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ルネサス、初の黒字でも崩壊危機?リストラ&給与減で人材流出、有力事業なく競争力低下(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/475.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 05 日 00:15:05: igsppGRN/E9PQ
 

                   ルネサスエレクトロニクス本社(「Wikipedia」より/RenesasEurope)


ルネサス、初の黒字でも崩壊危機?リストラ&給与減で人材流出、有力事業なく競争力低下
http://biz-journal.jp/2015/08/post_10990.html
2015.08.05 文=田沢良彦/経済ジャーナリスト Business Journal


 半導体専業メーカーのルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)が「果てしなきリストラの嵐」といわれた構造改革を終了、成長への舵を切った。

 しかし、市場関係者の間には「成長基盤は、まだ何も整備されていない。前期に同社設立以来初の最終黒字を達成したからといって、今期も黒字を達成できる保証はない」と、同社の成長を不安視する声が多い。「下請け体質が染みついている」といわれる同社は、本当に成長に向けた舵取りができるのだろうか。

■赤字体質の要因は未解決

 ルネサスが5月12日に発表した15年3月期連結決算は、最終損益が824億円の黒字となり、10年4月の設立以来初の黒字を記録した。

 同社は、決算説明会で「今年度中に変革プランに基づく構造改革を完遂し、来年度から営業利益率2ケタを目指す成長にギアチェンジする」と、実質的なリストラ終了宣言を行った。

 また、6月24日に開催された定時株主総会ならびに取締役会では、作田久男代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)が同日付で退任、今年4月からCEO付を務めていた遠藤隆雄氏が後任を務めることが発表された。

 これに関して、同社は「現在取り組んでいる変革プランにおいて、財務基盤の安定に向けた構造改革に一定のメドがつき、成長に向けた半導体ソリューションのグローバルな提案力強化を進めている。今後、さらに成長を加速させるためには、当該分野において豊富な知見・経験と実績を持った新しいリーダーシップが必要であると判断し、新しい代表取締役会長兼CEOの選任を決定した。新しいリーダーシップの下、成長へのギアチェンジを行い、さらなる企業価値の向上を目指す」との声明を発表している。

 オムロン会長だった作田氏がルネサスの会長に就任したのは、13年6月だ。円高や東日本大震災による工場被災などの影響で、同社の13年3月期連結決算は1676億円の最終赤字を計上、経営破綻の危機に陥った。

 外資系投資ファンドによる買収説が流れる中、政府系投資ファンドの産業革新機構と大口顧客のトヨタ自動車など8社連合が同社の救済に乗り出し、同年9月に革新機構と8社連合による計1500億円の第三者割当増資が決まった。

 その内訳は、革新機構が1383.5憶円で8社連合が116.5億円だ。この割当増資で革新機構は出資比率69.16%の筆頭株主となり、ルネサスは実質的に国有化された。

 破綻は免れたものの経営再建の展望がない中で、革新機構からルネサス再建を託された作田氏は、生産拠点の集約、人員削減、液晶半導体子会社売却などのリストラ策をひたすら断行した。

 円安や自動車用マイクロコンピュータ販売拡大などの追い風も吹いたことで、業績は回復に向かい、15年3月期の営業利益は前期比54.45%増の1044億円を確保、最終損益も前述の通り黒字転換を遂げた。

 こうした経緯から、同社は「経営再建の総仕上げに入った」(外資系証券会社関係者)といわれているが、赤字体質要因がすべて解決されたわけではない。業界関係者の1人は「何より、社員の士気低下が半端ではない」と顔をしかめる。

■給与減額の恒久化と退職勧告の制度化で、社員の士気はボロボロ

「10月から、基本給を7.5%減額する」

 昨年8月中旬、ルネサスの各事業所で総務部員による給与削減説明会が行われた。その内容は、基本給の減額に加え、住宅・家族手当の廃止および減額などにより、月額給与を平均10%削減するという厳しいものだった。

 同社では、従来から緊急対策的に期間限定の給与減額が行われてきたが、今回の減額は恒久的な措置だ。同社は、これについて「固定費削減が目的ではない。これまでの親会社が属している電機業界ではなく、我々が属している半導体業界に則した給与体系に改めるのが目的だ。このため、給与分を減額するが、賞与分は引き上げる。これで、業績に連動した給与体系になる。業績を見れば『今期は、これぐらいの賞与が出る』と事前にわかるようになるので、モチベーションも上がる」(同社関係者)と、社員に対して大真面目に説明したという。

 新給与体系の参考にしたのは、大手コンサルティング会社の調査を元にした半導体業界上位18社の平均値だ。給与体系改革を推進した柴田英利取締役執行役員常務兼最高財務責任者(CFO)は、労使交渉で「半導体業界にふさわしい給与体系の下で、がんばった人が報われるようにしたい」と説明したという。

 この「がんばった人が報われる制度への移行」の露払いとして、昨年6月の夏季賞与支給に向けて導入されたのが、新人事評価制度だ。社員の1人は「新人事評価制度は、退職勧告の制度化にほかならない」と語り、経緯を以下のように説明する。

