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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第135回 ギリシャの緊縮クーデター(週刊実話)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/340.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 7 月 30 日 20:48:11: igsppGRN/E9PQ
 

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第135回 ギリシャの緊縮クーデター
http://wjn.jp/article/detail/4077147/
週刊実話 2015年8月6日 特大号


 2015年7月15日、ギリシャ議会は増税や年金改革などの緊縮財政法案を可決。緊縮法制化と引き換えにユーロ側は総額820億〜860億ユーロ(11兆2000億〜11兆7500億円)の支援を実施し、ギリシャの再デフォルト(債務不履行)は回避されることになった。同時に、ギリシャ国民はギリシャの“主権”を失った。

 7月7日、ジェフリー・サックスやトマ・ピケティ、ダニ・ロドリックら著名経済学者たちが、メルケル独首相への公開書簡を発表し、対ギリシャの緊縮財政を見直すように求めた。書簡では、緊縮こそが、
 「ギリシャで大量の失業と金融システムの崩壊を招き、債務危機を深刻化させた」
 と、批判している。ピケティに至っては、ドイツ誌のインタビューに応じ、ドイツが第1次世界大戦、第2次世界大戦後の債務弁済が滞った史実を指摘した上で、
 「ドイツは対外債務を返済しない国の代表国で、他国を戒める立場にない」
 と、痛烈に皮肉った。

 国民投票まで実施し、ユーロ(というよりは「ドイツ」だが)からの緊縮の要請にあらがったギリシャのチプラス首相は、あぜんとしたくなるほどの“転向”を見せた。ユーロ側の要求を、ほぼ全面的にのむ形で支援の受け入れを決定。チプラスが勝ち取った譲歩は、500億ユーロ規模の国有資産を欧州連合の監視下にある信託資産に移管し、民間に売却する際に、本拠をルクセンブルクではなく、アテネに置くこと。それだけだった。いずれにせよ、ギリシャ国民の資産(国有資産)は民間に売り飛ばされ、グローバル投資家たちのマネーゲームに活用されることになる。

 ところで、筆者がなぜギリシャ問題を繰り返し取り上げるのかと言えば、もちろんわが国がギリシャ以上に長期間「緊縮財政至上主義」という病気で苦しんでいるためだ。いや、ギリシャ人は国民投票で「緊縮にNO」との判断を下したわけだが、日本はと言えば、いまだに「政府は無駄を削れ」「増税やむなし」と、自らの首を懸命に絞め続ける愚かな人々で満ち溢れているわけで、こちらの方がより重症といえる。

 今回のギリシャへの緊縮財政強要は、世界中から批判が殺到し、「#ThisIsACoup」(これはクーデターだ)というツイッターのハッシュタグが流行している。国民“主権”に基づき、緊縮を否定したギリシャに緊縮を強要するわけで、確かにクーデターの定義に該当する。

 ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン教授はギリシャ危機について、
 「今話題となっているハッシュタグ『#ThisIsACoup』は全くもって正しい。この要求は、厳しいという範囲を越えて純粋な報復の域に達しており、国家主権の完全な破壊であるとともに、救いへの希望もない」
 と、書いている。

 クルーグマン教授の言葉、
 「国家主権の完全な破壊であるとともに、救いへの希望もない」
 は、大げさに聞こえるかも知れないが、事実である。もともとEUに加盟していることから、移民制限や国境管理(対シュンゲン協定国)の主権がなく、関税自主権もなく、資本規制もできず、さらにユーロに加盟して以降は金融主権をECBに移譲し、そして最後の“財政主権”を今回の“救済案”で喪失するギリシャは、少なくとも「国民主権国家」ではなくなるのだ。現在の欧州で起きているのは、ギリシャという曲がりなりにもOECDに加盟していた国の主権喪失なのである。

 極めて悲劇的なのは、今回のギリシャの“救済案”が、全く救済にはならないという点だ。何しろ、ギリシャ経済の問題は「ギリシャは公務員が多過ぎる」「ギリシャ人は働かない」等、マスコミでまき散らされているデマゴギーとは全く別のところに存在するためだ。

 下図(本誌参照)の通り、ギリシャの労働時間は主要国の中では突出して長い。ギリシャ人は働かない、というのは、労働時間で見る限り明確な嘘だ。問題は、
 「なぜ、労働時間が長いにもかかわらず、ギリシャは貿易赤字が拡大し、(ユーロ加盟前は)高インフレが継続していたのか?」
 になる。

 答えは簡単で、生産性が低いのだ。すなわち、投資(設備投資、人材投資、技術開発投資、公共投資)が不足し、生産者一人当たりの付加価値の生産(GDP)が少ないというのが、ギリシャ問題の源なのである。

 ギリシャは生産性が低いにもかかわらず、EUとユーロに加盟してしまった。

 結果的に、
 「関税と為替レートで自国市場を外国企業から保護し、投資を拡大することで生産性を高める」
 という、正しい経済政策を採れなくなってしまった。

 何しろ、ユーロ加盟国は関税自主権がなく、金融主権もない。しかも、ギリシャは国債発行に際してドイツやフランスと“同一通貨”で競争をせざるを得なくなり、金利は高止まりが続いた。

 ユーロ加盟後のギリシャでは、不動産投資はともかく、肝心の生産性向上のための投資は拡大しなかった。結果、例えば自動車市場ではドイツ車の圧倒的な攻勢を受けてしまい、貿易赤字と経常収支赤字が拡大し、財政破綻に追い込まれたのである。

 ギリシャはユーロ・グローバリズムの頸木にとらわれている限り、未来永劫、低生産性国から脱却できない。揚げ句の果てに、財政主権まで取り上げられたギリシャが、永久に負け組のまま据え置かれることが決定したというのが、今回の「ギリシャ危機」の結末なのだ。

三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。

 

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コメント
 
1. 2015年7月30日 21:09:08 : nJF6kGWndY

昔とは大違いで

単一通貨圏での問題への理解も進み、

IMFもドイツや中国など黒字国の緊縮策へは、かなり厳しくなってきたが

競争力やレベルの異なる主権国家が乱立する現在の世界経済システム自体が、不均衡の源泉だという認識が不足している

つまり単純な1国の財政拡張だけで問題が解決するわけではなく、同時に生産性の上昇が無ければ、国民の貧困化自体は止まらない

そして、それは生産と消費のバランスが悪化していく日本など多くの先進諸国でも同じではある



2. 2015年7月30日 21:36:01 : E3xyY4Elvs
ヤニスの説明(加筆)
http://songcatcher.blog.fc2.com/blog-entry-1147.html

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