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まさか!亡き父のわずかな預貯金を解約する手続きがこんなに面倒だったとは…… 煩わしさの度合いは先祖の引っ越し回数次第
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投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 08 日 11:21:05: igsppGRN/E9PQ
 


まさか!亡き父のわずかな預貯金を解約する手続きがこんなに面倒だったとは…… 煩わしさの度合いは先祖の引っ越し回数次第
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44323
2015年08月08日(土) 長野まゆみ 現代ビジネス


「閉じる」にあたり


(文・長野まゆみ)


■戸籍をさかのぼる長い旅


当事者となって手続きに煩わされるまで、「相続人の確定」という語も知らなかったし、その手続きがかぎりなく面倒であるということも頭になかった。亡くなった父のわずかな預貯金を解約する話である。


銀行の「相続センター」へ必要書類をそろえて郵送したところ、祖父の出生地がわかる戸籍も必要だとの文書がとどいた。


祖父は父と母が結婚するまえに亡くなった人なので、母もその人の出生地のことなど知らない。わたしはもちろん、肖像写真で対面するのみ。子どものころに体験したはじめての法事が祖父の十三回忌だった。いまとなっては祖母も故人となり、訊ねるわけにもゆかない。父の結婚まえの戸籍に、祖父の出生地の記述はなかった。


ここから、戸籍をさかのぼる長い旅がはじまった。まさかの事態である。資産があるならともかく、非課税の範囲にとどまるような少額の預貯金の後始末がこれほど厄介になるとは思いもしなかった。イモヅルというのかテヅルモヅルというのか、たどればたどるほど疑問と登場人物は増えるが、目当てのイモにたどりつく気配はない。


完了するのに半年を要した手続きをふりかえってみれば、曾祖父が住民票を移動するような調子で頻繁に戸籍を動かしていたことが、作業を煩雑にした最大の原因だった。住民票などなかった時代には、だれしも引っ越しをすれば戸籍を動かしていたものらしい。煩わしさの度合いは、先祖の引っ越し回数によってきまる。


いまも全国のどこかで、先祖の戸籍をもとめて右往左往している人が山ほどいるにちがいない。これからその手続きをしなければ、という人には行政書士というプロに丸投げすることをすすめる。そのほうが安上がりで時間もムダにしないですむ。


もう自分ではじめてしまった人は、銀行員や役人とのいちいち腹立たしいやりとりもふくめてプロセスを愉しむほかはない。


■わたしの曾祖父はなにゆえ引っ越しを繰り返したか?


わたしの曾祖父の場合は、引っ越しの回数が度を越していた。わずか3年、4年のあいだに、三島町(愛媛県)、室蘭、呉、室蘭、海田市町(広島県)、室蘭といった具合なのだ。


さすがに、なにかがおかしいと思うものの、事情を知っているにちがいないもっとも若い世代の父が亡くなってしまったあとなので、この移動は何ごとかと訊ねようにも、訊ねる先がない。先祖代々の墓もない。長男ながら家出して上京し、実家から勘当されたらしい祖父の墓は関東にあり、長生きだった祖母が亡くなるまで、ずいぶん長くたったひとりで眠っていた。


古い戸籍にあらわれてくる地名は未知の土地ばかりだ。どこも魅惑的でいまや訪ねる親族がいないのは、つくづく惜しまれる。曾祖父はいったいなんのために、こんな移動をくりかえしたのかと妄想をひろげつつ、このたびの『冥途あり』を書いた。



十三回忌のさい、「先祖は四国の海賊だった」という話を小耳にはさみ、子どもながら印象に残っていた。


だから、たぶん瀬戸内地方と室蘭の移動は、船であったのだろうと思われるが、廻船業者として行き来していたのなら、戸籍を動かす必要はないだろうという疑問がわく。津々浦々に立ち寄りながらの室蘭ゆきではあろうが、その航海にいちいち妻子を連れているはずもない。


銀行員や戸籍係の役人との忍耐を要するやりとりの、うっぷん晴らしに小説でも書くか、という気分で先祖の足跡をたどりはじめたのだが、しだいに曾祖父の世代の無茶ぶりが面白くなり、船で何を運んでいたのだろうか、大正時代の室蘭はどんな町だったのだろうか、と深入りして調べを進めた。


だが、小説は一家の年代記ではないためさらっと流してある。室蘭では母恋の番地である。現在の地図では某企業の専用埠頭になっている。「?」と思うよりほかはない。


そういえば、父方の親族はかなり風変りなジャガイモ料理のレシピを親から子へ伝えている。北海道育ちの祖父世代の影響があるのか、瀬戸内地方もまたジャガイモの産地であるからそのせいなのか、いまとなっては結論が出ない。


それにしても、人生を閉じる事務手続きがこんなに面倒だとは予想外だった。終活に熱心な人々のことを報道番組で見聞きしていたが、あれは資産がある人の話なのだと思っていた。少額でも、手続きは煩わしい。画面上の×印をクリックするだけで終了するわけには、ゆかないのだった。


読書人の雑誌「本」2015年8月号より


長野まゆみ(ながの・まゆみ)
1959年東京都生まれ。女子美術大学卒業。1988年『少年アリス』で第25回文藝賞受賞。主な作品に『天体議会』『テレヴィジョン・シティ』『新世界』『コドモノクニ』『サマー・キャンプ』ほか多数。



 

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