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海外勢に高まる「日本株熱」 しかし、「ROE目標」は一長一短 資本コスト概念が必要
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150802-00000502-biz_san-nb
SankeiBiz 2015/8/2 15:05
このほど、カナダのトロントで開かれた投資家会議では、「日本株は世界的に見てまだまだ割安だ」との声が聞かれた。増益基調に加えて、自社株買いなど株主還元策が評価されていた。
海外勢の間で「日本株熱」が高まっている。機関投資家からヘッジファンドまで、日本株の保有比率引き上げを検討している。
材料となっているのは、アベノミクスの「第3の矢」である「民間投資を喚起する成長戦略」。稼ぐ力を取り戻す政策への期待だ。これは、安倍晋三政権が6月末に閣議決定した改訂版・日本再興戦略の要諦をなす。企業の持続的成長や企業統治原則を求めるなど、株主を意識した提言・政策が人気となっている。
その根幹が、企業の収益率アップである。中でも、株主資本利益率(ROE)と呼ばれる指標が強調されており、改訂版・日本再興戦略にも登場する。
国家の政策目標に「ROE」が記されたのは、資本主義先進国の米英でも聞いたことがない。日本にはROEを重視した新しい株式指数も生まれている。
「ROE」とは、企業に払い込まれた資本金に対して、毎年どのくらいの利益が上がっているかを示す経営指標である。税引き後の最終利益を貸借対照表に載っている簿価の株主資本で割った数字だ。
なぜ、この数字が高ければ高いほど良いのか?
基本的に、企業による株主還元の資金源は期間収益、毎年の最終利益である。これは売り上げから取引先や従業員に支払う原価や販売・一般管理費、金融機関への支払い利息、政府への税金を差し引いた「お尻」の数字である。
「とりっぱぐれる」可能性が一番高いので、ここでは、株主は最もリスクを取った利害関係者とみなすべきだ。取ったリスクに見合う分だけのリターンを期待するのは、資本主義社会のおきてだ。
日本の場合、東証株価指数を構成する企業の平均ROEは8%(金融を除く)。米国の代表的なS&P500種で22%(同)、ドイツのDAX指数の12%(同)など、他の先進国企業に比べて低い。
欧米では上場廃止率が高いのでROEが高めになる傾向があるが、総じて日本は「リスクを取った割に報われない国」とみられている。これでは、リスクが高くても将来性のある新興ビジネスに人材も資金も集まらない。
ROEを因数分解すると、3つの構成要素がある。第1が、商品・サービスの魅力を反映する「利ざや」。次に、投下資本に対する「生産効率」。最後に、株主資本に対する資産の大きさ(「財務レバレッジ」)で、これは借入金が増えれば膨らむ。
利ざやは利益を売上高、生産効率は売上高を資産、財務レバレッジは資産を株主資本でそれぞれ割った数字である。最近の日本企業は3つ目の要素に注目して自社株買いなどを進めており、ROEは上昇基調だ。
ただ、このROE指標は企業が強くなる必要条件であっても十分条件ではない。ROEの過去の推移を見ていると、財務レバレッジよりも利ざやの変化率と連動しているからだ。
金融の世界では、2人のノーベル経済学賞の学者が説いた「MM理論」なる3つの命題がある。その第1命題は「資金調達の方法と企業価値とは無関係」。つまり、財務構造を変えても企業価値は変わらないのだ。
ROE指標のもう1つの弱点が、資本コストで将来価値を割り引くキャッシュ・フロー(CF)の概念に欠けていること。仮にROEが高くても、ビジネスのリスクが高ければ株主の期待する見返りも高くなるので、資本コストは高い。高ROEでも、CFの純現在価値がプラスとなる保証はない。
最近の日本企業は海外買収ブームだ。外に成長機会(高ROE)を求めるのはいいが、リスクが高い分だけ、その買収先事業の資本コストは高い。それを補うためには、買収先との徹底したシナジー(相乗効果)が必要となるが、日本には国際事業を運営できる人材を登用する機運がまだ乏しい。
加えて、どうも手数料稼ぎの財務アドバイザーの口車に乗ったような、余った現金を使うのが主目的となっている買収が目立つ。海外進出を促す国策とはいえ、これでは価値破壊だ。
資本コストを意識させるためには、取締役による株主価値または企業価値の最大化義務を成文化するしかない。アベノミクスの次の一歩は商法改正だ。(ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇)
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