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【独占インタビュー】投資の神様ジム・ロジャーズ「日経平均は3万円まで上がる。私も日本株を買い増したばかりだ。ただし…」※最後までお読みください
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44481
2015年08月05日(水) 週刊現代 現代ビジネス
'87年のブラックマンデー、'90年代の日本のバブル崩壊も予見した伝説の投資家は、日本株は「買い」だと語った。だが、その口調に高揚感はない。彼の目には、日本の行く先がどう見えているのか。
■アベノミクスは「魅力的」
私はいまも日本の株を所有していますし、買い続けています。7月の1~2週目にも買い増したばかりです。このまま行けば、日経平均株価は3万円まで上がる可能性があると私は考えています。アベノミクスは本当に魅力的な政策ですよ。そう、私たち投資家にとってはね。
そう語るのは、ジム・ロジャーズ氏(72歳)だ。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並ぶ世界三大投資家の一人で、「投資の神様」と呼ばれるロジャーズ氏が、本誌の独占取材に答えた。世界の市場を見通してきた彼には、日本経済、そしてギリシャ危機をはじめとした世界経済はどう見えているのか。
私が日本株を買い増している理由については後ほどお話しすることとして、まずは、世界を騒がせているギリシャ危機についてお話ししましょう。
シンプルに言います。ギリシャは、破綻するしか道はありません。いまのギリシャ危機は'09年末に始まりましたが、今年になっても状況は悪くなるばかりです。
これからも混乱が収束する見込みはありません。デフォルトによる市場の混乱を恐れる気持ちはわかりますが、根本的な問題の解決のためには、ギリシャが破綻する他に、もう方法はないのです。
この問題の本質は、ギリシャが1829年の独立以来ずっと、保有しているカネよりも多くのカネを使ってきたことにあります。ここ200年のギリシャの歴史を振り返って見ると、10年に一度は、財政危機に襲われている。それにもかかわらず、ヨーロッパ各国が、ギリシャにカネを貸し続けてきたことは驚きであり、理解できません。
いまのうちに格安のギリシャ株を買って、儲けようと考えている人もいるようですが、私はまったく買う気になりませんね。ギリシャは問題を先延ばしにしているだけで、展望はないのですから。3155億ユーロ(約43兆円)にまで膨れ上がった債務の返済が、不可能なことは明らかです。
7月20日、IMF(国際通貨基金)はギリシャから20億ユーロ(約2700億円)の延滞債務の返済を受け、「遅滞国」ではなくなったと発表しました。IMFは、これからもギリシャにカネを貸し続けるつもりのようですね。しかしそれでは、国の借金はどんどん膨らんでいく一方。何の解決にもならず、問題は悪化していくばかりです。
もし私がチプラス首相なら、ユーロに留まるという決断をします。しかし、政治家というのは愚かな行動をするもの。合理的に考えて正しい判断をするのではなく、感情的に判断して間違えるということは、歴史が証明しています。その意味で、チプラス首相はこの先、ユーロからの離脱という選択をするかもしれません。
ヨーロッパ全体で見ると、経済は回復基調にあります。日本も同じですが、紙幣をジャブジャブ刷って市場に流していますからね。そのカネを得ることができた人たちは、経済は良くなっていると感じています。
しかし、覚えていて欲しいのは、これは「人為的に操作された好況」なのだということ。ヨーロッパの国々の借金は、いまも増え続けている。それで見せかけの景気が良くなったとしても、そんな夢みたいな状況は長くは続きませんよ。
本当の意味でヨーロッパ経済を回復させるには、金融緩和に頼っていてはいけない。緩和策を止めて、ほとんどゼロにまで下がった金利を適切なレベルに上げることです。
ヨーロッパは、ここ数年、緊縮政策を主張していますが、どの国も今は前年より多くの負債を抱えていて、負債はこの先、もっと増えていくことが見込まれます。緊縮政策など機能しないのは目に見えています。日本の方ならよくお分かりになるのではないですか?
