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上流と下流で健康格差 下流老人は死亡率3倍にうつは上流老人の5倍〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150727-00000002-sasahi-soci
週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋
貧困に苦しむ下流老人が問題になっている。貧困は健康をもむしばむのだ。
高齢者を4年間追跡調査した2012年の研究では、生活保護を受けている、いわば下流老人は、年収250万円以上の上流老人と比べて最大で3.5倍死亡率が高かった。がんになるリスクも下流老人のほうが高いという調査もある。また、所得が低い人ほど、うつ状態にも陥りやすい。
高齢者約3万3千人を対象にした調査では65〜69歳では、最も低所得のグループは最も高所得のグループと比べて平均で5倍、男性で6.9倍、女性で4.1倍うつ状態の人が多かった。
横浜市内の住宅街。Bさん(53歳、男性)は、生まれたときからここで暮らす。
「こんな日は朝からひどい頭痛がします。強い薬を処方されていますが、飲みなれるとよくないので控えるようにしています」
Bさんはうつ状態などの精神障害のため、長く就労していない。
育った家庭は家計が苦しく、中学卒業後、近所の部品工場に就職した。だが人間関係などから職場に行きづらくなり、10日ほどで離職。父親が働く製材所に勤務したこともあったが、1カ月働いては半年休むという生活だった。21歳のとき、精神疾患と診断された。
同居して家計を支えていた2歳年下の弟が8年前に病気になると、生活保護を受給する生活となった。
生活はつましい。朝食はコーンフレークと牛乳。昼食は菓子パンとペットボトルの紅茶。ガス代の節約のためだ。夕食はひやむぎ。野菜を食べたいがお金がかかるので、野菜ジュースで代用している。
「以前はアイドルのコンサートへ行くのが生きがいでしたが、今は、食べて寝るだけの生活です。気晴らしもなく憂うつになります。転居にも精神科の主治医の判断が必要で、主治医に人生を握られているように感じます」
生活保護費の支給は月初めなので、月末になると金欠の不安からうつ状態になる。弟が今年1月に病死すると独居となった。近所づきあいはない。
「近所の人は自分の存在も知らないのではないでしょうか。月に2回作業所に通うほかは、ほとんど人と話しません」
全国の高齢者を対象に、健康と社会環境の関連を調べる大規模調査を率いる千葉大学の近藤克則教授は説明する。
「所得や学歴が低い人ほど健康状態が悪いという格差を『健康格差』と言います。以前は日本では格差は小さいと思われていましたが、調査をしてみると、明らかな健康格差の実態がわかってきました」
寿命やうつ状態のほか、下流老人のほうが、転倒やケガをしやすい、歯がほとんどない人が多い、慢性腎臓病になりやすい、といった健康格差の実態が明らかになってきた。
近藤教授は解説する。
「民間病院で臨床医として脳卒中リハビリテーションを担当していたときに、生活保護を受けている患者の割合が、全国平均よりも患者において高いことに気付きました。また、生活保護を受けている患者ほど、退院して自宅へ戻るのが難しかったのです」
(本誌・長倉克枝)
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