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訪日外国人の「驚異的な伸び」は、東京五輪後も加速する アジアで激増の「豊かな人々」
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11089.html
2015.08.13 文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役 Business Journal
日本を訪れる外国人の増加が止まりません。2011年に日本を襲った東日本大震災の影響で一時、年間622万人に落ち込んでいた訪日外国人客(インバウンド)の数は、その後急速に回復し、13年には政府の念願であった年間1000万人を超え、翌14年にはその数は対前年比29.4%増の1341万人を数えるまでになりました。11年と比べれば倍以上の増加です。
増加の勢いは今年に入ってからも落ち着くどころか「加速」しており、1〜6月までの累計値(推定値)で914万人、対前年同期比で288万人の増加、率にして46.0%というすさまじい伸びを示しています。旅行業界大手JTBの試算では、15年の訪日外国人客数は1500万人の大台に達するとの予測が出されていますが、このままの増加率で推移すると1500万人を大幅に上回り、1900万人台に乗ることも視野に入ってきました。
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という活動があります。これは小泉純一郎政権だった03年4月1日に発足した外国人旅行者の訪日促進活動です。この活動は国土交通大臣を本部長に、関係省庁および民間団体、企業などが参加したビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部を中心として、海外での日本旅行の広報活動や国内の外国人旅行者のためのインフラ整備などを目指す組織です。
当時、訪日外国人客数は年間524万人にすぎず、日本から出国する外国旅行者数(アウトバウンド)の1652万人に対して、わずか3分の1以下という状況でした。キャンペーン本部は、当面の目標として10年までに1000万人の達成を目指すという当時としては極めて意欲的な値を掲げてスタートしたのでした。
活動の成果は徐々に現れ、07年には800万人の大台に到達、1000万人も視野に入ったかと思われたのですが、08年に生じたリーマンショックによる世界的な経済活動低迷の影響、追い打ちをかけるように発生した東日本大震災の影響等で、当面1000万人の目標達成は遠のいたかに見えました。
しかし、13年になり、震災からの復興が着実な歩みをすすめ、さらには同年9月には20年の東京五輪開催が決定するに至ると、日本を訪れる外国人客の数は急増したのでした。これまで政府は訪日外国人客数の目標を「20年に年間2000万人」としていましたが、この増加傾向でいくと、かなり早い段階でその大台を突破することはほぼ確実な情勢とみられています。
今や東京・銀座、大阪・道頓堀のみならず、日本中のあちらこちらで数多く見かけるようになった外国人。その背景にはこのような短期間での訪日外国人の急増があったのです。
■訪日外国人客増、その3つの理由
最近の訪日外国人客の急増について、多くのメディアは「東京五輪の開催が決定した」ことを掲げ、こうした需要も五輪が終了すれば急速に萎むといった報道が目につきますが、これはやや的外れな指摘にみえます。
東京五輪の開催は20年、しかも五輪は開催期間わずか17日間ほどのイベントにすぎません。世界的な認知も進み、五輪に負けないほどの集客が見込まれているパラリンピックも開催期間は13日間にすぎず、2つを合わせても約1カ月間のイベントです。ましてや今、日本にやってきたところで五輪を観られるわけでもありません。急増の背景には別の要因がありそうです。
訪日外国人客の増加を牽引しているのが、中国とASEAN諸国です。このエリアから日本への観光客が増加したことには、おおむね次の3つの理由が考えられます。
(1)中国・ASEANでの中間所得層の激増
(2)中国・ASEANからの旅行客へのビザ要件の緩和
(3)「円安」による為替効果
中間所得層の定義はいくつか存在しますが、経済産業省「通商白書」(09年)での定義を使うと、年間可処分所得が5000ドル(約60万円)から3万5000ドル(約420万円)の層を指します。この層はさらに年間可処分所得が5000〜1万5000ドルまでのローワーミドル層と、1万5000〜3万5000ドルのアッパーミドル層に分類されます。
この分類によれば、ローワーミドル層は貧困から脱し、市場経済に参入した層をいいます。つまり、新しい衣服を買い求め、テレビ、洗濯機、冷蔵庫といった家電製品を競って購入、携帯電話も手に入れる人たちのことです。以前、日本でも1950年代後半に三種の神器(白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫)として国民の多くが買い求めた時代と重なります。
これに対してアッパーミドル層になると、家電製品のみならず、自動車を所有し、医療や教育等のサービス支出が増え、週末や夏季、冬季などに長期休暇を取得する層ということになります。
現在、東アジアやASEAN諸国では中間所得層および富裕層(年間可処分所得3万5000ドル以上)が激増し、懐に余裕ができた彼らが、競って海外旅行を楽しむようになっているのです。
■激増する中間所得層
では具体的にどのくらいの中間所得層が、このエリアに存在するのでしょうか。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によれば、中国におけるアッパーミドルおよび富裕層の人口はおよそ3億人程度とされます。ASEANはインドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムの5カ国で約1億人強と見込まれます。この数値は09年ではそれぞれ1億人と4000万人程度でしたので、この5年間で3倍近くに膨れ上がったことがわかります。
日本の人口が1億2730万人(13年)であることを考えると、ものすごい数の外国旅行を計画できる「消費者」が、日本の周辺国に存在することになります。
さらに20年の推計では、この数は中国が6億人、ASEANが1億8000万人になることが見込まれています。現在よりもさらに2倍へ増加するということです。ここでは触れていませんが、台湾、韓国、シンガポール、香港などすでに分厚い中間所得層が形成されている国々も含め、日本に対する旅行需要は今後も大いに膨らんでいくことが容易に予想されるのです。
■日本行きの大きなインセンティブ
アジアを中心とした訪日外国人客増加のもうひとつの要因が、「ビザ要件の緩和」です。特に訪日客の増加が見込まれるASEAN諸国の中のインドネシア、フィリピンおよびベトナムについて日本は次のような「戦略的なビザ要件の緩和」措置を実施しています。
(1)インドネシア向けのビザ免除(在外公館へのIC旅券の事前登録による)
(2)フィリピンおよびベトナム向けのビザの大幅緩和
・一時ビザ実質免除(観光目的、指定旅行会社経由)
・数次ビザ大幅緩和(発給要件緩和、有効期間の5年への延長)
また、中国に対しても15年1月19日より個人観光客向けに発給している「沖縄・東北三県数次ビザ」にかかわる経済要件を緩和することにより、日本を訪れる旅行者が大幅に増加することが予想されます。
そして3番目の要因が為替です。中国の通貨である「元」の円に対する交換レートは10年の平均で1元=12.96円であったものが、現在(15年7月)は19.98円。相場は約5割も円安になっているのです。
これは旅行者にとっては大変なインパクトです。旅行費用が勝手に半値になってしまったようなものです。特に日本で大量のお土産を購入する中国の人たちにとっては、日本行きの大きなインセンティブになっているのです。
旅行をする余裕のある中間所得層が増え、ビザ要件が緩和され日本に行きやすくなり、円安で旅費が大幅安になったことで「日本行き」を決断する旅行者が急増したというわけです。そしてこの傾向は為替を別としても、今後、東アジア、ASEAN諸国が順調な経済成長を続けていく限り、ますます強まっていくものと考えられます。少子高齢化を避けることができない日本にとって、「外からやってくる訪日外国人客」の増加は日本の経済、地域社会に大きな影響をもたらすものと考えられます。観光・ホテル産業の未来は明るいのです。
(文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役)
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