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高まるチャイナリスクに日本企業は身構えよ
http://diamond.jp/articles/-/75604
2015年7月28日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■中国でのビジネスで高まる二つのリスク
最近、中国経済はかつての勢いを失いつつある。それに伴い、わが国企業が中国でビジネスを展開する場合のリスク=チャイナリスクが高まっている。チャイナリスクは大きく分けて二つの要素を考えると分かりやすい。
一つは中国経済全体の先行きや政治情勢の変化、一般的に言われるカントリーリスクだ。今年4〜6月期のGDP成長率は7%と発表されたものの、経済専門家の中では「実体経済は数字よりもかなり悪化している」との見方が多い。
現在、中国政府は従来の輸出と設備投資に大きく依存する経済構造を、個人消費中心型の安定した構造=“新常態”へと移行することを目指しているものの、世界第2位の規模を誇る大国経済の基本的な体質を変えるのは容易ではない。
また、中国経済は国内の不動産バブルやシャドウバンキングなどの問題を抱えている。経済成長率が鈍化する中で、政府がそれらの問題と向き合うのは口で言うほど簡単なことではない。経済の減速が鮮明化すると、人々の共産党政権に対する不満も高まるだろう。
もう一つは日常の業務を行う上でのリスク、いわゆるオペレーショナルリスクだ。具体的には、従業員などの不正行為などが考えられる。
海外で事業を行う場合、わが国で通用していたビジネス常識が通用しないことが多い。
特に中国では、経営を任せた現地の人材が会計処理をごまかして私腹を肥やしたり、従業員が不正行為を働いて会社の金を持ち逃げしたりといったことをよく耳にする。
しかも、そうした事態が発覚しても、当の本人はほとんど罪の意識を持っていないケースもあるという。そうしたオペレーショナルリスクは、日本人の感覚では理解の範囲を超えることが多く、中国に進出した企業にとって大きな心労になっている。
■高成長の時期は終焉 国民の不満が高まる懸念
ここへ来て、中国経済の減速が鮮明化している。それは、今年の全国人民代表会議の席で李克強首相が、景気の下振れリスクについて強い懸念を表明したことからも分かる。株価の乱高下と、それに対する政府の強引な株価対策も気になる。
元々、中国経済は様々な問題点を抱えている。その一つは人口構成の歪みだ。今後は一人っ子政策の影響もあり、少子高齢化が急速に進むと見られる。そうした状況下、社会保障制度が未成熟な中国では、これから充分な経済的富の蓄積を持たずに定年を迎える人口が大きく増加する。
人口構成の歪みから、働き手である生産年齢人口の割合は低下する。働き手の割合が減って、高齢者層の消費が盛り上がらないと、経済の実力=潜在成長率は大きく低下する。中国経済の高成長の時期は終焉したと言っても過言ではないかもしれない。
そうした状況が続くと、国民の共産党政権に対する不満が高まり、現在の一党独裁の体制維持が難しくなることも考えられる。そうしたリスクが顕在化すると、経済だけに留まらず、政治や安全保障などの面でも世界の不安定要素になることが懸念される。
そうなると、中国社会全体が一時的に混乱に陥る可能性が高い。治安が悪化したり、反政府活動などによって経済活動が阻害される懸念も高まる。そうした状況では、中国で業務活動を行うにおいて、リスクに見合うリターンを取ることがかなり難しくなる。
■一部上場企業を破綻に追い込んだオペレーショナルリスク
「中国ビジネスは人の管理だ!」。同国でのビジネス経験の長い経営者の指摘だ。彼によると、少しでも目を離すと、経理担当者が経費をくすねたり、営業担当者が売り上げをごまかしたりする。
あるいは、信用できると考えて経営を任せた現地のビジネスパートナーが、会社の売り上げの一部を自分の口座に入れる。そうした行為は日常茶飯事で、「人を見たら泥棒と思え」という喩えの意味がよく分かったという。
福井市に本社を置く江守グループホールディングスという会社があった。1906年に江守薬店として創業され、合成樹脂や化学品を扱う東証一部上場企業だった。大きな特徴は、中国でのビジネス展開が進んでいたことだ。中国経済の発展に伴い、同社の事業も堅調に推移していた。
ところが今年2月、監査法人から中国の連結子会社について不正会計の疑いが指摘された。同社が調査したところ、中国側の責任者が、自分の親族が経営する企業を使って大規模な架空取引を行っていたことが発覚した。
実際には、親族企業から商品を仕入れた格好で代金を払う一方、同じ親族企業への売り上げを未収金として回収していなかった。その架空取引によって、親族企業に資金を移していたのである。しかも、その金額が大きかった。
今年3月、江守グループは462億円余りの貸倒引当金の計上を余儀なくされた。最終的に、同社グループは民事再生法の適用を申請し、事実上の破綻に追い込まれた。
これは必ずしも特別なケースではない。中国ビジネスのベテランにヒアリングすると、「多かれ少なかれ、同国に進出したわが国企業はそうした経験をしている」という。
■不安定化する中国の社会 リスクに見合うリターンが取れるか
経済成長が進み給与水準が上昇すると、生産拠点としての魅力は低下する。そのため、繊維産業など付加価値の低い分野での優位性は薄れることになるだろう。量販型のアパレル分野の企業が、生産拠点を相次いで中国からミャンマーやバングラデシュに移し始めている。
一方、13億人の人口を抱える中国では、経済成長に伴って人々の所得が上昇するとその分だけ購買力も上がる。消費市場として大きなビジネスチャンスがあることは間違いない。わが国企業の中国展開については、今後、生産拠点展開よりも消費者向けの販売網やサービス関連の展開が中心になるだろう。
問題は、リスクに見合ったリターンが取れるか否かだ。業種やビジネスモデルによって異なるものの、これからチャイナリスクが高まることを頭に入れておくべきだ。
中国経済は産業構造や人口構成の制約から、リーマンショックを境に高度成長期から安定成長期に向かいつつある。当面、かつてのような高成長を望むことは困難だ。
中国政府が描いている構図は、鉄鋼・セメントなどの過剰生産能力を新興国向けの輸出に振り向けることだ。AIIBを作って新興国に資金を貸し付け、中国製品を売り込んでインフラ投資を援助することを目指す。
それと同時に、国内の消費を活性化して安定した成長を維持することを模索する。いわゆる“新常態”だ。その構想が上手くワークすると、中国社会は安定した経済基盤を基に穏当な時期を過ごせるかもしれない。
しかし経済成長率の低下は、若者の就業率の低下や貧富の差拡大などの効果をもたらしやすい。それらの要素は、国民の不満を増幅する可能性が高い。人々の不満が蓄積すると、その矛先は政権に向かうだろう。
政権基盤の弱体化は社会不安につながることが想定される。多民族を抱え、それでなくても不安定要素の多い中国の社会がさらに浮き足立つ可能性が高い。同国の友人の一人は、「家族をカナダに移住させた」と言っていた。
社会的な不安定性が増幅すると、政治・経済にもマイナスの影響が出ることは避けられない。そうなると、中国のカントリーリスク、オペレーショナルリスクは一段と高まるだろう。そのリスクに見合ったリターンが取れるか否か、冷静に見極めることが必要だ。
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