損をした分の年金は税金で補填するしかない。

■「いらないモノ」を作っている

内田 株で儲けているのは一部の金持ちだけなのに、株のバブルが弾けると国民全員の懐から持って行かれる。なぜ、国はそこまでして国民にリスクを取らせたがるのでしょうかね。

水野 先にも言いましたが、世界のどこを見ても「成長市場」がないわけですから、いまあるところからむしり取ることでしか、経済を維持できなくなっているのです。労働法を改正して裁量労働を拡大しようとしたり、雇用の流動化を図ったりしているのも、賃金を下げていくための仕組み作りでしょう。

内田 まず、一部が金持ちになると格差が生まれるものの、高所得者層の経済活動が活発化すれば、やがて低所得者層にも富が行き渡ると言われます。ですが、そんな見込みはないですよね。

水野 むしろ貧乏な人をさらに貧乏にさせることで、お金持ちは自分たちの地位を維持することを考えているわけですから。

内田 一部の欲深い経営者たちが自分たちの利益を増大するために、アベノミクスや労働法改正を支持するのはわかります。でも、生活が苦しくなっている国民の中にも、そんな安倍政権の政策を支持する人が一定数いて、高支持率を生み出していた。これは理解しがたかったですね。

水野 しかし、最近は支持率も低下傾向が続いていますね。

内田 国民がすでに安倍政権に飽きてきていますから。7月15日の衆議院特別委員会での安保法制の強行採決は、再登板後の安倍政権のピークになるんじゃないでしょうか。なにしろ憲法学者たちが違憲だと言っているのに、説明もろくにしないまま強行採決した。これほどの暴挙は、なかなかできるものではない。

水野 たしかに安保の話を持ち出したころから、経済政策に対する期待も低下した感があります。最近はアベノミクスという言葉を聞くことすらありません。

安倍総理のこれまでのパターンでは、こういう場合、景気刺激策によって経済面での支持回復を図りたいところなのでしょうが、それももう難しい。東京オリンピックをアベノミクス「第四の矢」だと発言したのも、結局他に手がないことの裏返しでしょう。

内田 消費が伸びない、多くの中小企業が不振に喘いでいるという長年の課題も、解決する兆しはないですよね。周りを見渡しても消費者が求めていないものばかり作っている気がします。

水野 いまの世界が陥っている過剰生産は、マルクスの言う資本主義の「宿命」です。

世の中が貧しいときは、供給する側が需要を作れる。つまり、モノがあれば買う人がいるからそれでも経済が維持できるのですが、資源が行き渡り、成熟した社会では無理。それでも企業は仕事をしないといけないから、いらないものでも作るしかない。

内田 以前、ある電機メーカーの人から、「半年に1回新製品を出して、その度にコストを削減するのがノルマだ」と聞きました。それが当たり前の社会は間違っていませんか。

水野 これからは、企業が利益至上主義からゆっくりと脱却していくのではと私は考えています。企業の付加価値は、人件費と資本維持の減価償却費、あとは利益。仮に利益を出さなくていいと決めれば、人件費は今の1・5倍にできるし、雇用も増やせるのです。

利益が増えないと株価が上がらないから株主は怒るでしょう。「俺たちはリスクをとっているんだ」と言うかもしれません。しかし、預金者だって金利はほとんどゼロ。しかも、預金は金融機関を通じて国債を買わされているから、株主以上にリスクも取っている。

内田 会社は利益を追求するものだと考えていますが、そもそもは、人が生きるために会社がある。そう考えるべきですね。

■国債は放っておけ

水野 企業が利益を出さないと税収も減り、1000兆円にもなる国の借金が返せないという意見があります。

しかし、国債は国にとっては借金ですが、国民からすると資産です。国民の預金で銀行は国債を買っているわけですから。国民が資産として持ち続けるなら、国債は永久にそのままでいいわけです。

内田 なるほど。

水野 資本主義が限界を迎えるいま、これからは世界的に「撤退戦略」が問われます。日本も経済規模が縮小するなかで、どう生きていくかを考えないといけません。経済史の視点で言えば、その参考になるのは戦後のイギリスでしょう。

内田 7つの海を制したイギリスが、戦後わずか10年の間に一つの島国にまで落とし込んでいった。それで社会保障負担の増加や国民の勤労意欲の低下という「英国病」が起きたわけですが、むしろそれくらいでよく耐えたと言える。

