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大前氏が提案 ギリシャとEUに幸せな道はギリシャのEU撤退
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150815-00000002-pseven-int
週刊ポスト2015年8月21・28日号
借金で首が回らなくなったギリシャという国家の行く末はどうなるかと危ぶまれたが、首の皮一枚つながった。ギリシャが今後、歩むべき道について大前研一氏が提案する。
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現代の“ギリシャ悲劇”が、ようやく終幕を迎えつつある。
ギリシャとEU(欧州連合)の債務交渉がすったもんだの末に決着した。17時間に及ぶユーロ圏首脳会議の結果、ギリシャのチプラス首相が増税や年金改革などの厳しい財政再建策を受け入れてEUが820億〜860億ユーロ(約11.2兆〜11.7兆円)の金融支援を実施することになり、ギリシャがユーロ圏から離脱して世界経済が混乱する恐れは、ひとまず遠のいた。
いずれギリシャはEUとの約束を守れなくなり、チプラス首相は石もて追われるだろうが、そもそもユーロは急拡大しすぎたことによる歪みが生じていた。
たとえば、ギリシャの1人あたりGDPは実力からすると1万ドルがいいところだと思うが、ユーロに加盟してEUから地方交付金などをもらっているため、上げ底で2万ドル超になり、年金は月額約800ユーロだ。
しかし、同じユーロ加盟国で健全財政のスロベニアは、1人あたりGDPが約1万8000ドルで年金は月額約300ユーロである。つまり、ギリシャが自分の身の丈に合った生活をしていれば、年金は半分の月額400ユーロくらいが妥当なのである。
また、同じユーロ圏でもオランダやドイツ、フランスなどとギリシャとでは1人あたりGDPで4〜5倍の差がある。そういう国々が一つの通貨でやっていけるのかという吟味が、ユーロ誕生の契機となったマーストリヒト会議では十分にできていなかったわけで、今のギリシャの歪みはそこから来ている。
マーストリヒト条約はユーロに加盟するための条件(収斂基準)を定めているだけで、ユーロから追い出す方法については何も書いてない。私はその理由を同条約の作成にかかわった友人の政治学者ジャック・アタリ氏に尋ねたことがあるが、彼は「いかに1か国でも多く入ってもらうかに夢中で、出すことは考えていなかった」と言っていた。
しかし、ユーロを維持するためには厳格な規律が必要である。それを大きく逸脱した粉飾会計の見本市のようなギリシャが今回のEUとの約束を守らなかった場合は、一度ユーロ圏から退出させたほうがよいと思う。
ユーロ圏を離脱したギリシャは、自国通貨ドラクマを出さねばならなくなる。そうすると当然、その通貨は信用されないからハイパーインフレになるが、仮に貨幣価値が半分になれば、身の丈に合った1万ドル経済になる。これがギリシャにとってもEUにとっても幸せな道ではないかと思う。貨幣価値が半分になったら、ギリシャは輸出競争力が倍増し、外国人観光客も増えて繁栄するからだ。
先例がある。イギリスである。イギリスはEUには加盟しているがユーロ圏には入らず、自国通貨ポンドを維持した。その結果、ポンド安になり、そのおかげで今は戦後最も経済が安定し、失業率も5%台前半まで低下している。
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