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スカイマークの旅客機(「Wikipedia」より/坂部 秀治<G-TOKS>)
羽田空港で業界唖然の「事件」 ANAのスカイマーク「骨抜き」を許す国交省の偏重行政
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11069.html
2015.08.12 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
すったもんだの末に、民事再生手続き中のスカイマークが先週8月5日、実質的にANAホールディングス(ANAHD)の傘下入りをして再建に取り組むことが決まった。対抗馬だった米デルタ航空を主体とする案が生煮えだったことから、他に選択肢がなく、2次破綻を避けるためにやむを得なかったとはいえ、昨秋の行政指導で日本航空(JAL)主導の再建案を潰して選択肢を狭めた国土交通省の行政責任は重大だ。
最終的に、国民・利用者が路線縮小や運賃高騰といったリスクにさらされる問題も見逃せない。こうしたリスクを顕在化させないためには、まず無責任な発言を連発してスカイマークの再建を迷走させた太田昭宏国交相自らが責任の所在を明確にすべきだろう。
加えて国交省は、ANAHD偏重の航空行政をただちに抜本的に見直す必要がある。ドル箱の羽田空港の発着枠については、ANAHDのピーチ・アビエーションだけに例外的に就航を認めるのではなく、幅広く内外の航空会社へ開放する必要がありそうだ。
■羽田空港をめぐる“事件”
半年以上にわたって迷走したスカイマークの経営再建案づくりが一応の決着を見た途端の先週末8月8日、羽田空港をめぐって国内外航空関係者が唖然とする“事件”が起きた。ピーチ・アビエーションが、国内LCC(格安航空会社)として初めて羽田空港に就航したのである。路線は台北線で、週6便を運航するという。
実はこれまで国交省は、羽田に就航する国内線の発着枠をANA、JALの2大フルライン航空会社とスカイマークやエアドゥといった新興航空会社に限定し、頑なにLCCには与えてこなかった。深夜・早朝の国際線枠については、この限りではないとしていたが、機材繰りも困難なためLCC各社は関東の拠点を成田空港に置かざるを得ない状況となっていたのだ。
そうした中でピーチが就航した台北便は、羽田着が午前4時45分。そして羽田発が午前5時55分だ。就航当初はともかく、電車もリムジンバスも動いていないこの時間帯の利用客を安定的に確保していくのは、経営的に容易なことではないはずだ。いったいなぜ、こんな悪条件のもとで、あえてピーチは羽田に就航したのか。
航空関係者たちが疑心暗鬼になったのは、スカイネットアジア航空、エアドゥ、スターフライヤーに続いてスカイマークが事実上、ANAHDの傘下に入ったことで、同グループが羽田の発着枠(1日465便)の60%という大きなシェアを押さえることになった意味だ。いくら羽田の発着枠がドル箱といっても、国内便だけでは稼げる路線に限りがある。そこで、ANAHDは発着枠を国際線に転用しようともくろんでおり、利用者のニーズの存在を示すため、ピーチに就航させてグループとして実績をつくろうとしているのではないか、というのである。
■スカイマークを潰した国交省
そもそも今回のスカイマークの経営破綻劇は、過大投資がたたったものだ。そこで同社がJALと提携してコードシェア(共同運航)などをテコに売り上げを確保して危機を乗り越えようとしたところ、太田国交相が「第3極の存続」という大義名分を持ち出して、待ったをかけた。このため再建のメドが立たなくなり、資金繰りの道を閉ざされたスカイマークは民事再生法の適用申請に踏み切らざるを得なかった。これが破綻劇の真相である。
不可解なのは、第3極の存続を目指したはずの国交省が、JALに認めるよりも発着枠シェアの独占が進むANAHDの傘下入りを容認したことだけではない。将来、スカイマークの再独立を促すとしながら、ANAHDが同グループの発券システムの使用をスカイマークに迫っていることを黙認しているのは、さらに不可解といってよいだろう。
というのは、独自システムを放棄してANAHDのシステムを導入すると、スカイマークは顧客情報の管理・蓄積すらできなくなり、自立どころかいわば再上場の資格とでもいうべきガバナンス面での独立すら困難になるとみられるからだ。
国交省のANAHD贔屓は、民主党政権主導で再建を果たしたJALに対する与党の感情的反発が反映されたものとされる。それが事実だとしても、過去2回の羽田空港の発着枠配分における優先的な割り当ての経緯も含めて、国交省の対応は行政にあるまじき特定事業者の優遇行政といわざるを得ない。
確かに、今回のスカイマーク再建劇の大詰めで、米航空機リース会社のイントレピッド・アビエーションが主張した米デルタ航空を主たる支援パートナーとする案は、肝心のポイントがそろって「今後の検討課題」にとどまっており、仮に採用されれば2次破綻のリスクがつきまとうものだった。
加えて、日本の航空市場における第3極の存続や競争環境の維持といったイントレピッドの主張が建前にすぎず、自社の債権保全をもくろんでいるのが透けて見えたことも、同案への信頼を損なったといえる。
■利用者が不利益を被る懸念も
とはいえ、太田国交相は第3極の航空会社が消滅することは容認できないと言い続け、潰れなくても済んだはずのスカイマークを破綻に追い込んだ張本人だ。結果としてJALではなくANAHD傘下にスカイマークが入るように誘導したことや、形式的な会社の存続をもってスカイマークの独立性が保たれるとして、現実的にはその独立性が損なわれていく再建策づくりを黙認し続けていることは、航空機の利用者として決して容認できない。
3月4日付本連載記事『ANAのスカイマーク支援に重大な懸念 羽田枠でシェア突出、早くも運賃値上げの兆候』でも指摘したが、航空運賃が高騰するリスクや、就航する路線が混雑路線中心になり、地方が切り捨てられるリスクが高まるからだ。不利益を被るのは、国民・利用者にほかならない。
国交省は直ちにANAHD優遇の航空行政を改めて、国内航空市場の競争促進に舵を切るべきだ。新規参入を促すために、すっかり2社寡占が定着してしまった羽田の国内線発着枠開放が不可欠なことはいうまでもない。この発着枠は本来、航空法で5年に1回、状況をチェックして配分し直すことになっていながら、これまでその規定が有名無実化していた。
ANAHDが保有している新興航空会社株を強制的に放出させて、その従属関係を断ち切るとか、ANAHDの羽田空港発着枠のシェアがJALのそれより突出している20%分を取り上げて、新規参入者に付与するといった荒療治が必要だ。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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