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ナガセ社長 永瀬昭幸氏●鹿児島県出身。東京大学経済学部在学中から自宅アパートで塾を開く。1974年卒業後、野村証券入社。76年ナガセ設立。東進ハイスクールや東進衛星予備校などを全国に展開し、塾、予備校業界を牽引する。
アベノミクスよりすごい日本再生論【前編】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150809-00015823-president-bus_all
プレジデント 8月9日(日)10時15分配信
少子高齢化で減り続ける生産年齢人口、リーダー不在に起因する国際競争力の低下――。このままでは、日本の国力は衰退の一途をたどるのみである。活気あふれる社会を実現し、日本を再生するためには何を行うべきか。東進ハイスクール、四谷大塚、イトマンスイミングスクールなど、幅広く教育事業を展開するナガセの創業者・永瀬昭幸社長に話を聞いた。
■大胆提言! 第3子以降の出生に1000万円を支給せよ
――人口減少による国家消滅の危機を回避するため、独自の人口増加策を発表されました。
【永瀬】「第3子以降の出生に対し、国が1000万円の育児資金前渡し金を支給する」というのが私の提言です。これによって年間100万人の出生増を実現できれば、50年後には人口2億人も期待できるようになります。
――国力は、まず人口増加からだと。
【永瀬】そうですね。人口の減少が国力を奪っていきますから。そのためには、大正時代から約50年間続いた年間200万人前後の約半数までに落ち込んだ出生数を回復しなければなりません。国立社会保障・人口問題研究所によると、100年後の日本の総人口は4286万人にまで減少するといいます(2012年発表「日本の将来推計人口」より)。信じられますか、現在のわずか3分の1ですよ。しかもそのままいけば、300年後には480万人まで減ると私たちは推計しています。もはや国家消滅の危機です。
――合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子供の数の平均)は現在1.42しかありません(14年)。
【永瀬】先日、独自に調査会社に依頼し、5000人にアンケートを行ったところ、夫婦が理想とする子供の数は2.7人でした。理想と現実のギャップが数字に表れています。なぜ理想通りにいかないのか。調査によると最大の理由は経済的な問題でした。子育て世代である20代、30代は、現実問題としてお金がない。だから2人目、3人目をあきらめてしまう。けれど、そんなときに国からの補助があれば、子供が欲しい夫婦にとっては踏み出す勇気となります。
――最近は出産祝い金の制度がある企業も増えてきましたが、金額の桁が違いますね。
【永瀬】100万円、200万円というお金では、確かにもらえればありがたいものですが、効果が小さいと思います。子供ひとりを一人前に育てるには、3000万円はかかりますから。
このままでは100年後、日本は3分の1に!
――第3子に限定する理由は?
【永瀬】第1子、第2子にも支給すればそれなりの効果はあるでしょう。しかし国家財政が厳しい状況の中、支出を最大限の効果に結びつけるため「第3子以降の出生」としました。経済が豊かになれば自然に人口は増えるという意見もありますが、人口増加の多くは発展途上国に集中しており、経済が豊かになっても放っておけば少子化は進んでいくでしょう。また人口を増やすなら移民を受け入れればいいという案もありますが、移民受け入れの問題には異なる意見も多く、その是非に終始しがちで人口増の議論に結びつきにくい。だから私の提言は「出生数の増加」に限定した人口増加策ということにします。
――育児資金前渡し金の財源については、どうお考えですか。
【永瀬】財源は「日本再興国債」を発行するなどの方法が考えられます。この施策による国の支出は、年間100万人の出生が増加したとして10兆円。巨額の支出ですが、人口増がもたらすメリットのほうがはるかに大きい。施う。日本人はリーダーに向いていると思います。古来「和を以て貴しとなす」という姿勢を大切にしているように、私たち日本人は非常によいチーム力を発揮する民族です。たとえば米国のリーダーにはトップダウン型が多い。俺の言う通りにやれと、一方的に指示を出す。一方、日本の優れたリーダーは、全体のコンセンサスを取ることに気を配り、人の心をどうやって和ませたら動いてくれるのか、ということを常に考えている。今後ますます職場は多国籍になっていくでしょう。そんな職場で求められるリーダー像は、トップダウン型よりもチーム力発揮型であると思います。
――そうした人材を育成するために必要なことは何でしょう。
【永瀬】「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」、それが当社の理念です。そのためにさまざまな取り組みを行っています。その一つに、東進ハイスクールや東進衛星予備校で行っている「グループ制度」があります。各校舎の生徒をいくつかのグループに分け、生徒の中からグループ長を決めるのです。毎月、1000を超える全国の校舎で授業の確認テストなどを達成すると付与される得点を競い合う「向上得点マラソン」を行っています。グループごとに結果が発表され、成績の悪かったグループ長は、メンバーに対して「今週はこれだけがんばろう」と声をかけるようになります。メンバーはお互いをフォローしながら、グループ全体のランクアップを目指して努力する。その結果、全員の成績が向上していくという効果が表れています。
――個別に競わせるのではなく、グループで競わせているところがユニークですね。
【永瀬】グループ長なんて、そんな面倒な役目は勉強のジャマになるので断りなさい、と子供に言う親御さんもいらっしゃいます。ところが、それはまったく反対で、むしろ彼らのモチベーションとなっている。いまの若い世代には、自分だけがいい思いをするなんて後ろめたいと感じる人が多い。彼らがいちばん欲しいと思っているのは、仲間からの尊敬なんです。高度経済成長期やバブル経済期に育った人たちのモチベーションとは、完全に異なっていますよね。お金ではなく、仲間のため、社会のため、大切だと思うもののために行動する。これからの社会で求められるのも、そんな思いを持ったリーダーなのです。
尾関友詩=構成 的野弘路=撮影
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