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中国の卸売物価下落は企業活動の停滞などを示唆している
下がり続ける中国経済の“体温”
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150812-00080208-shikiho-nb
2015/8/12 19:16 岡田 晃 会社四季報オンライン
中国株の急落から約1カ月。同国政府の強力な市場介入で株価下落は止まっていますが、国内経済への懸念は依然として強い状態が続いています。
そんな中で中国国家統計局がこのほど発表した7月の卸売物価指数が前年同月比5.4%減となり、経済の低迷ぶりを改めて示しました。下落幅は前月の4.8%減より0.6ポイント拡大し、リーマンショック後の2009年10月以来の大きさです。
卸売物価指数は企業間で取引される価格を指数化したもので、出荷や卸売り段階での需要と供給の変動を反映します。いわば消費者物価指数の“上流”にあたるもので、消費者物価の先行指標ともいえます。
中国の卸売物価指数はリーマンショック後の08年12月に下落に転じた後、一時はプラスに回復しましたが、12年3月以降は再びマイナスとなり、以来3年5カ月連続でマイナスが続いています。特に今年に入ってからマイナス幅は一段と拡大しており、7月にはこの間の下落の中でも最大のマイナス幅になりました。
これは、企業活動の鈍化で需要が伸びないことに加えて、鉄鋼など基礎資材や多くの製品分野で供給過剰に陥ったまま、それを解消できない状態が続いているのが背景です。まさに今の中国経済が抱える構造的な問題が、卸売物価指数に表れているのです。このため、卸売物価がプラスに転じるのは容易なことではなさそうです。
通常、デフレか否かは消費者物価指数を主な判断材料にしますが、卸売物価が消費者物価の先行指標的な性格を持っていることを考えると、今の中国にはデフレの兆しがあるとさえ言えるわけです。少なくとも“川上”からデフレ圧力が強まっているのは間違いないところです。
■ 際立つ物価上昇率の鈍さ
それでは消費者物価指数はどうなっているでしょうか。7月は前年同月比1.6%の上昇でした。卸売物価に比べると上昇率はまずまずの数字に見えますが、これも必ずしもいい傾向ではありません。リーマンショック後は一時、マイナスに転落した後、いったんは6%を超える上昇率となりましたが、その後は伸びが鈍り、昨年9月以降は1%台で推移しています。これには原油価格の下落がかなり影響していることは確かですが、それを差し引いても需要低迷が物価に反映しているとみられます。
ここ2、3カ月は上昇幅が少し拡大ぎみですが、これは中国人の食事に欠かせない豚肉が供給不足になって大幅に値上がりしているのが主な原因で、その分を除けば物価上昇の鈍化傾向は続いています。
中国政府は今年の経済計画で「消費者物価3%」を想定していますが、今までのところ、それを大きく下回る水準です。昨年秋から相次いで利下げを実施するなど景気のテコ入れに動いていますが、これまでのところ目立った効果はまだ表れていないようです。
以前は物価上昇率が拡大してインフレ懸念が高まった時期もありましたが、今は逆にデフレ突入を防ぐことを意識しなければならないのが現在の中国経済の実態です。経済成長率が減速したとはいっても7%程度を確保していることを踏まえれば、卸売物価の下落や1%台にとどまる消費者物価の上昇率など物価面での数字の弱さが際立ちます。
物価上昇が大きくなり過ぎるのは困りものですが、逆にある程度の上昇は必要です。物価はいわば経済活動の活発度合いを測る物差し、「経済の体温計」とも言えるでしょう。中国経済の体温は低下が続いており、ヘタをすれば健康体でなくなる可能性もあるといったところです。
ちなみに、日本では以前の卸売物価指数が現在では国内企業物価指数に衣替えしており、直近の今年6月は前年同月比2.3%の下落となっています。消費者物価と同様、昨年4月から今年3月までの1年間は消費増税の影響でカサ上げされていましたが、その分がはげ落ちた今年4月以降はマイナスになっています。消費者物価指数も0%台前半の小幅上昇にとどまっていることは周知の通りで、日銀の物価上昇率2%という目標達成は遠のいているのが現状です。
このように、どの国の経済指標でも消費者物価指数への注目度は高いのですが、同時に卸売物価(企業物価)の動きにも十分な注意を払い、経済の実態を見きわめることが大切です。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。ストックボイスのメインキャスターも務める。わかりやすい解説に定評。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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