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マツダ「デミオ」
マツダ、超人気車続出の裏にこんな秘密が!
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11025.html
2015.08.07 文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
自動車好きの読者ならご存じだと思うが、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、日本国内で発売された乗用車のなかで、年間を通じて最優秀と評されたものに与えられる賞だ。
その賞をこの3年間で2度も受けているのが、広島に本社を置くマツダだ。2012年度(第33回:12−13年)は「CX-5」、14年度(第35回:14-15年)には「デミオ」で輝いている。
「CX-5」(車種は受賞当時のもの
かつては経営危機に陥り、米フォード・モーターの支援を受けて1996年から03年途中まで4代続けてフォード出身の外国人社長を受け入れたマツダだが、近年の活躍は目覚ましい。実は、それを支える一つに「女子力」がある。今回は、マツダで開発を担う女性たちの横顔を少し紹介しよう。
●39歳の若さでチーフエンジニアに就任した女性
15年2月1日付の人事が、業界で話題となった。マツダ初の商品本部・女性主査に、当時39歳の竹内都美子氏が就任したのだ。主査とは開発を統括する役職で、他社においてはチーフエンジニアとも呼ばれる。競合メーカーも含めて女性が同職に就くのは珍しく、この若さで就任したのも異例だ。
97年入社の竹内氏は、開発・評価ドライバーの社内資格で、男性でも取得が難しい「特A」のライセンスを持ち、運転技術にも定評がある。
だが、肩書や技量といった先入観で本人に会うと、いい意味で裏切られる。取材でも懇談でも笑顔を絶やさない普通の女性なのだ。現在は次世代マツダ車の開発を統括するが、「実はキティちゃん好き」というギャップも面白い。
「以前は与えられた条件=Givenのもとで理想の車種開発をしていたのが、売り上げ目標や予算など、会社全体の視点でGivenをつくる立場に変わりました。ゼロから物事を考えるのは、違う頭を使うので大変ですが、やりがいもあります」(竹内氏)
竹内氏に続く存在が99年入社で、車両開発本部主幹の福原千絵氏だ。福原氏は自動車の静粛性やエンジンサウンドといった音響開発の専門家で、05年には自動車技術会「浅原賞」も受賞している。今年のゴールデンウィークまでドイツ・フランクフルトに駐在していた。ちなみに、女性エンジニアとして初めてのドイツ駐在員だったという。
福原氏が運転する白の「ロードスター」に同乗して話を聞いた。
「欧州では、競合メーカーを含めて多くの自動車を現地で評価し、現地企業と一緒に仕事をするなかで、欧州と日本の自動車文化の違いを知り、それをどう商品に落とし込むかなどを学びました」(福原氏)
現在、次世代マツダ車の静粛性コンセプト・構造具現化のリーダーを務める福原氏は、フラメンコが得意で海外公演のメンバーとして参加したこともある。フラメンコを始めた理由は、「大学、社会人と男性に囲まれた環境で、せめて外では女性とつながりたいと思い、女性の愛好家が多いフラメンコを選んだ」という。
福原千絵氏
●女性向けではなく、誰もが使いやすい自動車
マツダが積極的に女性活用を考え始めたのは、90年代後半からだ。だが、竹内氏や福原氏の同期に女性エンジニアはいなかったという。2人は、そんななかで道を切り拓いていったのだ。
自動車好きが高じて入社するケースが多い男性エンジニアとは違い、女性エンジニアはカーマニアでもなく、入社してから自動車好きになる人も多い。
そのひとりが伊東景子氏だ。同氏は自動車の走行性能の開発・育成を担当する。社内資格で竹内氏の特Aに次ぐ「A」ライセンスを持ちテストドライバーも務めるが、自動車の運転免許を取得したのは大学院時代の23歳と、決して早くない。入社後に腕を磨き、社内テストコースでは時速200kmの高速走行もする。
