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既存店売上高が2カ月連続で前年を割り込むのは3年ぶり。"勝ち組"ユニクロに異変が起きている(撮影:今井康一)
ユニクロに変調、「一転して独り負け」の深層 既存店売上高は2カ月連続で前年割れに
http://toyokeizai.net/articles/-/79583
2015年08月06日 冨岡 耕 :東洋経済 編集局記者
アパレル業界で独り勝ちだったユニクロに変調が起きている――。
ファーストリテイリングが8月4日に発表したカジュアル衣料店「ユニクロ」の7月の国内既存店売上高は、前年同月比1.5%減と苦戦。6月の同11.7%減より落ち込み幅は減ったものの、2012年9〜10月以来3年ぶりとなる、2カ月連続のマイナスに沈んだ。
既存店の前年割れの理由について、会社側は「7月は前半が梅雨の影響で気温が低かったことから夏物全般が苦戦した」とコメント。主力のエアリズムやブラトップ、短パンなど夏物実需商品で広告宣伝を増やしたが、軒並み厳しい結果となった。
■ほかの衣料品大手は絶好調
ただ、天候不順という外部要因だけでは、ユニクロの失速を説明できない。
カジュアル衣料店「ファッションセンターしまむら」を展開するしまむらは、7月の既存店売上高が3.0%増と前年同月を超えた。「夏物商品の動きは鈍かったが、トレンドアイテムのガウチョパンツやロング丈カーディガン、オーバーオールの販売が好調だった」。
「グローバルワーク」「ローリーズファーム」などレディスカジュアルを展開するアダストリアも、トレンドのワイドパンツなどが好調で前年同月比9.4%増と伸びた。また、イオン系で「ikka」を展開するコックスも、カットソーやシャツが堅調に推移し、同5.9%増と好調。セレクトショップを展開するユナイテッドアローズも同1.4%増となった。
こうした状況について、ユニクロは「今年はファッションがトレンドものに移っており、ベーシックな実需商品を中心に扱うわれわれは影響を受けやすい」との見方を示す。実際、同じグループで低価格衣料を扱うジーユーでは、ガウチョパンツが大ヒットするなど、こうした傾向がうかがえる。
とはいえ、ユニクロと同じベーシック商品を扱っているアパレル各社は、堅調そのものだ。シンプルな衣料が多い「無印良品」の良品計画が前年同月比6.4%増だったほか、ジーンズメイト(同1.1%増)やマックハウス(同5.5%増)、ライトオン(同10.4%増)、ハニーズ(同1.0%増)も、軒並み前年を上回って推移している。まさに“ユニクロ独り負け”の状況になっている。
■ユニクロの魅力が薄れている?
エアリズムの需要は一巡してしまったとの指摘もある
ユニクロは好調だった5月のゴールデンウイークに需要を先食いしたとの見方もある反面、「エアリズムなどの機能性下着は需要がすでに一巡している。類似商品はホームセンターやコンビニなどあらゆる店舗で発売されており、供給過剰なのは明らかだ」(業界関係者)との声も多い。
ドイツ証券の風早隆弘アナリストは「結果的に来店動機を促すような商品がなかったのではないか」と分析する。これまでは数年ごとにエアリズムやヒートテック、フリースなどの魅力あるヒット商品が出ていた。ところが、最近はTシャツやステテコなどを改良しているものの、小粒感は否めない。新鮮味がなくなれば、消費者は店舗から足が遠のいていく。
岡崎健・グループ上席執行役員CFOは「わざわざ店舗に足を向けるニュースを十分に発信できなかった。秋はいくつかニュースを用意しているので、店に足を運んでもらえる」と巻き返しを狙う。
ただし、秋以降にも懸念がある。円安による原価高をカバーするため、秋冬商品の約2割を値上げする方針だからだ。値上げは2年連続で、その幅も昨年の平均5%から今年は平均で約10%に拡大する。
柳井会長兼社長はさらなる品質向上で消費者の支持を得たい考え(撮影:尾形文繁)
昨年4月の消費税率引き上げの際にも価格表示を内税から外税に切り替えるなど実質値上げをしており、これ以降、客数は前年割れになる月が増えていた。
これまでは客単価増で客数減を補う構図が続いていたが、今回は本体値上げになるため、難しい舵取りが求められる。
柳井正・会長兼社長は、値上げの影響について「(客離れを)及ぼさないと思う。円安もあり、日本で売っている商品は世界で一番安い」とあくまでも強気な姿勢を示す。そのうえで「付加価値が認められない限り、売れない。われわれはよりよい品質を目指したい」と商品の質をさらに上げることで、消費者から支持を得たい考えだ。
■「GAPのほうが安い」との声も
とはいえ、価格政策は一歩間違えば命取りになる。ユニクロではすでに3990円+消費税のジーンズを4990円+消費税にするなど、一部商品で値上げを始めている。総額だと1本約5400円になるデニムズボンに対しては、ネット上で「めちゃくちゃ高い。GAPのほうが安い」との声も出ている。
値上げをめぐっては、ユニクロと同じく業界の勝ち組だったユナイテッドアローズが、昨年の秋冬商品でシャツなどベーシック商品まで値上げに踏み切ったことで、一部顧客が離反。2014年度は最高益の更新を見込んでいたが、一転して6年ぶりに営業減益に落ち込んだ。同社の竹田光広社長は「商品価値と価格のバランスがうまくいっていなかった」と反省する。
移ろいやすい消費者の志向をつなぎ留め、再び成長路線に戻ることができるか。8月以降の戦い方がユニクロの今後を左右しそうだ。
ファーストリテイリングの会社概要 は「四季報オンライン」で
http://shikiho.jp/tk/stock/info/9983
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