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「非常によい結果が出た」と決算会見で胸を張った田川丈二常務執行役員。だが、注目は別のところに。
絶好調の日産に忍び寄る中国市場の異変 「新車販売はどんどん悪くなっている」
http://toyokeizai.net/articles/-/78756
2015年07月30日 木皮 透庸 :東洋経済 編集局記者
世界販売は四半期ベースで過去最高の129万台、売上げと純利益は過去最高を達成。日産自動車が7月29日に発表した第1四半期(4〜6月)の決算は好調そのものだった。好業績を牽引するのは、全体の販売の4割弱を占める北米だ。台数は約9%増の48.6万台で、利幅の大きい車種が利益に貢献した。
だが、決算会見で関心が集まったのは、上海株式市場の急落を受け、景気減速懸念が強まる中国だった。日産の中国販売は北米に次いで台数が多く、世界販売の約4分の1を占める。日系メーカー首位の座は2009年以降保持しており、最重要市場の一つだからだ。
■販売悪化は長くは続かない?
中国事業を統括する関潤専務執行役員は、直近の状況について「4月から6月にかけて新車販売はどんどん悪くなっている。7月はさらに悪い」と率直に答えた。その上で、「どこまで続くかは分からないが株価の影響を受けていることは間違いない。ただ、政府がしっかり(景気てこ入れへの)介入を宣言しているので、長くは続かないと思う」との見解を示した。
日産の第1四半期決算に反映されている中国の業績は1月から3月。この期間の販売は前期比11%増の29.6万台と、市場全体の伸び率の約2倍も拡大した。ところが、関専務が「どんどん悪くなっている」というように、4月から6月の販売台数はほぼ前期並みの29.2万台と一気にスローダウンしている。
6月の中国全体の新車販売は前期比2.3%減で、リーマンショック直後以来の3か月連続のマイナス。これには、どのメーカーも頭を悩ませているはずだ。日産が2015年に掲げた販売目標は130万台。上半期(1〜6月)の実績は58.8万台だったことから、下半期は上期実績の約2割増となる70万台超を売らないと計画に届かない。
中国向けの専用モデルで、10月に発売する「ラニア」。20代、30代の取り込みを狙っている。
販売拡大に向けて、「待望の新車」(関専務)として期待を寄せるのが、今年8月に投入する新型SUV「ムラーノ」と10月発売の新型セダン「ラニア」だ。中国市場への日産ブランドの新車投入は14年3月の「エクストレイル」以来1年5か月ぶりとなる。
この2車種は今年4月に、カルロス・ゴーン社長が3年振りに中国のモーターショーに登壇し、大々的にアピールした戦略車種だ。特に「ラニア」は中国の若者向けに開発された初のモデルで、開発初期の段階から若手の中国人デザイナーがかかわった。消費を牽引する20代、30代の取り込みを狙う。
■「目標はギリギリなんとか守る」
中国事業を統括する関専務は、今年5月の決算会見の場で、「(販売目標の)130万台を確実に上回るペースでここまで来ている」と自信を見せていた。しかし、今回の第1四半期決算の会見では、「競争の激化は間違いなく増している。足元が非常に厳しいだけに、あまり楽観はできない。130万台ぎりぎり何とか守っていくが、そんなに余裕はない」と大きくトーンダウン。市場全体が3カ月連続で前年割れなだけに、弱気になるのもやむを得ないところだろう。
日産は中期経営計画で、2016年度に世界シェア8%、営業利益率8%の目標を掲げている(今第1四半期ではそれぞれ、5.9%、7.0%)。田川丈二常務執行役員は、販売増加やコスト削減に加えて、販売金融やアフターセールスなどの収益力強化を通じて、「会社の総合力で(営業利益率に)あと1%の上乗せを目指す」と述べた。
目標達成に向けて、重要な中国市場での取りこぼしは許されない。市場に陰りが見られる中、新車投入で日産の販売が再び勢いを取り戻すきっかけとなるのか。それとも市場の落ち込みに引きずられるのか。毎月発表される中国の販売統計がこれまで以上に注目を集めることになりそうだ。
日産自動車の会社概要 は「四季報オンライン」で
http://shikiho.jp/tk/stock/info/7201
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