 上司から「キャリア相談会がある」といわれて出席すると、約40人の社員が集まっていた。その場で、「新制度では社員の働きを11段階で評価し、評価が0か1の社員は、キャリア相談室などの『新セカンドライフプラン制度』の適用対象になる」と説明された。

 賞与支給額も評価に連動する仕組みで、平均2.5カ月分が支給された昨年6月の賞与の場合、係長・主任クラスで0評価者は60万円だったのに対し、10評価者は191万円と3倍以上の差がついた。

 さらに、「事業部ごとの相対評価なので、社員を11段階に割り振らなければならない。したがって、がんばっても低評価の者が必ず出てくる。これまでの人員削減は応募制の希望退職だったので、がんばった者は残留できる望みがあった。しかし、今度は事実上の退職勧告ときた。『何がなんでも、5000人以上の首を切るぞ』という姿勢が見え見えだ。昨年6月から、低評価の恐れがある社員は『いつ肩を叩かれるのか』と戦々恐々としている。新制度の導入で、がんばった者も報われない会社になった」と、前出の同社関係者は憤る。

 ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの合併で生まれた同社は、合併時に22カ所あった生産拠点を14カ所に減らし、社員数も同じく約4万3000人から約2万1000人(15年3月末現在)と半減させた。それでも、同社は「25%ぐらいの人員余剰がある」と、16年度末までに国内8工場の閉鎖や約5000人の人員削減を計画しているといわれる。

 経営コンサルタントの1人は、「給与減額の恒久化や退職勧告の制度化が、変革プランの隠された骨子とするなら、『構造改革の完遂』は社員の士気破壊にほかならない。そんな改革が『経営再建の総仕上げ』になるのだろうか。士気の低い社員が知恵と工夫で赤字を克服した会社はない」と呆れ顔だ。

■リストラで虎の子事業の競争力が弱体化

 成長戦略に関しても、同社は不安材料が尽きない。その代表が、国際競争力だ。かつては世界シェア40%といわれるなど、同社は自動車用マイコンで抜群の競争力を誇っていた。それが「日の丸半導体を潰すな」とばかりに革新機構と8社連合の救済に結びついた背景でもある。

 しかし、「リストラに明け暮れている間に技術開発投資が断続的になり、優秀な技術者が流出していった」(業界関係者)。そのため、調査会社IHSテクノロジーの調査によると、14年の世界シェアは11%に低下している。同年は辛うじてシェアトップを確保したが、15年は3位に転落する可能性が高い。

「世界的な業界再編が進む自動車向けマイコン市場で、ルネサスは年を追って競争力が弱体化している」(同)という。しかも、自動車向けマイコンに代わる有力事業は何も育っていない。

 それを自覚しているのか、同社は先の決算説明会でも「半導体ソリューションのグローバル提案」を成長シナリオに掲げている。

 このシナリオの中身は、身の回りのものが通信機能を持つ「IoT(インターネット・オブ・シングス)」事業にほかならず、IoT事業部の立ち上げもすでに明らかになっている。

 同社がこの事業で展開するのは、産業用ネットワークエンジン「R-INエンジン」を核とするソリューションだ。これについて同社は「ドイツを中心に提唱されている第4次産業革命『インダストリー4.0』の実現に向けて生じている標準化、通信インフラ、セキュリティなどの課題を解決する『半導体ソリューションプロバイダ』を目指す」と説明している。

 しかし、業界関係者は「この分野はEU(欧州連合)の半導体強豪がルネサスより2周も3周も先で主導権争いをしている市場だ。今さらのこのこと事業部を立ち上げて、世界の最先端に追いつけるのか」と、同社の成長シナリオに首をかしげる。

■9月で期限切れになるロックアップ契約

 さらに同社は、財務面でも時限爆弾を抱えている。

 同社の株式は、第三者割当増資を引き受けた革新機構と8社連合に加え、日立製作所、三菱電機などの持分が大半を占め、市場で取引されているのは2%強といわれている。これが、毎期最終赤字を垂れ流していても存続できた一因だが、この財務基盤が崩れる可能性が高まっている。

 革新機構と日立などがルネサスと結んでいるロックアップ契約(株式の一定期間売却禁止契約)の期限切れが、今年9月に迫っているからだ。契約解除になる10月以降、ルネサス株の69.16%を保有する革新機構は、出口戦略を発動するとみられている。

 そうなれば、ルネサスは革新機構が手放す自社株の買い取りを迫られる可能性もあり、15年3月期に稼いだ最終利益を吐き出さなければならなくなるかもしれない。

 証券関係者の1人は「ロックアップ契約を結んでいない8社連合の株式売却は、すでに始まっている。例えば、ニコンは15年3月期のルネサスの最終黒字転換を見越し、出資比率0.2%分の株式をすべて2月に売却している。残る7社も、黒字転換の余韻が残る今期の早い時期に、いつ売却に動いてもおかしくない」と指摘する。

 不安だらけの中で成長への舵を切ったルネサス。外見は化粧直しをした新造船風でも、中身はエンジンがボロボロの中古船である。そんな状況で、どのように半導体市場の荒海を乗り越えていくのだろうか。

 日本IBM常務執行役員や日本オラクル社長を歴任するなど「外資系を渡り歩いたプロ経営者」と呼ばれる遠藤新会長の手腕が注目される。

(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)

 

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