http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/700.html
Tweet |
通勤ラッシュが解消できるだけでも、在宅勤務の価値はある【PHOTO】gettyimages
リクルートが在宅勤務を導入 真剣に考えよう。クラウド時代に、会社に出勤する意味があるのだろうか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44722
2015年08月14日(金) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス
通勤と会議。この苦痛からの「解放」を!
■リクルートHDの実験と英断
リクルートホールディングス(以下「リクルートHD」)は、一部のグループ会社も含めて全社員を対象に、10月から上限日数制限のない在宅勤務制度を導入するという。
これまで、特殊な専門職の場合や、育児や介護などにやむを得ない事情がある場合などに、在宅勤務を個別に認めるようなケース、あるいはひと月あたり上限何日と制限の付いた在宅勤務を認める(ケチな!)ケースは他の企業でよくあったが、全社員を対象に制限日数の無しに在宅勤務を可能とする制度は珍しい。これは英断だと言えるだろう。
同社では、6月に約140人に試験導入したところ、4割以上に労働時間が減る効果が出て、大半の対象者がこの勤務形態の継続を希望したという。つまり、実験して効果を認めて、導入する。もともと人材を扱うビジネスを手掛け、人事管理に通暁しているリクルートHDが自社に全面導入するのだから、他社も大いに注目していいのではないか。
携帯電話とメールが普及した十数年前位の時点で、在宅勤務の広範な導入は十分可能だったように思う。加えて、スマートフォン、タブレットなどの各種携帯端末の発達や、動画と音声によるコミュニケーションを安価に可能とする技術の普及、さらには何と言ってもクラウド技術の発達で、在宅勤務は一層やりやすくなった。
在宅で仕事をしても効率が改善し、成果が上がればいいのだから、多くの職種に導入出来よう。思いつくだけでも、営業、調査、企画、コンテンツ制作、システム開発など多くの仕事で導入出来そうだ。
また、保育施設の待機児童問題がなかなか解決されず、介護の負担が社会全体で増えている中で、在宅勤務が可能になることは、個々のケースの問題解決にとって有力な手段となり得る。本来、別個に考え評価すべき問題だが、はっきり言って、行政に施設の増強を期待するよりも、会社単位で在宅勤務の仕組みを整備する方が遙かに迅速で現実的な解決手段になる。
筆者は、兼業サラリーマンとして過去十数年に亘って、日数に上限のない在宅勤務を続けて来たが、大変大きなメリットがあったと感じている。以下、もっと多くの職場で多くの人の在宅勤務が可能になることを願って、在宅勤務のポイントについて気がつくことを述べてみたい。
■仕事の設定と評価が最大のポイント
在宅勤務で最大の問題は、仕事の成果測定と人事評価だろう。今回のリクルートHDの在宅勤務導入は「通常の勤務体系と待遇面の差はつけず、完全に成果で評価する」(『日本経済新聞』8月12日朝刊)として、成果連動の評価を徹底することによってはじめて可能になったものだろう。
この場合、成果のみによって社員を評価することに対する労使双方の了解が得られることと、「成果」が適切に定義されることの2つが大切だ。
前者については、勢いと気合いで原則を承認するところまで持って行くことが割合簡単だが、後者に関しては、個人単位の営業業務のように貢献金額と貢献の帰属が明快な場合は問題が無いとしても、調査やコンテンツの制作、あるいは大きなシステム開発の一部のような仕事は、オフィスを離れて一人で進めることが可能であるとしても、個々の仕事の完成がどれほどの成果なのか、評価基準を設定することが難しい。
筆者が、十数年間、2つの会社に亘って在宅勤務が可能であったことの背景には、筆者の仕事のアウトプットが、対外的に発信する一人で完結できるレポートなどの作成や、一人ないしごく少人数で行う特定顧客向けのコンサルティングのような売り上げ・利益への個人的貢献が明確な仕事であったことの影響が大きい。
調査やコンサルティングのような仕事以外の、広範囲に亘るいわゆる事務職の仕事で在宅勤務を可能にする場合、特に管理者側で、部下の仕事の比較的細かな区分けと、仕事量を評価した上での〆切の設定がポイントになる。凡人が仕事を進めていく上で、「〆切」の効果は偉大であり、最大限に活用すべきものだ。
