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夏野剛氏(左)と堀江貴文氏(右)が、「働き方」について縦横無尽に語る!
夏野・ホリエモン、「東芝問題」をなで斬り!「WORK RULES!」刊行記念"働き方"対談<前編>
http://toyokeizai.net/articles/-/78646
2015年07月29日 東洋経済オンライン編集部
企業が生み出す製品やサービスだけでなく、企業の理念や文化・働き方まで注目されるようになった。節目の今、日本企業はどう変わっていくべきなのか。その1つの指針となる書籍が7月31日に発刊される。その書籍とは、グーグル社の人事トップ(上級副社長)であるラズロ・ボック氏が同社の人事労務制度や採用基準、働き方に関する文化、メンタリティに至るまで余すところなく著した『WORK RULES!』。世界20言語・地域で発売予定の、今年のビジネス書の話題作。
同書の刊行を記念して、7月22日にツタヤ トウキョウ ロッポンギで「クリエイティビティを生む、新しい『働き方』」をテーマにしたトークショーが開催された。登壇者は巨大IT企業の研究に取り組む夏野剛氏と、サロンやメルマガの運営など新しい働き方を実践している堀江貴文氏。モデレーターは東洋経済オンライン編集長の山田俊浩。トークショーの様子をリポートする。
■ある社長のブログより
山田:このトークショーは『WORK RULES!』の刊行記念イベントですが、夏野さんと堀江さんとで、本に限らずいろいろな話ができればと思います。まず今話題の東芝問題から話を始めようと思います。
東芝の田中社長は社員向けにブログを書いています。彼は社員とのコミュニケーションを大事にしていて、「みなさん、こんにちは!」から入るブログを毎日のように更新していました。
粉飾が明らかになった日のブログは、「みなさん、こんにちは! 会計処理の件で皆さんにもご心配をかけて申し訳ありません。第三者委員会に対して誠実な対応を徹底します。以前、地平アイこさん(アンドロイド)がイベントで浴衣姿であることに違和感を感じられたとのコメントがあった件ですが、状況を調べました。日本橋の三越の浴衣のイベントだったので浴衣を着ていたそうです。違和感を感じた方、申し訳ありません」。こんなことが書いてあります。
堀江:こういうのをあえて拾うセンスがいいですね。
山田:東芝は東洋経済がやっているCSR大賞では1位2位の常連ですし、非常に働きやすい職場として有名です。社長も、普通の会社以上に、社員とのコミュニケーションに力を入れていた。それでも、こういう問題が起きてしまう。働きやすさと会社の業績やコンプライアンスは、あまり関係がないということなのでしょうか。
夏野:東芝のような大所帯になると、社員のひとりひとりが自分のやっていることが業績に直結しているという意識がない。だから全然連動してないのです。同じ釜の飯を30年も食っているとこうなってしまう。能力も限定されて、もうここでしか生きていけないという人たちが社長の下にずらっと並んでいる。ここでクビになったら、あるいは、内部告発とかをして居づらくなったら、他で生きていけない。
この件でいろいろと海外のメディアから聞かれるんです。どうしてこんなことが起こって、理不尽な上司の要求を作業する部下がいるのか、って。海外から見るとそれが一番不思議なんだけど、そこでしか生きていけない人たちですから。堀江さんから見れば、彼らは全員逮捕されるべきですよね。
堀江:逮捕されると大変ですから……。市場がけっこう混乱するし。でも、1回きれいにしたほうがいいかもしれない。どうせ再上場できるでしょうから。
夏野:全然できますよ。白モノ家電は全然ダメだけど、重電は好調ですから。
堀江:ところで、夏野さんは今、何社の社外取締役をやっておられるのですか。
夏野:今7社を受けています。
堀江:社外取締役の人でも責任は大きいものですか?
夏野:めちゃめちゃ責任は大きい。社外取締役が株主代表訴訟の対象になる一番の標的ですから。
堀江:たとえば、東芝みたいなことをやっていたとしたら見つけられます?
夏野:ある程度の土地勘がある業界でないとわからない。たとえばIT業界だと、どの指標がどのくらい金額に換算されるっていう勘がある。ユーザ数の伸びに対してこういう収益になっていて、コストはこれぐらいになっている、みたいなのは気づくんです。「なんかおかしい、これ何やってんの?」って。
堀江:夏野さんが、東芝の取締役になればよいのでは?
