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東京ディズニーリゾート(「Wikipedia」より/Mekarabeam)
ディズニーR、“殿様商売”でも9割リピートの謎 裏に莫大なコスト&安売りできない宿命
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10910.html
2015.07.30 解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio Business Journal
長期の景気低迷による個人消費の低下や、娯楽の多様化の影響で、近年、経営悪化や閉園に追い込まれるレジャー施設が増えている。しかし、そんな時代でも入場者数を維持どころか増加させているのが、東京ディズニーリゾート(以下、TDR)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)だ。
USJの入場者数は、開園した2001年度の約1103万人から、14年度は約1270万人に増加している。TDRは、開園した1983年度の約993万人から、14年度には約3138万人(東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合計)にまで上昇している。
このような好成績の裏には、どういったマーケティングがあるのだろうか。立教大学教授・有馬賢治氏はこう分析する。
■TDR成功の秘訣は、情報量と高品質のサービス
「まずTDRにいえるのは、約90%ともいわれる驚異のリピーター率によって人気が支えられている、ということです。なぜそんなにリピーターが多いのかというと、ひとつ目に『過剰情報の提供』があります。敷地の広さやアトラクションの多さから、一度行っただけではディズニーの世界を味わいきれず、『再び来たい』という気持ちにさせているのです。何度か行って、すべてを回れたとしても、“隠れミッキー”の存在など、園内には小ネタ的要素が張り巡らされており、何回行っても飽きさせない演出がされています。マーケティング的に見ても『追い切れないほど、情報をあふれさせる』という手法はとても有効です」(有馬教授)
だからこそ、TDRには、決して安くない年間パスポートを所有するファンがたくさんいるのだろう。
「そして、もうひとつが『ハイレベルなサービスの徹底』です。キャストが非常に訓練されているだけでなく、目につきにくいアトラクションの細部にいたるまでディズニーの世界観がつくり込まれています。また、周囲の民家が目に入らないような設計の工夫や、商品の搬入は地下通路を使用するなど、夢の世界を実現するための演出が徹底しています。一点豪華主義的ではなく、どこを取っても、まるで老舗旅館のようなこだわりがあるのです。その一方、中学生だけでも訪れることができるような親しみやすさがあるのも、TDRの強みです。ディズニーというコンテンツがどの層から支持を得ているのか、という顧客をしっかりと把握した上での戦略でしょう」(同)
では逆に、そういった経営方針だからこそのデメリットはあるのだろうか?
「クオリティを維持するために、莫大なコストがかかる点です。その上、TDRはどんなことがあっても、商品やサービスの品質を下げる“安売り”ができない宿命を背負っています。この先、長期的に動員者数が落ち込むことがあると、立ち行かなくなる危険も少なからずはらんでいます。さらに、食事制限のある人以外の弁当の持参を禁止したり、権利関係に厳しかったり、夢の世界を守るために消費者に制約を課す体質も特徴的です。いわゆる殿様商売的な側面があり、これも経営が苦しくなった時にどう受け止められるのかは未知数です。それでも、開園以来入場者数を増やしているのは、そういった問題がささいに思えるほどの全体に目の行き届いた経営努力があるからでしょう」(同)
■ディズニーとは違うコンテンツ力で再生したUSJ
一方、USJも開園して数年で一時的に動員数が落ち込んだものの、現在は見事に持ち直している。
「ディズニーと違い、象徴的なキャラクターこそありませんが、ディズニーの『夢の世界』に対して、USJは『映画の世界』というコンセプトがあります。このコンテンツの力は大きいでしょう」(同)
USJは映画『ハリー・ポッター』シリーズをテーマにした新エリアが大盛況で、これらも動員数上昇に一役買っているようだ。
「ディズニーアニメよりも、ハリウッドなどの海外映画や『進撃の巨人』といった国内で話題のコンテンツのほうが、シリーズ化して世間に定着しやすい傾向があります。それらとうまくコラボレーションすることで、アトラクションのスクラップ・アンド・ビルド(事業や部門などで古いものを整理して新しいものをつくること)を比較的簡単に行うことができます。一時的に経営が傾いたとしても、ヒット映画が生まれればいくらでも立ち直るポテンシャルがあるのです。それが、ディズニーとの差別化ができている点です」(同)
すでに確固たるコンテンツがあるとはいえ、それをアトラクションとして忠実に再現することは簡単ではない。しかし、TDRもUSJも妥協しない“国づくり”が成功したことで、テーマパークとして見事に不動の人気を得ているといえそうだ。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)
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