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銀行の巨額「休眠預金」、税金の穴埋めに活用の動き 預金者の権利はどうなる?
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10911.html
2015.07.30 文=安積明子/ジャーナリスト Business Journal
国と地方を含め、今や日本は1300兆円以上の巨大な財政赤字を抱えている。それにもかかわらず、間もなく超少子高齢社会に突入しようとしているのだ。増大する医療福祉予算をどうするのか、老朽化する社会インフラをどう整備するのか。これらは今後、ますます重要な政策的課題になっていく。
そうした問題についてのひとつの対処法として、いま注目されているのが「休眠預金」だ。休眠預金とは、長い間(10年以上)、引き出しや預け入れなど取引が行われず、預金者の所在の確認ができないために金融機関に眠っている資金を意味する。その金額は銀行などの金融機関では年間1050億円(口座数で1150万口座)、農漁協系統金融機関では年間31億円(口座数で62万口座)にも上る。
これらは金融機関の「益金」となって課税対象にされるが、権利者から請求があればいつでも払い戻される。払い戻される金額は年間430億円(90万口座。農漁協計等金融機関では7億円、4万口座)で、年間でおよそ500億円から600億円が休眠預金として発生する計算になる。
これを有効的に使おうと今国会で、自民党が「休眠預金活用法案」を提出する予定だ。提案者のひとりであり、「休眠預金活用推進議員連盟」の幹事を務める武村展英衆院議員は、公認会計士の資格を持つ金融問題の専門家だ。「これまで税金などを投入しにくかった部分に資金を投入することができる」と、休眠預金活用の展望を示す。具体的には、病院近くで子ども患者の家族向けゲストハウスを運営、夜に親と食事をとれない子どもたちが集団で仲良く食卓を囲める食堂を運営、豪雪地で高齢者世帯の雪下ろしなどをサポートする有償ボランティアなどのNPO活動に活用される予定だ。
休眠預金資金を活用する流れは以下のようになる。
(1)休眠預金は金融機関から預金保険機構に移管される
(2)預金保険機構から「指定活用団体」に交付される
(3)「指定活用団体」から資金分配団体への助成などに支出される
なお、指定活用団体は内閣府に事業計画を申請して認可を受け、事業報告を行うとともに、その指示・監督に服さなければならない。内閣府は指定活用団体に対して、運用資金等の返還命令を出すことができ、指定取り消し処分も行うことができる。「事業に対して国費から出すとなると、法律を制定したり、予算に組み込むなど手続きが煩雑になるが、これを利用すると簡素化され、すぐに細かく対応できる。また具体的な計画について、しっかりと監視の目も行き届く」と、武村氏は休眠預金活用の可能性を語る。
■安保関連法案の裏で法整備進む
外国でも休眠預金は活用されている。アメリカでは3年間の休眠で州政府に移管され、カナダでは10年間でカナダ銀行に移管される。カナダやフランスでは、一定期間を経た休眠預金は国家予算に組み込まれる。日本がこれから採用しようとする仕組みと似ているのは、イギリスの制度だ。15年の休眠期間の後にRECLAIM FUND(再生基金)に移管され、BIG LOTTARY FUND(宝くじ基金)が法律に基づいて資金を活用する。
では休眠預金が預金保険機構に移管された後、権利者の権利はどうなるか。消滅時効にかかるのか。それとも除斥期間にかかるのか。
「休眠預金が一定期間を経て預金管理機構に移された後も、消滅時効にもかからないし、除斥期間にもかからない。預金保険機構は払い戻しに対応できる準備金(2019年から年間500億円)を保有しており、権利者の権利は従前通りに保護され、払い戻しに応じてもらえる」と武村氏。
安保関連法制ばかり注目される今国会だが、国会議員全員が安保に関与しているわけではない。95日間も大きく延長された国会だが、「かえっていろんな法案を通すことができる」と張り切る議員も多数存在する。そしてこのような地道な立法作業も、着々とすすめられている。
(文=安積明子/ジャーナリスト)
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