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投資において人間の判断力をコンピュータが超える日が来る?(写真:Yellowi/PIXTA)
コンピュータはどれだけ優秀な「投資家」か あのバフェットを超える日も近い?
http://toyokeizai.net/articles/-/79449
2015年08月08日 ロバート・J・シラー :米イェール大学経済学部教授 東洋経済
スウェドローとバーキンの新著『The Incredible Shrinking Alpha』は、投資の世界ではビッグデータ、高性能コンピュータ、学術研究を活用して高度な判断ができるアナリストが増えている、と指摘している。競争の激化により、「アルファを得るハードルがますます高くなっている」(アルファ=リスク調整後ベンチマークを上回る収益。個々の投資判断の成功度を測る尺度)というのだ。
この結論は重大な疑問を提起する。考えうるどんな投資戦略を取ったとしても、アルファはやがてゼロに行き着くのだろうか。もっと根本的には、賢い人間が増えコンピュータが高度化したおかげで、金融市場が真に完全なものとなり、私たちはすべての資産が正しく値付けされると信じて安閑としていられる日が、近々やってくるのだろうか。
■投資判断はコンピュータに任せるべき?
こんな想像をかき立てる状況を、「金融特異点」と呼ぶことにしよう。これは将来に想定されている「技術的特異点」のアナロジーで、コンピュータが人間の知能に取って代わる限界点を指す。「金融特異点」が示唆するのは、すべての投資判断はコンピュータプログラムに任せたほうが賢明だということだ。
多くの人々は、現状は金融特異点に近いと考えている。バフェットのような伝説的投資家でさえ、実際には市場をしのぐ業績を挙げているわけではない、との指摘がある。
もしこれが正しいとすると、投資家が皆一斉に、市場でミスプライスを探し出す努力をやめてしまう。市場にミスプライスなどありえないことになるからだ。市場参加者が合理的に想定するのは、すべての株価は、将来キャッシュフローの期待値を適切な割引率で割り戻した現在価値であり、そのキャッシュフローは、みんなが同様に理解するファンダメンタルズを反映しているということだ。投資家の判断に違いが出るとしたら、それはもっぱら個々人の状況に違いがあるからだ。
本当の問題はむしろ、現実世界の市場が金融特異点に近づいていないことだ。金融特異点が示唆するのは、すべての価格が、企業利益予想や、技術革新や長期的な人口動態の変化との相関といった要素に基づくものになるということだ。しかし賢明な投資家は、このようなあいまいな言い方はしない。
この意味で、先頃中国で起こった株式市場暴落について考えずにはいられない。報道によると、感情に流されやすい大勢の人々が直感や盲信に頼って取引している。
■投資にストーリーを用いる危険性
私が著書、『投資バブル根拠なき熱狂』で指摘したように、市場はストーリーに動かされるようだ。偉大な新時代や、迫りくる不況というストーリーがある。もっと根本的な、テクノロジーや資源の減少といったストーリーもあれば、政治や陰謀説もある。
真実かどうかは誰にもわからない。それでもストーリーは独り歩きする。時には急速に広まることもある。分別がありそうな人々と腹を割って話していて、相手がとんでもない考えの持ち主だとわかることがよくある。このような愚かな人たちが市場に影響を与える。他の投資家たちも彼らを無視できないからだ。こうして熱に浮かされた状態は、すぐには消え去らない。
おそらくバフェットの過去の投資スタイルは、現在では取引アルゴリズムに取り込めるだろう。しかしそれでバフェットの才能が値打ちを下げるわけではない。バフェットの成功の真の源泉は、ある手法を放棄し他の手法を編み出す時期を心得ている点にあるようだ。
金融特異点という着想には興味を引かれる。しかしそれは、過去に計画経済をもてはやした知的ユートピアと同じ錯覚にすぎない。よくも悪くも人間の判断力こそが、今後も投資判断と金融市場の結果を左右する力であり続けるのだろう。
(週刊東洋経済2015年8月8日・15日合併号)
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