http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/624.html
Tweet |
米国の大学でイランとの「核合意」への支持を訴えるオバマ大統領。本格的な和解が実現すれば、原油価格は長期的に低位で安定する可能性が高い(写真:AP/アフロ)
原油価格、「1バレル30ドル時代」が来る イランの制裁解除はシェール革命に匹敵
http://toyokeizai.net/articles/-/80075
2015年08月11日 中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 東洋経済
これからの世界経済を俯瞰するとき、私がもっとも注目しているのは、アメリカが進めようとしているイランとの和解です。
■なぜイランの経済制裁解除は衝撃的なのか
なぜアメリカとイランの和解が、世界経済を動かすほどの影響力を持つといえるのでしょうか。
その理由のひとつは、イランが中東屈指の大産油国でありながら、これまではアメリカが主導する経済制裁によって、世界の原油市場において主要なプレーヤーになりえなかったからです。もし2015年末〜2016年前半にイランの経済制裁が解ければ、世界のエネルギー市場にはシェール革命以来の激震が走ることになるでしょう。
原油価格が1バレル100ドルを挟んで上下していた頃、私は拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月刊行)において、「原油価格は今後、1バレル150ドルを超えることはない。3年後には原油価格は半値になっているだろう」と予測しました(「原油1バレル=150ドル時代は2度と来ない」と「シェール革命に翻弄される国々」http://toyokeizai.net/articles/-/14132を参照)。
実際には、それから2年あまり経った現在、原油価格はすでに1度半値になり、現在は1バレル40ドル台で推移している状態ですが、アメリカとイランの和解が本当に進むのであれば、私はさらに一歩踏み込んで「原油価格は今後2度と、1バレル100ドルさえも超えることはなくなるだろう」と申し上げておきましょう。
これから長期的に見たとき、エネルギー価格の主たる低迷要因は、北米のシェールオイルやガスの生産に加えて、イランの国際社会復帰による原油と天然ガスの増産にあるといえます。
石油の世界では、鉱区探索や採掘技術の進歩により、原油の確認埋蔵量が増えていくという現象が起こっています。
■石油の確認埋蔵量首位はベネズエラに
たとえば、BP社が毎年発行しているエネルギー関連の調査報告書の最新版(2014年)によれば、世界の原油の確認埋蔵量のトップは、南米のベネズエラとなっています。ベネズエラの確認埋蔵量は2983億バレルと、この10年間で3倍以上にも増え、それまで世界1位とされてきたサウジアラビアの2670億バレルを追い抜いてしまったのです。
この急増の理由は、原油の採掘・処理技術の進歩と、過去10年間の原油価格の高騰にあります。原油価格が40ドル台に下がったからといっても、2000年以前の原油価格は20ドル程度だったので、現在でも十分に高くなっているのです。
ベネズエラ以外にも、この10年間に大きく確認埋蔵量が増えた国が2つあります。イランとそのお隣のイラクです。それぞれ、10年前に1327億バレル、1150億バレルだったもので、最新のレポートではイランが1578億バレル、イラクが1500億バレルと、20%〜30%増加しています。両国は現在、ベネズエラ、サウジアラビア、そして主にシェールオイルを産するカナダに続き、世界の4位、5位を占めています。
実はアメリカも、シェールオイルの探鉱が進んだことで確認埋蔵量が、10年前の294億バレルから485億バレルへと大きく増え、世界トップ10に食い込んだのですが、それでもイラン、イラクとは桁がひとつ違います。
イランはペルシア湾、オマーン海、西部のザグロス山脈周辺など、全国各地に原油鉱区を有し、かつては日量600万バレルを超える生産量を誇っていました。 現在のイランの石油の生産量は日量で300万バレル弱とされ、うち輸出量は日量130万バレル程度となっていますが、経済制裁が発動される以前の輸出量は日量220万バレルもあったのです。
イランのザンギャネ石油相は、「経済制裁が解除されれば、約半年で日量100万バレルの原油増産が可能である」と述べています。100万バレルといえば、アメリカ、中国に次いで、世界で3番目に多く石油を輸入している日本が1日に消費する量の20%強に相当します。 現状の生産設備でそれだけ余裕があるのですから、外資が入ってきて生産設備を更新したら、大幅な増産が可能になります。
イランは2020年までに原油生産量を日量500万バレルに引き上げる計画と伝えられます。そのためには海外への販路の確立と外国企業による巨額の投資が必要不可欠となりますが、アメリカとの和解が成功すれば、それも達成できる可能性が高まっていくでしょう。
経済制裁により開発が遅れているイランというフロンティアに対して、欧州はもちろん、アメリカの石油メジャーから中国、韓国の石油企業までもが進出しようとしています。
■原油価格は、1バレル30〜40ドル台で安定も
埋蔵量そのものがアメリカの3倍以上と豊富で、しかもイランの場合はシェールオイルではなく生産コストが安い在来型の油田ですから、開発事業者にとってそれだけ利幅が期待できるのです。10年〜20年先の話になるかもしれませんが、生産力をいまのアメリカと同等の日量900万〜1000万バレルのレベルに引き上げることも十分に可能となるでしょう。
アメリカで起こったシェール革命に続いて、イランの原油生産と輸出が徐々に増加していけば、当然のことながら、長期的な原油価格の形成に大きな影響を及ぼすことになります。イランが計画通り2020年までに日量500万バレルの生産が達成できれば、その頃には世界の原油価格は1バレル30ドル〜40ドル程度がスタンダードになっているのかもしれません。
なお、エネルギー価格が長期的に低迷するもうひとつの理由については、私のブログ『経済を読む』でも述べていますので、興味がございましたらご覧いただければ幸いです。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。