水野 イギリスは'90年代以降、再び経済成長することができたわけですが、これからの世界の国々が迎えるのはそのまま縮み続ける将来です。

内田 その縮み続ける経済を考える上で、日本の一つの未来の形は、やはり地方回帰だと思います。

その動きはすでに若い人を中心に広まっていて、2012年には9000人が自治体の移住支援を利用している。制度を利用せずに移住した人まで含めれば2万人以上という説もある。彼らは「地方で一旗揚げよう」というのではなく、「農業で食べていければそれでいい」と考えているんです。東京では食えないリスクがあるけど、農業をやっている限り、飯は食えますからね。

水野 カネ儲けばかり考えるのではなく、「縮んで豊かになる」思想が必要とされています。

うちだ・たつる/'50年生まれ。神戸女学院大学文学部名誉教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『聖地巡礼 熊野紀行』(釈徹宗との共著)、『日本の反知性主義』(編著)など
みずの・かずお/'53年生まれ。経済学者。日本大学国際関係学部教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官を歴任

「週刊現代」2015年8月15日・22日合併号より

 

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コメント
 
1. 2015年8月21日 18:12:28 : OO6Zlan35k
2015年8月21日 新村直弘 [マーケット・リスク・アドバイザリー代表取締役]
原材料価格軒並み下落でも、食品の値段が上がるのはなぜか
原油、金属、農産物など
国際商品価格はほとんどが下落


原材料価格が軒並み下落の中で、食料品は値上がりが顕著だ
 原油、金属、農産物などの国際商品(コモディティ)価格の下落が続いている。理由はそれぞれ異なるのだが、ほとんどの商品が下落していることから、共通の要因があると考えられる。

 主な要因としては、(1)米利上げを背景としたドル高の進行、(2)原油価格が下落していること、(3)期待されていた新興国経済の成長ペースが中国景気の急減速などの影響を受けて予想を下回っていること、が挙げられる。

(1)のドル指数の上昇は生産地での生産コスト引き下げに寄与するため、供給増加要因となる。また、ドル高の進行は消費国にとっては自国通貨ベースでの価格上昇につながり、消費を抑制する。具体的な例を挙げれば、原油が50ドルで為替が100円であれば円建ての価格は5000円だが、ドル高が進行して円が200円になれば、円建ての価格は1万円に上昇するため、消費を抑制する効果を持つということだ。基本的にドルと商品価格が逆の動きをすることを市場参加者が理解しているために、市場はこれに非常に敏感に反応するようになっている。

 ドル高と連動している部分もあるが、(2)の原油安の進行も生産コストの引き下げを通じて、価格を下押ししやすい。

 これ以上に大きかったのが、(3)の中国・新興国の成長見通しが、中国の株価急落などでより悲観的な方向に傾いていることだろう。需要の増加期待が強い状況であれば、供給過剰状態にあったとしても価格は急に下落するものではない。

 筆者は、今後の商品価格動向を左右するのは需要を牽引する中国・米国の景気動向だと考えている。中国政府は今のところ景気のハードランディングを回避するために公共投資に前向きとみられており、これが具体化すれば、景気への過剰に悲観的な見方を後退させ、価格を下支えることになるだろう。

 ただし、8月11日・12日・13日に続けて行われた人民元の切り下げが、中国の政策対応に関して暗い影を落としている。そもそも人民元はドルペッグ制であるため、ドルが独歩高となる中で実体経済にそぐわない上昇を続けていたのも事実ではある。しかしこのタイミングでの人民元の切り下げは、対応が後手に回っており統一感がないとの印象を与えるもので、市場は「中国当局は危機対応能力が低い」と考え始めている。

 人民元の切り下げは中国の輸出企業にとってはプラスに作用するが、輸入価格の上昇を通じて内需系企業や公共投資にはマイナスに作用する。中国に輸出を行っている東南アジアの新興諸国も、中国製品との先進国市場での競合や、中国への輸出減少の影響を受けることになるだろう。現時点で市場が期待していたのは内需拡大策の実行であり、中国企業による外需の奪取ではないことから、商品価格にとってはマイナス面が強調された形となった。