夏野:なりたくない(笑)。あえて引き受けるとすれば、社外取締役という立場よりは、この会社を再生させたい。日本のメーカーの問題点って、自社の技術にこだわるというか、シーズベースなんです。お客さまが喜ぶからこんな製品をなんとかつくろうじゃなくて、うちの会社にはこんな技術があるからと。
■技術のオーナーシップとデザインの合体が重要
堀江:面白いのが、白モノ家電のバルミューダで、扇風機とか空気清浄機、最近はトースターとか。その空気清浄機を小米(シャオミ)がパクったって話題にもなっていましたね。バルミューダは優れたデザインで、トースターとか空気清浄機を再発明しているという意味では、ダイソンみたいな会社です。ダイソンは世界中に販売を広げていますが、バルミューダにはそういう雰囲気は全然ない。
夏野:上辺で頑張るとそうなっちゃうんです。ダイソンは、ジェームス・ダイソンさんがサイクロン掃除機の仕組みを考えた。だから、少なくとも5年は先行者利益がある。やっぱり技術開発は自社でやらないと。
堀江:そういう意味で言ったら、東芝の中でそういう新しいものを作れますか?
夏野:きっとあるはずです。
堀江:白モノだと三洋電機はハイアールに売って、けっこう良くなった。要は、経営者の問題でしょう。
夏野:今は、トップがひとりで営業する範囲が大きくなった。東芝の社長のブログで社長がメッセージを全社員に発信できるでしょう。あれがもう少しまともな考え方だったら影響力はけっこう大きいですよね。アンドロイドで浴衣がどうしたとか、のんきなことを言っている場合じゃない。
会議では自分ですべて説明するようにしたいって言ったら、もう役員みんながサーッてひいてしまう。自分で説明できないから。伊藤忠商事はそれやったそうですね。責任者が説明しろって言ったら、ほとんどが説明できない。だから、岡藤社長が代読させるルールをなくした。こんなことを毎日やればよいのでは。
■グローバルで大きくなるにはシフトチェンジが必要
堀江:それって、『WORK RULES!』の話にもつながりますね。
山田:そう思います。バルミューダもそうでしょうが、結局イノベーションを生むものとグローバルで大きくなるというのはシフトチェンジが必要ですから。
夏野:もうひとつ入れないといけないのは、バルミューダの場合は、技術を開発しているのではなく、「ガワ」で価値を出そうとしている。これは大事なことですが、もしバルミューダが空気清浄機の技術をシャープ並みに持っていたら? そうしたら、デザインと連動させた新しい機能を出せるはずです。
堀江:ユニクロの機能性下着みたいな例ですよね。東レが開発した新しい機能性の繊維製品とデザインをうまく融合させて。
山田:自社でやれないものは他者と組むっていう?
夏野:組んでも組まなくても買収してもいいんだけど、最終的にちゃんと技術のオーナーシップとデザインっていう付加価値を合体させないと利益率が低くてやっていられません。iPhoneも自社技術じゃないところがたくさんありますが、最終的にパッケージにすると付加価値でガーンと取れますから。
山田:何をやるのかという目的がしっかりしてれば、当然どういうチームを組んだらよいかっていうことにもなりますね。それが『WORK RULES!』にもつながる。
夏野:だから、やっぱり経営者が何を目的にしているかですね。スティーブ・ジョブスは「すごい携帯」が欲しかったのでしょうね。
■ライブドアでやっていたこととけっこう似ている
堀江:僕がこの本を読んで感じたのは、ライブドアのときにやっていたこととけっこう似ているということ。10年前にやっていたことが最近いろいろ言われています。たとえば、BYOD(Bring Your Own Device)とか。当時はそんなに注目されなかった。
山田:グーグルってどんな職場? というのがこの本にけっこう書かれています。感謝するときには社員同士がサンクスを送ろうとか、健康のためにフードコートにはオーガニックの野菜が常にあるとか。それと、顕示欲をたしなめる文化として、廃棄されたものを拾って、あんまり贅沢しちゃいけないという気分をつくる。こういったことはライブドアでもありましたか?
