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兵庫県神戸市のワールド本社(「Wikipedia」より/663highland)
不振企業をピカピカにする「マジック」経営者!社員4分の1が退職、一挙に5百店閉店…
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11110.html
2015.08.14 文=編集部 Business Journal
4月にアパレルの名門、ワールドの社長に就任した上山健二氏。再生請負人と呼ばれる彼の企業再建ノウハウは、ほかのプロ経営者とは違う。得意技は、財務諸表を“ピカピカ”にすることだ。
上山氏は、4月14日に開催された同社の臨時株主総会および取締役会で、常務執行役員最高執行責任者(COO)から社長に昇格した。創業家以外からの社長登用は、同社初である。そんな上山氏は、意表を突く再建策を連発している。
■赤字決算を黒字に変えるマジック
ひとつ目は、5月に開いた決算説明会で、赤字のはずだった決算を黒字と発表したことだ。
上山氏はワールドの業績について、2015年3月期の連結売上高は前期比3.5%減の2985億円、営業利益は同43.4%減の52億円だが、最終利益は同2.2倍の45億円だったと発表した。さらに、14年3月期にさかのぼり、16億円の最終赤字を20億円の黒字に修正したのだ。
赤字を黒字に変えたマジックの種明かしをしよう。会計基準を変更したのである。同社はそれまで、日本会計基準を適用していたが、15年3月期決算から国際会計基準(IFRS)に変更した。さかのぼって14年3月期にIFRSを適用すると、前述のように16億円の最終赤字は20億円の黒字に変わり、15年3月期の最終利益は45億円の黒字になった。
日本会計基準ではのれん代(買収額と買収先企業の時価評価純資産額との差額)の償却が必要だが、IFRSなら償却しないで済む。そのため、15年3月期の営業利益は52億円となったが、40億円相当ののれん代を償却していたら、利益は激減していたはずだ。
ワールドは05年にMBO(経営陣による買収)で上場廃止になった未上場企業である。そのため、株価を意識して利益をかさ上げする必要はないはずだ。会計基準をIFRSに変更した理由は、ただひとつしかない。黒字決算にするためである。
■光輝く財務諸表を取り戻すために、過去最大規模のリストラを実施
2つ目の驚きは、過去最大規模の事業の見直しである。上山氏は、5月の記者会見で「固定費の削減には聖域を設けない」と明言した。
7月6〜24日に、全社員の4分の1以上に当たる500人をめどに希望退職の募集を行った。40歳以上の正社員のほか、定年退職後に再雇用された60歳以上の社員が対象だ。8月12日には、453人が応じたことを明らかにしており、予定の9割が手を挙げたことになる。退職日は9月20日付となる。ワールドの社員数は、3月末時点で約1800人だ。同社はこの希望退職によって、年間約25億円の人件費削減を見込んでいるという。
また、16年3月期に全店舗の約15%に当たる400〜500店を閉店、併せて10〜15の不採算ブランドを廃止する。赤字店舗だけではなく、利益が出ていても収益性の低い店舗は閉鎖する計画だ。16年3月期から18年同期まで、3年にわたる構造改革を断行する。
ワールドは、1990年代に入ってから大きな成長を遂げた。93年には、従来の卸売業から、商品企画から小売りまでを手掛けるSPA(製造小売業)にいち早く転換した。00年代には、百貨店を主力とするほかのアパレル企業に先駆け、ショッピングセンター(SC)やファッションビルへの積極的な出店を進めた。
しかし、08年のリーマン・ショックで暗転する。SCが乱立したため、SC間の競争が激しくなって割引販売が常態化し、不採算店が増えたのだ。そこに追い打ちをかけたのが、ユニクロなどファストファッションの台頭である。流行を取り入れた低価格の商品を売る店が増え、中価格帯で勝負するワールドにとっては逆風となった。
その結果、利益は急減する。13年3月期は7億円、14年同期は16億円(いずれも日本会計基準)と、2期連続の最終赤字に陥った。そこで、上山氏が再建のために招かれたわけだ。
上山氏は、社長就任会見で「出店数がすなわち企業の成長規模の目安となる考え方から脱し、今までとは違う方法で抜本的な改革を行う」と宣言した。
今までと違う手法とは何か。それは、財務諸表に力点を置くということだ。再建の度合いがはっきり表れるのは、数字だ。数字に語らせるという手法である。
上山氏は、社長就任直後から「以前のような、光り輝く損益計算書を2〜3年で実現する」と公言してきた。最初の目標として、「17年3月期の営業利益は、15年3月期の約2倍に当たる100億円以上を達成する」ことを掲げている。
日本会計基準当時の営業利益のピークは、07年3月期の213億円だ。これに近づけるために、のれん代の償却の必要がないIFRSを採用して、利益を押し上げることにしたわけだ。
■中古車ジャック、スーパー長崎屋の再建で辣腕を振るう
上山氏は、これまで複数の企業でトップを務めてきた、企業再生のプロだ。以下が簡単なプロフィールである。
1965年5月19日、兵庫県に生まれる。バブル真っただ中の88年に東京大学経済学部を卒業、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。92年、米ミシガン大学ビジネススクールに留学してMBA(経営学修士)を取得する。帰国後は、住友銀の企画部に配属となり、MOF担(当時の大蔵省担当)を務めるなど、エリートコースを歩んできた。
しかし、銀行のような大組織では、個人の才覚を発揮するには限界がある。そんな折、中古自動車の買い取りや販売を手掛けるジャック(現カーチスホールディングス)のオーナーに請われ、同社に転職した。
01年にジャックの社長となった後、02年には会社更生法の適用を申請して再建中のスーパーマーケットチェーン・長崎屋に転職する。03年に長崎屋の社長に就任し、同社の更生手続きを指揮、06年に12年前倒しで会社更生手続きを終結させた。ジャックと長崎屋の事業に関わり、上山氏は「ビジネスの決め手は、財務諸表力(収益性の改善)を磨くことだ」と確信した。
リクルートマネジメントソリューションズの組織行動研究所の研究レポート『神輿には乗りたくない、財務諸表と現場力で企業の再建を〜「プロ経営者」の育ち方・育て方研究インタビュー 第5回:上山 健二氏〜』の中で、上山氏は以下のように語っている。
「ビジネスというのは、いろいろあっても結果は全部BS(貸借対照表)とP/L(損益計算書)、キャッシュフロー計算書に表れます。そこに全ての問題が集約されていると思いますし、実際集約されていますから、BSとP/Lがあれば十分です。だから業種はあまり関係ないと自分では思っています」
その後、上山氏は英会話教室GABAの社長、飲食店情報サイトぐるなびの副社長を歴任後、13年にワールドの常務執行役員に就任する。14年に常務執行役員COOを経て、15年4月に社長になった。
59年に畑崎廣敏氏と木口衛氏が創立したワールドは、日本有数のアパレルメーカーに成長した。畑崎氏は97年、60歳の若さで社長を退き、その後、投資家に転身した。投資家としては数々の仕手戦に登場し、有力仕手筋として株式市場の話題をさらっている。
ワールドの経営は、廣敏氏の実弟・畑崎重雄氏が会長、義弟の寺井秀蔵氏が社長を務めていたが、上山氏の社長就任に伴い、重雄氏は取締役相談役に退き、寺井氏は代表権のある会長に就いた。
上山氏は、十八番(おはこ)の“財務諸表力アップ”によって、業績の浮き沈みが激しいワールドを復活させることができるのだろうか。
(文=編集部)
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