カカオ豆、綿花など
それでも上昇している商品も

 この状況でも年初来騰落率がプラスになっている商品がある。弊社が重要と考えてウォッチしている国際商品42品目の中で年初来の上昇率がプラスなのは、本稿執筆時点で米国ガソリン、欧米ココア(カカオ豆)、シカゴ綿花、シカゴ牛乳(チェダーチーズ向け)、シカゴもみ米の6品目で、需給ファンダメンタルズ(需要と供給のバランス)が相対的にタイト、あるいは昨年後半から年初にかけての下落が顕著でその反動が出ている商品だ(下の図参照)。


出所:市場データを元にマーケット・リスク・アドバイザリー作成 拡大画像表示
 少し個別に見てみると、米国ガソリン(日本国内のガソリン価格とは異なる)の価格上昇は、米景気回復や価格下落による需要増加によって国内需給がタイト目であったこともあるが、昨年後半の下落幅が大きかったことの反動面がより強い。しかし原油価格の下落は当然ガソリン価格にもマイナスに作用すること、これから秋にかけて米国は不需要期に向かうため需要の鈍化が予想されることから、今後は水準を切り下げる動きになると予想される。

 チョコレートに用いられるカカオ豆も需給のタイト感が価格を押し上げている。これは価格が下がりすぎたというよりは、需給ファンダメンタルズの強さが影響した。

 需要面では中国の経済規模拡大に伴うアジアの需要増加の影響が大きい。国際ココア機関の調査では、2015年のカカオ豆の生産量と摩砕需要は2000年対比で生産量が35.5%の増加、摩砕量が40.7%の増加となっている。これはカカオの生育には年単位の時間がかかること、大規模生産に向かない農産品であること、カカオ豆を原料に作られるチョコレートは嗜好性の強い商品であり、新興国経済規模拡大の影響を受けたことによるものだ。

 また、生産面では世界最大の生産国であるコートジボワールでエボラ出血熱が発生したり、エルニーニョの影響が拡大するとの懸念が強まるなど、生産見通しが弱気に傾いたことも価格上昇を助長した。ただし価格上昇によるレーショニング(価格上昇によって需要が減少すること)、中国経済の失速懸念の強まりが影響し、足元の価格はガソリン同様下落している。

 綿花は、春先の悪天候によって米国の作付けがこの10年で最も遅い進捗率となったことが需給ひっ迫懸念を強め価格が上昇していたが、やはり足元では、作柄状況の改善や、最大輸入国である中国の景気拡大ペースの鈍化に伴う輸入の減少観測が価格を下押ししている。

 牛乳は米国の新興国向けの乳製品輸出需要の増加と、2014年に主要生産地区であるカリフォルニア州で発生した大干ばつの影響で、指標となるシカゴ牛乳先物価格(クラスIII)が史上最高値となっていたが、穀物価格の下落によるコスト要因と中国を初めとする新興国の景気拡大ペース鈍化の影響で昨年末にかけて大幅に下落、その反動による。

 シカゴもみ米価格の上昇は、エルニーニョの影響でアジア全域が深刻な干ばつに見舞われ、世界最大のタイを含む東南アジア諸国の生産が落ち込むと予想されており、世界需給のひっ迫懸念が強まっていることが材料視されたものだ。

原料価格から最終製品価格への
波及にはタイムラグがある

 ではこうした商品価格の変動は、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのだろうか。

 個人消費は日本のGDPの約6割を占める重要なセクターである。ここまで見た通り、商品価格は一部を除き下落傾向にある。これは家計にとっては好材料のはずだが、先日発表された4〜6月期GDPがマイナス成長となった主因の1つは、消費の低迷だった。

 実は、上述の商品価格の変動は、私たちが日々、スーパーやコンビニで購入している食品・食料品の価格や、電力・ガス、ガソリン価格を直ちに変動させるものではない。生産地で船積みされてから我々のところまで運ばれ、最終製品に加工されるまでの時間差や、最終製品に加工されるまでの価値の付加によって、原料価格に対する最終価格の弾力性が低い(原料価格の変化に対する最終価格の変化が小さい)、といったことが影響するためだ。

 商品価格変動の家計に与える影響をもう少し分かりやすくしてみよう。下のグラフは、総務省の家計調査による1世帯当たり(2人以上世帯)の1ヵ月の消費支出(実収入から保険料などの非消費支出を引いたもの)で、主要項目内訳を示したものだ。月によって変動があるため、今年1月〜6月までの平均を使っているが、消費支出は実収入の約60%を占めている。