堀江:顕示欲をたしなめる文化でライブドアのときにやっていたのは、机はいつもヤフーのお古でした。当時のヤフーさんってけっこうオフィスが変わるんですよ。12〜13年前は青山にあって、その後に六本木ヒルズ、そしてミッドタウンに移った。ミッドタウンに引っ越されるときにちょうどライブドアが入ったので、ヤフーさんのオフィス用品を残してもらいました。
夏野:居抜き物件みたいですね。
■新任アドバイザーの2人が考えるJリーグ改革
山田:さっき言っていた、組織をつくるなら目的がすごく大事だということでいくと、昨日(7月21日)のニュースでお2人はJリーグのアドバイザーになってJリーグをどうするか、というのはどうですか。
夏野:といっても、契約を結んでいないよね。
堀江:僕も契約は結んでいなくて、口約束。
山田:ツイッターとかでは「素人がこのやろう!」みたいな書き込みが盛んですが。
夏野:確かに素人ですが、私は以前にヴィッセル神戸の取締役をやっていたので、実は何も知らないわけじゃない。もしJリーグを、サッカーがずっと好きなサッカーファンとサッカープレイヤーだけで運営していったら、その人たちしかお客さんはいなくなるでしょう。サッカー好きだからいい仕事ができるのかと言えば、違うだろうと思います。
堀江:僕もそう思う。サッカーのスタジアムって、Jリーグ100年構想とかいわれて地方に行ったおかげで、地方に多くて集客に苦労している。野球に対するライバル意識みたいなのもあって、東京都心のスタジアムやチームがない。地方だけを振興しているみたいな感じ。でも、やっぱり都心にチームは必要だし、都心にスタジアムがないと集客できないという問題があると思います。
それともうひとつ、Jリーグはサッカー好きな人しか見に来ない。ユニークユーザが少ないらしいのです。同じ人が何回もスタジアムに来ていて、新規ユーザが全然来ない。これは他のプロスポーツもそうでしょうが。競技だけで集客をしようとしていること自体がかなり難しい。
堀江:僕はたまに神宮球場に行きます。試合を見に行くよりは、暑い夜にフラッと行って野球でも見ながらビールでも飲むかっていう使い方。そういう人ってけっこう多いと思う。なのに、神宮はトイレが和式ばかりで、女子が入りにくい。もう完全に顧客サービスとか一切考えていないみたいなところがある。でも、人は来ている。そういうことですよ。
夏野:僕が最も批判されたのは、チーム数が多すぎて選手の名前が覚えられないって言ったこと。そうしたら、地方を馬鹿にするのか、って返された。チームが今、J1なのかJ2なのか、選手も頻繁に入れ替わるから、どこに誰がいるのかがわからないでしょう。
堀江:そこはある程度、特別扱いをするべき。資金配分して、プレミアリーグみたいなのを作るべきだと思うし。都心のビッグクラブが、ある程度トップリーグに残っている、経営的にはけっこうきついですよね。
夏野:全体的に盛り上がるためには、サッカーのライバルは誰なのかということ。ライバルは、野球とか他のスポーツではなく時間ですよ。今すべての娯楽が時間の取り合いで、もしかしたらパズドラがライバルかもしれない。スマホゲームよりもサッカーを見ていたほうが1時間半は楽しいって思えるようにしないと。
山田:しかもグローバルに。世界のJリーグという形でやらないといけませんよね。
夏野:いや、僕はあんまりそれを意識しすぎるのはどうかなと思う。今回は女子がワールドカップで準優勝したけれど、もう十分にグローバルでしょう。
堀江:ニワトリが先かタマゴが先かの話ですが、サッカー選手の市場って完全にグローバルの市場原理主義で動いているので、要はお金さえ払えば選手を獲れる。しかも、ドバイとか上海とか北京とかのチームと同じ年俸で東京が有力選手を獲ろうとすると、みんなが選んでくれる。
夏野:それが鹿島じゃ嫌だって。
堀江:そういう本音は言わないの(笑)。J1の有力チームを見ていたら、地方のほうが多かったりしますね。やっぱり集客やマーケティングを考えると、ちょっときつい。理念としてはうまくいっているでしょうがジリ貧でしょう。
夏野:まだ契約結んでないのに、ここでアドバイザーの会議をやっているようなものですね(笑)。
(構成:砂流 恵介、撮影:今 祥雄)
夏野 剛(なつの・たけし)慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、2008年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)SNS株式会社ファウンダー。1972年福岡県生まれ。自身が手掛けるロケットエンジン開発のほか、スマホアプリ「TERIYAKI」「焼肉部」「755」のプロデュースなど幅広く活躍。HORIEMON.COMの人気コーナー「WITH」では『テクノロジーが世界を変える』をテーマに、各界のイノベーター達に堀江自らがインタビュアーとなり取材したものを連載中。有料メルマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」の読者は1万数千人の規模に。2014年8月には会員制のコミュニケーションサロン「堀江貴文サロン」をスタート。近著に『我が闘争』『ゼロ』など。
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