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人民元の切り下げは世界各国に波紋を広げたが、主要国通貨の間では特に円とユーロが影響を受けるという〔AFPBB News〕
円とユーロに中国の双子の脅威 人民元切り下げで「ゆでガエル」状態に陥る恐れ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44569
2015.8.19 Financial Times JBpress
(2015年8月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
周りの温度が上昇しているのにそこから逃げることができない――。欧州と日本の通貨当局はそんな「ゆでガエル」のような状況に陥る可能性がある。鍋を熱しているのは中国の通貨・人民元の切り下げだ。
中国政府による今回の人民元安誘導は、新興国や資源国で輸出業者の競争、自国の株式市場、およびデフレへのインパクトに対する懸念を引き起こし、それらの国々の通貨全般に影響を及ぼしている。
では、先進国通貨はどうか。米ドルの上昇は、米連邦準備理事会(FRB)に来月の利上げを延期する理由を提供するかもしれないが、複数の為替ストラテジストの見立てによれば、米国経済は人民元切り下げの直接的な影響から十分守られているという。
ただ、ユーロ圏と日本はそうはいかないかもしれない。どちらも(段階は異なるとはいえ)金融緩和の最中にあり、そうすることによって――間接的にではあるが――通貨安を促し、中国との貿易取引が多い輸出業者を支援しようとしてきたからだ。
中国の景気に減速の兆候が見える中、人民元安は中国の輸出競争力を高め、ユーロ圏と日本は二重の痛手を負うことになるだろう。
■泣きっ面に蜂のECB
欧州中央銀行(ECB)にとってはさらに悪いことに、ユーロは先週、人民元の切り下げを受けて対ドルで上昇した。ユーロ圏の経済が成長していると市場が考えたからではない。ユーロはキャリートレードの資金調達通貨であり、その売りポジションの解消が行われているのだ。
中国政府の元安誘導は、ユーロ圏にとっては厄介なタイミングで行われている。原油安、金融緩和、ユーロの競争力向上といった好条件にもかかわらず、ドイツ、フランス、イタリアの3国で先週発表された国内総生産(GDP)統計が示すようにユーロ圏の経済成長の勢いは弱々しく、インフレ率も低迷している。
中国人民銀行が先週のショッキングな行動に及ぶ前から、ECBは中国のことを懸念していた。7月の会合の議事録では、中国の金融情勢がユーロ圏の景気の見通しに「予想以上の悪影響を及ぼしかねない」と警告していた。
こうした背景を考えれば、ECBのマリオ・ドラギ総裁にとってユーロ高が歓迎できる展開だとはとても言えない――。
ラボバンクのG10(主要10カ国)通貨担当ストラテジスト、ジェイン・フォーリー氏はそう指摘する。
では、どう対応するのか。フォーリー氏は言う。「まず、ドラギ総裁はハト派的な表現を用いてユーロ相場を押し下げようとすると思う」
それでは不十分かもしれない。人民元が切り下げられた後、市場ではユーロ圏のインフレ期待が急低下しているからだ。例えば、ECBが長期インフレ期待の指標として注視している5年先スタートのインフレスワップ5年物フォワードレートは、今年3月以来の水準に落ち込んでいる。
大手金融機関バークレイズのストラテジストたちは、今回の人民元切り下げにより、ECBが量的緩和(QE)の期限を2016年9月以降に延長することを発表するリスクが高まったと考えている。
また、バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストらは、インフレ率が低いことからQEの期限延長の議論が促されるだろうと述べている。
■日銀の出方は?
日銀も同じように考えているかもしれない。日本の第2四半期(4〜6月期)のGDPは年率換算で1.6%減少し、これまで2年半続いてきた安倍晋三首相の経済再生戦略をむしばんでいる。
コメルツ銀行の為替ストラテジストたちは、リスクは原油安と中国などの大きな貿易相手国の通貨下落が輸入価格を引き下げ、インフレを圧迫する事態だと指摘。「我々は、日銀が一体どの程度の障害を受け入れられるのか疑問に思い始めている。日銀は円安をますます歓迎するように思える」と話している。
■安倍首相にとっても問題に
東京の為替トレーダーたちは、アベノミクスが行き詰まり、選挙に絡む円安の計算が安倍首相の支持率低下に重くのしかかり始めると、アジア通貨の切り下げの政治作用が首相にとって問題になると言う。
円安はアベノミクスと日本の輸出産業の上層部に追い風を与えたが、日本の労働力の大半を雇用する中小企業にとっては恩恵がはるかに小さい。
野村証券のアナリストらは、今のところ、人民元切り下げが日本経済に与える直接的な影響は限定的だと話している。
だが、野村のエコノミストの木下智夫氏は、人民銀行の動きは市場の需給状況を以前よりよく反映するようになることを意味するため、「さらなる人民元安は日本経済により大きな影響をもたらす可能性がある」と指摘する。
通貨の鍋の温度は上昇している。欧州と日本の政策立案者が飛び出すのは、そう遠くないかもしれない。
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