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[大機小機]税収が語る経済実相
先日、2014年度の国の決算が公表された。そこで見る税収額は、経済の実相を反映した極めて興味深いものである。
まずは決算の概要から見てみよう。税収額は54兆円と前年度の47兆円から7兆円増加した。消費税の8%への引き上げに伴う増収が4.9兆円なので、それを除く増収は2.1兆円だ。その内訳は所得税が1.3兆円、法人税が0.5兆円、消費税が0.3兆円となっている。ここからいくつか気付くことがある。
第1に消費税率の8%への引き上げ時、「上げ潮派」と呼ばれるエコノミストを中心に「消費税率の引き上げは法人税や所得税の減収をもたらし、税収全体では増収にならない」と論陣を張った。それは全くの間違いであった。
第2に所得税収の伸びの1.3兆円は、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化に伴う配当の増加が主因だ。給与所得による税収の伸びは0.5兆円程度にとどまり、アベノミクスが力強い賃金増に結びついているとは言い難い。
第3に法人税収の増加は企業業績の伸びに比べて少ない。法人税収が大きく伸びると期待する向きがあったが、そうはならなかった。原因の一つは外国子会社が日本に還流させる配当の大半を非課税とした09年度の税制改正にある。多くの日本企業は事業を海外にシフトしている。子会社配当は親会社の利益には反映されるが、直接、税収増には結びつきにくい。
繰越欠損金が減少して法人税収が大きく伸びるという見方もあった。決算を見る限り多くの企業で欠損金解消は一段落し、これによる税収の劇的な伸びは期待できなくなっている。
いずれにしても消費増税と経済成長を反映して税収の大幅な増加がもたらされた。大変喜ばしいことだが、今後の税収を占う際の教訓も読み取れる。
15年度以降の税収構造は弾性値が1の消費税が所得税や法人税を抜いて最大項目になる。賃金の大幅な増加や企業の欠損金減少による法人税収の大きな伸びも期待できない。
22日に公表された中長期財政試算(経済再生ケース)では大幅な自然増収が見込まれているが、これは確たる根拠に乏しい。税収を予測するには経済構造の変化を反映した冷静な分析が必要だ。
(ミスト)
[日経新聞7月24日朝刊P.17]
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