「同期の男性は自動車好きばかりで、最初から運転テクニックも高かったため、悔しい思いをしながら練習を重ねてライセンスを取得しました。最初のうちは、スピード走行で泣きそうになったこともあります。横に乗っている教官に『アクセルを踏め!』と言われるのですが、怖くてできませんでした(苦笑)」(伊東氏)
自動車好きでもなかった女性が、技術を高めて走行・環境性能を担当する。現在の伊東氏は1歳7カ月の男児の子育て中で、長年「女性視点タスク活動」にもかかわる。
「女性は男性に比べて恐怖心を抱く傾向にあります。特にバックでの駐車や高速合流などはそうですね。そのようなときに操作しやすいクルマづくりを目指しています」(同)
とはいえ、女性向けの自動車を開発するのではなく、「女性が使いやすいクルマは、男性にも使いやすい」との視点に基づいている。
今回取材した中での最年少は、26歳の芦原友惟奈氏だ。運転免許を18歳で取得し、現在は主にSUV(スポーツ用多目的車)全般を担当してシートの開発業務にかかわる。車種のコンセプトに合わせたシートの性能目標を立て、ドライバーの座り心地や操作性を意識しながら柔らかさ、形状、表皮材を組み合わせて開発している。
「開発にあたっては、上司にも率直に提案をしています。意見がある時は具体例でエビデンス(根拠)を持って言いますが、きちんと耳を傾けてくれる企業風土があります」(芦原氏)
女性目線が生かされたのが「CX-3」や「デミオ」で導入された、振動吸収ウレタンという素材を使ったシートだ。運転者が女性でも男性でも使い勝手がよく、大柄な人が座ると沈むのでシートが大きく使えて、小柄な人では沈みこまずに反発してくれるという。
「将来はもっと全体を見渡せる仕事がしたい」との夢を持ち、竹内氏が憧れの存在だと語る芦原氏のモットーは、「作業服を脱いだら2割増し」だという。仕事中は作業着のため、「アフター6や休日の私服では女性らしいオシャレを楽しんでいます」と笑う。
芦原友惟奈氏
●女性幹部社員を3倍にする
今でこそ女性が活躍するのは当たり前になったマツダだが、かつては完全な男性社会だった。それを変えたのはフォード出身の社長だ。「日本人男性ばかり」という状況を異様に感じたフォード2代目社長のジェームズ・ミラー氏(在任97〜99年)は、人事施策として女性登用を主導した。
他社よりも早く、外国人社長という経験を得たマツダは、「女性登用ではなく、ダイバーシティの一環」だと話す。ただし、まだ全管理職1300人余りのうち女性は30人程度しかいない。人数が少ないことは同社も痛感しており、14年8月には「20年に女性幹部社員を13年度実績比3倍にする」と宣言した。
もちろん人数合わせの女性登用ではなく、実力が伴った上での幹部起用を目指す。筆者はこれまで多くの会社を取材してきたが、マツダの女性エンジニアは、気軽に話せる同僚タイプが多いように感じた。
竹内氏は、後輩の女性エンジニアに対して「女性であることを忘れてほしくない」と語る。同氏自身、意図的にスカートをはいてクルマの性能を評価することもあれば、特Aの腕前を持ちながら、わざと下手に運転することもある。いずれも一般女性ドライバーの気持ちを持ち続けようとの意図だろう。
福原氏はこう語る。「職場に普通の女性が増えるのはいいことです。カーマニアではない普通感覚の人が増えれば、商品開発はもちろん、消費者への訴求の仕方も変わっていきます。これまで『自動車好きの人に伝わればいい』と、スペック中心で話していた技術者たちも、素人でもわかる話し方に変わってきたのを実感します」
もともとトヨタ自動車の10分の1の売り上げ規模ながら、技術力に定評があったマツダは近年、スタイリッシュで高機能な車種を次々に開発している。3年で2度の日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞はその成果だろう。普通感覚を持った女性たちが、どのように今後発売される車種の中で魅力を打ち出していくのか、注目していきたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
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