 その中でのシェアを比較すると、交際費や諸雑費などの「その他の消費支出」を除くと、消費支出に占める比率が高いのは食料で、次いで光熱・水道代、交通・通信と続く。交通は自動車など関係費が大半を占めておりこの中にはガソリン代も含まれている。つまり、消費支出のシェア上位には、市場性のある項目が多く、国際市場価格の変動に個人消費の動向がさらされやすいことを意味している。


出所:総務省
エネルギー価格下落の
家計への影響は大きいが…

 食料でもその製造過程にエネルギーを使用し、加工食品などはそのパッケージが石油から作られる化学製品であったりする。従って、最も家計に影響を与えるのはエネルギーであることはほぼ間違いがない。足元のエネルギー価格の下落は家計にとっては慈雨となるはずだ。

 この傾向は消費者物価指数でも確認可能で、2015年6月のCPIの項目別の前年比上昇率を見てみると、食料が前年比+2.5%(ウェイト2525)(*)と上昇しているのを、光熱費・水道▲3.1%(704)、交通・通信▲2.%(1421)などのエネルギー価格の下落が相殺していることがうかがえる。

 一方で、2015年1〜6月期の光熱費の平均は2万6727円と前年から572円増加、ガソリン代を含む自動車維持費は1万9983円と▲981円の減少となっている。これは両者の原油価格の下落反映までの時間差の違いによるものと考えられる(「原油下落でも電気・ガス料金が下がらない理由」参照)。電気代・ガス代は現在下落基調にあり、この下落メリットを実感できるようになるのは今後ということになろう。

 ただし、この価格下落も恒常的なものではない。現在下落している原油価格が反発する可能性は十分あるし、原油価格が上がらなくても中国の人民元切り下げに対抗して日本が追加緩和を実施、さらなる円安の進行で円建てのエネルギー価格が上昇してコスト増加に繋がる可能性がある。エネルギー価格動向には今後も注視が必要である。

*ウェイト:消費者物価指数(CPI)の算出で用いられる、品目ごとの支出割合。計10000。食料の場合で言えば家計消費支出に占める割合が10000分の2525であることを示す。

市場の変動にさらされる家計
さらに為替が無視できない要因に

 私たちの生活により直結し、消費支出の項目の中で最もシェアの大きい食料の項目も詳しく見てみよう(下の図参照)。その中で最も比率が高いのが外食であるが、これは1万4663円と前年(1万4336円)からほとんど変わっていない。支出が減少しているのが主食である穀類だが、コメの下落をパンの上昇が相殺する形となっており、海外からの輸入品の価格上昇が影響していると考えられる。


出所:総務省 拡大画像表示
 これら以外の項目は全て上昇している。商品価格は農産品も含めて軒並み市場価格が下落しているのだが、その中で食料品価格が上昇しているのは、生産地からの輸送や最終製品に加工するまでの時間差が価格転嫁(値下げ)を遅らせているためだ。原材料調達は前もって計画的に行われるため、その時の市場価格の下落や上昇が直ちに最終価格に転嫁される訳ではない。

 また、為替の絶対水準が円安に傾いていることも、食料価格が下落しない要因の1つと考えられる。

 最も支出が増加しているのは畜産品だ。米国の食肉価格の指標となる肥育牛価格は高止まりしており、2014年1〜6月比で見ると、ドル建ての価格は18.4%高の215セントドル/ポンド(473セント/キログラム)で取引されている。これに円が17.4%の下落(円安)となったことが影響した。

 農産品のドル建ての価格は豊作見通しで下落しているものが多いが、高水準の円安進行がこの効果を相殺している。次に上昇額・率が大きかったのは生鮮野菜だが、これについては円安進行に伴う輸入品価格の上昇に加えて、国内の天候状況の悪化(高温など)が影響しているためと考えられる。

 つまり食料でも、ほぼ全量を海外から輸入しているエネルギーと同様、国際市況に加えて為替の変動の影響が大きくなっていることを意味する。今後は海外から輸入を行っている輸入業者や加工食品製造業者のみならず、我々消費者も、より国際市況や為替動向の変化に対する意識を高めていく必要があるのではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/77028

[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数

2. 2015年8月21日 21:42:59 : eYOBlOWYhI
飾りだけ 派手な景気に 疲れ果て


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