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ドル高の行方が注目されている〔AFPBB News〕
米ドル上昇相場、まだ上げ余地か、もう終わりか? 一段高なら、中国の存在が波及効果を増幅
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44494
2015.8.10 Financial Times
(2015年8月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
外国の目的地に向かう途中で空港の外貨両替所のブースに並ぶ米国と英国の旅行者にとって、今は幸先のいい時期だ。
それほど喜べないのは、金の投資家や、鉄鉱石、石油、銅など米ドル建てで価格が設定されているコモディティー(商品)生産国だ。
やはり圧力がかかっているのは、ドル建て債務を保有する外国人・企業で、彼らは自国通貨が安くなるにつれ、先々の債務返済が膨らむことになる。
さらに、ドルに対する一定のバンド内で通貨が取引されており、貿易相手国が通貨安で勢いを得ている時に景気減速に悩まされる中国などの国がある。
身近なところでは、ドル高のために、米国の多国籍企業は今年、1000億ドルの売り上げを逃す見込みだ。S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズによると、S&P500株価指数を構成する企業は売り上げの半分近くを外国市場に頼っている。
■新興国の債務危機への不安
ドル高は明らかに金融市場の多くのセクターに問題を突き付ける。そして驚くまでもなく、世界の準備通貨であるドルの一段高は、新興国の債務危機によって定義される大きな金融混乱の火付け役になると不安を抱く人がいる。
このため、目下の差し迫った問題は、ドルはピークをつけたのか、それとも単に、1970年代前半のブレトンウッズ時代の終焉以降3度目となる大きな上げ相場の初期段階にあるのか、ということになる。
1980年代前半と1990年代終盤のドル高の著しい特徴は、それが新興国債務の大混乱を引き起こす一因になったことだ。現時点でも、新興国と資源国の通貨に対する圧力はしっかり根付いている。米連邦準備理事会(FRB)がほぼ10年ぶりに政策金利を引き上げる構えに見えるからだ。
「新興国は避けられない出来事に対処しなければならない」。シティグループのアナリストらは8月初め、こう指摘した。
「正確なタイミングに関係なく、FRBは何らかの金融政策の正常化を実施し、それが米ドルで借り入れを行っている新興国経済の資金調達コストに圧力をかける可能性がある」
貿易加重ベースでは、ドルは2014年に10%上昇した後、今年に入ってから8%程度上昇した。今春、強弱が入り混じった米国の経済統計が出ると、ドルは3月に2003年以来の高値をつけた後に起きた急落の大半を戻した。
■為替市場は米国の緩やかな利上げを織り込んだ?
この先は、7月と8月の米国雇用統計のトーンに多くがかかっている*1。ドルのこれまでの上昇度合いを考えると、為替市場は向こう1年間のFRBによる緩やかなペースの金融引き締めを織り込んだという主張を展開することができるだろう。
我々はそれゆえ、貿易加重ベースでドルの天井に近く、ひとたびFRBが引き締めサイクルに乗り出し、緩やかなペースを強調したら、コモディティーと米国多国籍企業の売り上げに対する下方圧力が減じる方向に向かうのかもしれない。
これに対する反論は、抵抗がほとんどないように見える、というものだ。他の多くの国が政策を緩和しているか、または通貨安を追求している時に、自国の中央銀行が借り入れ金利の引き上げに少しずつ動く中、ドルと英ポンドは強まる追い風に乗っているからだ。
*1=この記事が出た7日に発表された7月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比21万5000人増え、6月の統計も上方修正された
ドイツ銀行によると、今回、過去2回の大規模なドル上昇相場の時よりも大幅に貿易加重ベースで下げた通貨は、日本円とノルウェークローネだけだという。このため米国通貨には上昇し続ける余地がまだあると同銀は述べ、貿易加重ベースでドルがさらに10%上昇すると予想している。
■中国人民元に注目
ドイツ銀行のアナリスト、アラン・ラスキン氏は、資源国通貨がさらに圧力を感じる一方で、ドルのペッグ制とバンド制、特に国際金融システムにおける重要性を考えると、中国のそれに大きな関心が向けられるようになると指摘する。
「ドルにペッグされている通貨は、ドルが大幅に上昇する時は常に難局に陥る」と同氏は言う。
この状況がやがて中国通貨の下落を促し、大幅なボラティリティー(変動)と競争的通貨切り下げに火をつけるリスクがある。現状では、大半の国の貿易加重指標において人民元は10〜20%の比重を占めている。このため、人民元高を伴わないさらなるドル高の効果は、大きな波紋を広げる。
「中国は金融状況を緩和する方法を探しているため、今は人民元が米ドルの上昇についていくことが望ましい時期ではない」とラスキン氏は話している。
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