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昨年7月13日、ギリシャを訪問した中国の習近平国家主席。この3週間前には李克強首相もギリシャを訪れ、貿易・投資協定を締結して両国関係を強化した=ギリシャ・ロードス島(新華社=共同)
【国際情勢分析】中国、ギリシャを“爆買い”か 港湾、空港、揚陸艦にも食指 狙いはユーロ圏の橋頭堡
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150803/frn1508031540009-n1.htm
2015.08.03 夕刊フジ
中国がギリシャへの投資に食指を動かしている。
ユーロ圏首脳会議が金融支援の協議を行うことで合意し、ギリシャがユーロ圏から離脱する懸念が遠のいたからだ。地政学的にギリシャをユーロ圏への「橋頭堡(きょうとうほ)」と考える習近平指導部には「チャイナマネーにモノを言わせて“ギリシャ爆買い”に走るチャンス」と映っているに違いない。
■ユーロ圏への「橋頭堡」
世界地図帳を開いて地中海に突き出たギリシャを探し、中国との位置関係を俯瞰(ふかん)すると、陸路でも海路でも空路でも、中国から欧州への要衝にあることが分かる。通貨ユーロがそこに流通しているのもカギだ。
中国はすでに2008年からギリシャ投資に大きくカジを切ってきた。中国海運最大手の中国遠洋運輸集団(COSCO)がギリシャ最大の貿易港「ピレウス港」に、子会社を通じて43億ユーロ(約5850億円)で35年間、一部の埠頭(ふとう)運営権を獲得。対ユーロ圏貿易の中継地として育成する国家的な戦略を進めていた。
ところが年初に誕生したチプラス政権が、前政権までの改革路線を見直すとしてピレウス港など重要施設の民営化を凍結。中国の戦略には「待った」がかけられていた。したたかなチプラス政権は2月、このピレウス港への中国海軍軍艦の寄港を認めて式典にも出席し、「中国からの投資を重視している」と表明。欧州連合(EU)との交渉を控え、「中国カード」をチラつかせる場面もあった。
ただ、緊縮財政に現実対処していかねばならなくなったチプラス政権は、「凍結措置を解除し、ピレウス港の株式67%をCOSCOに売却をせざるをえない状況」(中国関係筋)だ。
■港湾・空港に揚陸艦も?
中国を起点に内陸と沿岸の2つのルートでインフラ建設を通じて欧州まで経済圏を構築する習指導部による「新シルクロード(一帯一路)構想」実現で、ピレウス港は物流拠点として重要な位置にある。COSCOからの出資に加え、中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の投融資も振り向けて港湾整備を手がける戦略なども検討するだろう。
港湾だけではない。「首都アテネ空港やギリシャ軍が保有する軍艦も中国が手に入れるチャンス」と主張する中国メディアまで現れた。アテネ空港にはドイツ企業が40%出資する形で支援しているが、中国も30%程度を出資する方向でギリシャ政府との交渉に入ったという。資本投入を通じて空港運営権の一部を獲得したい狙いがあるようだ。
さらに注目すべきは、ギリシャ軍が保有する「揚陸艦」と呼ばれる艦艇4隻を中国が買収するとの案があることだ。ロシア製の「ポルモニク型」とよばれるホーバークラフトのような全長57メートルほどの艦艇で、戦車3両と将兵31人を載せて離島などの上陸作戦が可能という。中国が日本を含む周辺国と軋轢(あつれき)を生んでいる東シナ海や南シナ海、中国が統一工作をもくろむ台湾への展開も考えられそうだ。
■露海軍と地中海で演習
EUは1989年の天安門事件を受け対中武器禁輸措置を取っている。艦艇買収は容易ではないが、中国はEUへの禁輸解除の働きかけから始める可能性がある。経済情勢の不透明なギリシャにとっては“明日の安全保障よりも今日の生活保障”との切実な問題もあり、チャイナマネーにつけいられる隙すら見える。
一方で、中国海軍は5月、ロシア海軍と地中海では初となる合同軍事演習を実施し、中露による米欧牽制(けんせい)との臆測を呼んだ。北大西洋条約機構(NATO)の基地もあるギリシャは、黒海沿岸を拠点とするロシア艦隊の地中海への出口という位置にある。チプラス政権はNATOの集団安保体制の弱体化懸念まで“人質”に取る一方、中国カードも使う瀬戸際外交をなおも繰り広げる懸念がある。中国にとってもNATOと渡り合う舞台回しが作られつつある。
李克強首相(60)はブリュッセルを訪れた6月29日、欧州議会のマルティン・シュルツ議長(59)と会談し、「中国と欧州は運命共同体で、今後も欧州の債券の責任ある長期保有者であり続ける」と述べ、ギリシャ国債を売却しない方針も示した。“爆買い”への伏線は敷かれ始めているようだ。(上海 河崎真澄)
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