まずは、ギリシャをキチンと破綻させ、金融緩和と借金に頼った財政支出に依存する経済政策から脱却しなければなりません。それこそがヨーロッパに求められているのです。
■かつて痛い目を見たのに
次にアメリカ経済についてです。株式市場を見ると、アメリカ経済は絶好調です。日本の株価高が、アメリカに牽引されたものなのは周知の通り。しかしそれも、カネをどんどん刷ってきたからにすぎません。
'08年のリーマン・ショック以降、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)はカネを刷り続けました。そしてそのカネの恩恵に与った人たちの生活は、どんどん良くなっている。ですが、これも同様に「人為的に作られた良い時間」なのです。
アメリカの金利が歴史上、ここまで低かったことはありません。この低金利政策によって、将来のために貯金してきた人たち、投資してきた人たちを苦しめています。年金制度、保険会社や信託会社……多くの会社も苦境に追いやられています。
一方で、多額の借金をしたり、本来なら買えないような不動産を購入する人が出てきています。サブプライムローン危機で痛い目を見たにもかかわらず、アメリカでは、そんな馬鹿げたことがいまだ続けられているのです。近い将来、深刻な事態を招くでしょう。
そんななか、FRBのイエレン議長は先日、「今年のうちに利上げするのが適切」と証言しました。利上げは非常に良いことです。少なくとも「人為的な好況」という夢物語から、人々を現実に引き戻してくれますからね。
もはや言っても仕方ないことなのですが、私は昨年こそが利上げのタイミングだったと思っています。なぜかというと、建国以来の歴史を振り返ってみると、アメリカ経済は4~7年おきに減速している。それが現在、リーマン・ショックから6年以上も拡大を続けています。つまり次の経済後退は、この数年のうちに起こるだろうということです。それなのに未だに利上げが行われていない。イエレン議長はいますぐにでも利上げすべきなのです。
2016年か'17年には、アメリカに何かしらの経済的な危機が起こると予測されます。そしてアメリカに訪れた危機が、世界第2位の経済大国にのし上がった中国を巻き込んでいくことは間違いありません。
■米中に気を付けろ
ただし、いまも私は中国株を所有し続けていますし、6月には買い増しました。7月中は買いませんでしたが、機会を見て再び保有を増やすかもしれない。株価は上がる可能性がありますし、たとえこの1~2年の見通しが悪くとも、今年、中国経済が崩壊するとは思わないからです。
6月後半から始まった中国株の暴落について、中国のバブル崩壊だと危惧する意見もあります。日本の市場もその懸念によって混乱しましたね。
しかし、私は中国の株式市場はバブルではないと考えています。急速に株価が上昇したものの、バブルには至らなかった。中国政府が株価をコントロールしようと露骨な市場介入を見せたために、市場がそれを怖がった。株価下落が起きたのはそのせいです。
それから、中国のGDP成長率が今年は7%を切りそうだから中国経済が危ないという人もいます。はたして本当にそうでしょうか。中国政府が発表している7%という数字は、信じるに値しない数字だと思います。数字は政府が勝手に作り出しているものですからね。
実際いま、中国は驚くほど長い間、景気の後退局面を迎えていません。ただ、先ほどお話しした通り、世界的な経済危機がここ1~2年のうちに起こることは確かです。その時、巨大な中国経済が、経済危機の渦に巻き込まれることが怖いのです。
中国に限らず、世界中の政治家や中央銀行は「危機は避けられる」と言うでしょう。しかし、歴史を見た場合、経済危機は避けようがないものです。
そしてアメリカや中国の経済に危機が訪れれば、当然、日本も致命的な打撃を受けます。日本にとってアメリカと中国は最大の貿易相手国なわけですから。だからこのような危機の連鎖が起こることを覚悟し、それを前提として物事を考えておく必要があるのです。
■ハッピーなのは誰か
それでは、日本経済の本当の評価をお話ししましょう。冒頭に述べた通り、私はいまも日本株を買い増しています。日経平均は3万円まで上がると述べましたが、それどころか、過去最高の4万円の大台に乗る可能性すらあると考えているのです。アベノミクスは、私のような投資家には最高の政策ですよ。
安倍晋三総理がやっているのは、つまるところ紙幣を刷って刷って、金融緩和と財政出動を続けること。そのカネを得られた人はとてもハッピーです。とりわけ喜んでいるのは、ストックブローカー(株式仲買人)と、私たち投資家です。
アベノミクスによる円安が、一体誰を幸せにしているのか考えたほうが良い。'13年以降の極端な円安誘導によって、円の価値はドルに対して半分になってしまいました。
自らの通貨の価値を下げる政策は、かならずしっぺ返しを喰らいます。結局、一部の大企業や投資家に利益のあることをしているだけ。日本そのものは破滅に向かっているのです。
財政出動を続ければ、いまでさえ1000兆円を超える日本の借金はどんどん膨らむ。紙幣価値は破壊され、多くの一般市民がインフレによる生活費の増大に苦しみ、さまざまな支払いが不可能になって、生活は困窮していく。ゆくゆくはギリシャのようになってしまうでしょう。
いち投資家の立場を離れて言えば、安倍総理に一刻も早く退陣してもらうことが、日本が立ち直る最良の解決策です。しかし、安倍総理の様子を見る限り、そんなつもりはないでしょう。安倍総理が紙幣増刷を止め、バランスの取れた予算を組むこと。そして、人口減少・少子高齢化への解決策を打ち出すことを願うしかありませんね。
日本のネガティブな課題で最も注視されるのが、人口減少問題です。この先、人口減少が進んでいけば、日本人の生活水準は落ちていく一方です。対策としては、二通りしかありません。子供を増やすか、移民を受け入れるかのどちらかです。
しかし現在でも、衣料であれ食料品であれ、物価が上がって、結婚して子育てを考えるような経済的余裕がない若者が増えている。さらに日本人の移民受け入れに対する消極的な態度は、日本人の「外国人嫌い」を顕著に示しています。
株価が上がり、それに舞い上がる人々がいる一方で、人口減少に歯止めがかからず、借金は膨らむばかり。日本の若い人に言えることがあるとすれば、「外国語を覚え、日本株を持って、国外に逃げ出したほうがいい」ということですね。
いまから10年、20年経って日本人の皆さんは気づくでしょう。「安倍総理が日本を滅ぼした」と。
(取材/ジャーナリスト・飯塚真紀子)
「週刊現代」2015年8月8日号より
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