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ひと昔前なら都心の40平米のマンションは主に単身用。だが今は子連れの夫婦に超人気だ(写真 : コーチャン / PIXTA)
都心で超狭2LDKマンション大ヒットの理由 40平米でも3人家族が暮らせる間取り!?
http://toyokeizai.net/articles/-/78998
2015年08月02日 黒崎 敏 :建築家 東洋経済
家を買うならマンションがいいのか、戸建てがいいのか。都心なのか、郊外なのか。大手住宅メーカー商品開発者を経て、現在は建築事務所APOLLOを経営する黒崎敏氏が「失敗しない家の選び方」を伝授する。第4回は「都心で40平方メートル2LDKマンション大ヒットの衝撃」。かつては独身者が1LDKとして主に買っていた広さだったはずだが、今はカップルや子連れの家族が2LDKとして購入しているというのだ。なぜ都心でこうした物件が飛ぶように売れているのか。
「親子3人家族で住むには、60平方メートルのマンションはちょっと狭い」。
ひと昔前はこれが常識だった。だが、最近ではなんと40平方メートル台の2LDKマンションが発売され大ヒットしており、業界に衝撃を与えている。とりわけ都心では「つくれば売れる」という状況が続いているというから驚きだ。
■いまの3人家族には40平方メートルで十分!?
具体的には40平米の前半、つまり数年前までは1LDKとして計画された広さのマンションで、2部屋のうちマスターベッドルームは4畳半程度しかない。「寝るスペースさえあればよし」とする若い人々にとっては、この広さで必要十分なのだという。部屋は狭いながらもコンパクトなウォーク・イン・クローゼットがしっかり付いているのも特徴だ。
衝撃的なのはもう1部屋の方で、広さはシングルベッドをひとつ置ける3畳ほどしかない。つまり2LDKといっても「ワンベッドルーム+ベッド」という構成なのだ。40平方メートル超程度でも、2部屋が並列して外部に面するように設計されているため、夫婦2人でも、子供と3人でもコンパクトに暮らせる。そういったフレキシビリティーこそが人気の秘密なのだ。
この手の企画型コンパクトマンションを販売する中堅不動産会社は、大手不動産が得意とする3LDKや4LDKのマーケットで無理に勝負をせず、このようなミニマルプランを武器に子供1人の家族やDINKSの需要を獲得している。
われわれ建築事務所側も、某中堅不動産会社から新型2LDKの設計コンサルの依頼を受け、これまでさまざまな種類のプラン提案を行ってきた。一住戸あたりの必要最低間口を部屋の大きさや形からシミュレーションし、パズルのように解析しながら全体計画の指針をミリ単位で決定するのが特徴だ。特に敷地面積に制限のある都心部では、過不足のないシビアな設計が求められるわけだ。
■「予算4000万円台、超都心」で広さを犠牲に
おそらくここまで細かく区切った2LDKはいまだかつてなかったのではないだろうか。天井の高いスタジオやロフトのようなタイプに、ブース状に空間を挿入するスタイルは比較的よく見かけるが、天井の低い空間を細かく区切るという発想は、せせこましくなるため、これまではむしろ敬遠されてきたように思う。
販売価格は、東京中央部の3区の中でも比較的リーズナブルな価格帯の日本橋あたりで4000万円程度。渋谷や目黒などの主要駅周辺であればさらに高く売れる。40平方メートル台の2LDKコンパクトマンションは、立地にこだわり、「生活の利便性に対しては譲れない」という都市志向の人たちが住む部屋だ。都心に住みたいと願う彼らも予算は限られているため、ダウングレードするならば、もはや面積しかないというのが現実なのだ。
土地神話全盛時代に建てられた中古マンションでもこのような間取りは少なく、少子化傾向の現代のほうが広さや高さが圧倒的に窮屈なつくりになっている。例えば1階を半地下にし、各階の天井高を抑えながら階数を増やすことで、可能な限り部屋数を増やしているのが現状である。
一方、ヴィンテージマンション(中古になっても価格が落ちにくい名作マンション)は広さや高さに比較的ゆとりがあることから、リノベーションによって豊かな空間が獲得できる。
ただし、給排水設備の老朽化に対する不安などがついてまわる。日本人は新築志向が根深いため、40平方メートル台のコンパクトマンションを買う人は、狭くてもやはり新築がよいと判断しているのかもしれない。
一時的にマンションを所有し、運用していくという発想ならば、中古より新築の方が、リスクが少ないのは間違いない。都心の新築を買い、10年後に高値で売る。マンションではこの形式が最もリスクが少ないからだ。この発想はすでに巷で流布されているとおりだが、その次の10年でメリットを出すのは難しく、それ以降はさらに厳しくなっていく。そもそも最近の新築マンションはリノベーションしようにも、騒音などの理由で水回りの位置変更ができない場合が多く、大幅なプラン変更が現実的ではないのも特徴だ。
■自宅がSOHOである必要もなくなった
それでも都心のコンパクトな新築が良いという若い人が増えているのは「できるだけ身軽でいたい」という気持ちが強いからなのかもしれない。
人口が減少し、超高齢化社会に向かう中で、地域におけるコミュニティーの維持は難しくなる一方だ。モノをたくさん持つ必要はもうないし、沢山の部屋も不要。身軽さを追い求める一方で、彼らが譲れないのが都心での生活なのだ。
実際、都心には生活の要素が十二分に揃っている。コンビニエンスストアは冷蔵庫代わりに使えるし、図書館もあれば映画館もある。お客さんが来たときには、近くのホテルに泊まってもらうほうが快適だから、自宅に客間は必要ない。また、ここ数年シェアハウスのような共同生活の新しいスタイルが登場し、働き方においてもコワーキングスペースを利用する人も増加しているから、SOHO(自宅を小規模オフィスとして利用する形態)である必要もないのだ。
思い返せば、2000年ごろに都心部を中心に「狭小住宅ブーム」が起こったが、それ以来、「都市の諸機能を自分の生活の場としながらコンパクトライフを送る」という流れがずっと続いているように思える。
その一方で、かつて人が密集して暮らしていた郊外の団地エリアは人口が大きく減少しているため、太陽光発電など創エネルギーの拠点にするというような議論も進んでいる。人が住む場所とエネルギーを生み出す場所を分けるという発想だ。そのように考えると、かねてから森ビルが都市部で提唱してきた「バーティカル・ガーデンシティー(立体緑園都市)」の流れに、ようやく時代が追いついたという感も否めない。
■「絶対に損をしたくない」という意識が背景に
今の若い人たちは、「買って損をするものを絶対に購入したくない」という意識が根強い。だからこそ、買ったら値が下がる郊外ではなく、都市に住むという判断をしている。つまり買うなら小さくとも都心で、郊外に住むなら賃貸でもいいということだ。
不景気により会社の社員寮等も激減し、生活経験の乏しい若い人たちはどこで暮らすかという責任を最初から負うはめになった。彼らは得をしなくても良いけれど、決して損はしたくないと考え、もっとも合理的な選択は何だろうという発想で家を選ぶ。そして最終的には人や経験ではなく情報に頼る。世に溢れるたくさんの情報をもとに物件を検索し、それを信じて購入し、情報をもとに売却している。
かつては、賃貸の実生活の中からさまざまな経験や教養を積んだところで、それらをもとにマイホームを建てるのが一般的であった。だが、生活体験が乏しい人々でもいきなり家を買っているのが現代だ。その結果、そのような人々に向けた商品が巷に溢れることになり、40平方メートル台の2LDKのコンパクトマンションが人気を博しているというわけである。
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