一般に、仕事のプロセスを管理する能力や、自己管理能力には、相当に大きな個人差がある。仕事を、大きな単位でスケジュール管理まで含めて部下の自主性に任せるのは、仕事の進行上危険を伴うし、部下の力を最大限に活用できなくなる可能性がある。
仕事に必要なデータはクラウドを経由して利用可能だし、アウトプットを集めることも難しくない。会議を含むコミュニケーションは、時々直接顔を合わせる機会が設定出来れば、各種のコミュニケーション手段を使うことで、日常、それほど大きな問題にならないはずだ。
しかし、個々の社員の仕事をどう区分けして、個々の仕事にどのように〆切を設定するかにあたっては、先ず、マネジャーの側で仕事の内容を完全に把握していなければならないし、コミュニケーションの仕方が適切でなければならない。プロジェクト管理のソフトウェアの利用など、新たな手段も増えているが、在宅勤務の拡大はマネジャーの負担を増やすはずだ。
一方、若手社員に対するOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)のような教育機会が減少する問題に手を打つ必要があるかもしれない。教育や研修も多くはネット化が可能だろうし、そうする方が数年に亘る効率を改善出来る可能性もあるが、入社して2、3年目クラスまでの若手は社員に対しては、原則として定時出社させて、自己管理の仕方も含めて実地研修すべきだろう。
■在宅勤務の長所
筆者は、在宅勤務の拡大に賛成だ。先ず、なんと言っても通勤の時間の節約に大きなプラス効果がある。仮に片道1時間として、一日に往復2時間の時間が浮くことの効果は大きいし、通勤による疲労・ストレスがないことのメリットは非常に大きい。フレックス・タイム制で、通勤ラッシュのピークを外すだけでも相当の効果があるが、通勤自体が無くなることのプラス効果は桁違いだ。
また、多くの会社で行われている無駄な会議時間を削ることができる点にも多大なメリットがあるだろう。マネージャーが会議好きな場合、部下がその場に居合わせてしまうと、しばしば会議で仕事を中断されるが、在宅勤務の場合、連絡は最小限のものに絞り込まれ易いし、デジタルのコミュニケーション手段を使うとやりとりの記録を残しやすい。
また調査やレポート書き、コンサルティングのような仕事だと、自分の調子が出やすい時間に仕事時間を持って行きやすいので、仕事が捗るメリットもある。
個人的に、筆者はいわゆる「夜型」なので、若手時代も含めて長年、午前中の出社には多少の情報収集とランチ待ちくらいの意味しかなかった(金融・証券業には不向きだった)。在宅であってもなくても仕事の成果だけ出せばいい労働形態には非常に助けられた。
もちろん、育児や介護などの事情を抱えている社員が働く上でも、働くことと勉強とを両立させる上でも、在宅勤務が可能であることのメリットは大きい。内閣が強調する「女性の活用」にも、在宅勤務の拡大は、効果が最も大きくて、且つ早い施策ではないか。
労使の合意、勤務方法・評価方法のルール化・明文化、長時間労働対策、安全・健康管理、通信コスト負担の処理、労災対策など、在宅勤務といえども「勤務」にはちがいないので、処理しなければならない問題は多数あるが、在宅勤務自由化のメリットは大変大きい。今後、規制が邪魔しないことを望みたい。
■在宅勤務に加えて副業の自由化拡大を
今後は、在宅勤務の自由化に加えて、もう一歩、副業の自由化を大いに進めて欲しい。両者は、相性が良いはずだ。
もちろん、本業とのコンフリクト(利益相反)が起こらないこと(たとえば、本業の顧客を個人の副業の顧客にするようなケースは問題がある)、副業の負担が本業のパフォーマンスに支障を来さないことなどが問題になるが、副業は、追加的な収入に加えて、退職後の収入の道を用意することに繋がる。
高齢者労働力の有効活用のためにも、早い段階から、副業ないし「複業」の可能性を開いておくことが有効だと思う。
尚、副業については、原則禁止ないし許可制の就業規則を作る会社が多い。この場合でも、判例や法律解釈上認められる場合があるとして、法律の専門家の動きが鈍いが、現実問題として会社と訴訟を戦って、勝てたとしても幸せに働けるものではない。副業の原則自由を明確に法文化し、また、政府としても企業に対して「多様な働き方」の一環として社員の副業を認めるよう働きかけるのが良かろう。
在宅勤務と副業の自由化は、個人が様々な形で企業と契約出来るようになるし、社会の活性化に繋がるだろう。個々人の可能性が広がるのと同時に、企業にとってもメリットがある。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。