http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/480.html
Tweet |
[エコノフォーカス]社会保障費、「自然増」の謎
不況時には膨張、支出全体の抑制策必要
政府は財政健全化計画に年金や医療など社会保障費の増加額を2018年度まで年約5000億円に抑える目安を設けた。高齢化で年1兆円必要とされた「自然増」を予算編成で半分に抑えるように見える。だが、過去の決算を見ると、予算のメドと関係なく社会保障費は景気に揺さぶられた。自然増とは何か。国民負担が重くなりすぎないよう、社会保障費を確実に抑えるには何が必要なのか。(中島裕介、藤川衛)
借金が毎年30兆〜40兆円増え、先進国最悪の日本の財政。15年度の当初予算で社会保障費は31.5兆円と一般会計の32.7%を占める。20年度には36兆〜37兆円台に増えると内閣府は予測する。財政健全化の成否は社会保障費の抑制にかかる。
失業給付も対象
政府が計画で抑える対象とした「自然増」とは何を指すのだろうか。3月の閣議決定によると「人口の高齢化等の他動的な要因による前年度予算額からの増加分」。要は今の社会保障制度を変えない場合、国の支出がどれだけ増えるか。高齢化に伴う医療や年金の費用増を連想しがちだが、生活保護や失業給付などは景気変動の影響も大きい。
「自然増」が注目されるのは当初予算を編成するときだ。7月に政府は概算要求基準で16年度の自然増は6700億円と示した。これを予算で5000億円増に縮めるのが計画の目安。「自然増1兆円」といわれた数年前より小さくなった。
実際にお金を支出した決算を振り返ると、10〜13年度の社会保障費の伸びは年平均3300億円にとどまった。景気が持ち直し、雇用対策費などが減ったためだ。景気が回復すれば自然増を放置しても支出は縮む。一方で、景気が悪化すれば一気に膨らむ。
「自然増を年2200億円抑える」。06年夏、小泉政権は社会保障費の増加の圧縮幅に数値目標を掲げた。だが、成功したのは07年度だけ。08年度は5300億円増に抑えるはずが、蓋を開けると約1兆4千億円増。リーマン・ショック対策で財政出動した09年度は約3兆7千億円増えた。
補正予算は枠外
主因は補正予算だ。09年度は経済対策に介護職員の処遇改善など約4兆円の社会保障費を積んだ。自然増の抑制を議論するのは当初予算だけで、補正予算は何を入れても枠外となる。当初予算を抑えて見せるだけで、支出全体を削る工夫を後回しにしたツケともいえる。
抑制を骨抜きにするまやかしは補正予算だけではない。今回の健全化計画でも抑制する「自然増」の範囲は曖昧で、無策でも目安を達成できる可能性がある。政府は17年4月に消費税率が10%になれば低所得者向け給付金などを約1兆5千億円増やす予定だが、これは「年5000億円」の枠外。抑制の看板を掲げたまま「実際は年1兆円ずつ増やせる」と法政大の小黒一正教授は語る。
社会保障費を抑えるには、当初予算の自然増の議論だけでは力不足。補正予算も含め支出全体の検証が欠かせない。
景気が好調なら伸びを黙認し、景気が悪化すれば当初予算で抑えた費用を補正予算で復活させる――。そんな失敗を繰り返さないためには、経済が好調なときにこそ恒久的な抑制策をとる必要がある。
[日経新聞8月3日朝刊P.3]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。