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アジアや新興国のマクロ経済、政治情勢を分析(C)日刊ゲンダイ
「年内は不安定な動き」 エコノミストが見た中国株暴落の行方
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162016
2015年7月27日 日刊ゲンダイ
中国株のバブル崩壊は日本市場を急襲した。中国政府のなりふり構わぬPKO(株価維持策)によって、株価は辛うじて持ちこたえたが、先行きは不透明だ。世界2位の経済大国にのし上がった中国の迷走は、日本経済を直撃しかねない。専門家は中国経済の行方をどう見ているのか。第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏に聞いた。
――中国株の主要指数である上海総合指数は、ほぼ1カ月間で約3割も下落しました。
年明け以降、中国景気は明らかに減速していたと思います。景気が減速しているのに企業業績が良くなるとは考えにくい。株価だけが独歩高となり、実体経済を反映していなかった。上海総合指数は6月のピーク時に約7年ぶりとなる5166ポイントを付けましたが、あっという間に3500ポイント近辺まで下落した。バブルは崩壊したといえるでしょう。
――暴落を食い止めるため、政府は大株主の株売却を禁止するなど市場原理を無視した手段に打って出ました。これで落ち着きますか。
ここからの大崩れは、さすがになくなったとみています。ただ、不安定であることに変わりはありません。中国は株式市場と実体経済の連動性が必ずしも高くないため、暴落の影響は軽微ととらえる向きも少なくありませんが、下げ止まらなければシャドーバンキングなどに影響が飛び火し、実体経済に大きな影響が出た可能性は否定できなかったとみています。
――暴落で大損失を被ったのはどんな投資家でしょう。
中国株の売買は約8割が個人投資家ですが、中間層から富裕層は高いレバレッジをかけていない人が多いので、暴落の被害をそれほど受けていないでしょう。問題は、なけなしの資金や借金で信用取引をし、手元資金の何倍も投資している人たちです。株価が現状からさらに下がると、こうした投資家の不満は中国政府や共産党に向かいます。それを阻止するため、政府はさまざまな手を打った。こうしたことから、今後も荒っぽい値動きは続くでしょうが、大崩れは起きないと思っています。
■習近平は国際的な信用を失った
――上海総合指数は昨年11月から約半年でほぼ倍になりました。そこからの急落ですが、株高の原動力は何だったのでしょう。
中国は年金や医療費など、社会保障制度が整備されていない点が挙げられます。基本的に海外投資が禁じられているので、蓄財するには銀行預金、不動産、株式の3つしかありません。預金は低金利だし、不動産は投資が抑制された経緯がある。選択肢の中では株が一番だった。その上、国営メディアは株高をあおり、中国人の投資意欲は熱狂ともいえるほど高まったのです。
口座数は上海市場だけで1億を超えています。全体では2億〜3億口座といわれますから、12、13人に1人が株式投資をしている計算になります。ただ、これまでは政府のやりたいように市場が動いていたと思いますが、今回の動きを見ていると、市場そのものの力が強くなってきたように感じます。
――習近平政権は新常態(ニューノーマル)という経済改革で「市場のことは市場に任せる」を掲げていましたが、これは崩れ去った。
習政権は経済成長の原動力を公共投資から、個人消費へと変えていこうとしていました。給与所得が高まることで個人消費が増えるのが理想ですが、急に所得を増やすと生産コストが上昇し、国の体力が奪われてしまいます。そこで資産を増やす方向へ持っていった。それが株高誘導につながったのだと思います。つまり資産効果による消費押し上げを狙ったのです。ところが株価暴落によって、シナリオは狂った。
さらに習政権が主張していた「市場のことは市場に任せる」と逆行する政策を次々と行った。習政権は国際的な信用を失ったともいえます。
■中国景気が回復しても、その恩恵にはあずかれない
――この混乱はいつまで続きますか。
米国の利上げ時期も絡むので、年内は不安定な動きになりそうです。米利上げは中国市場に直接影響を与えませんが、米利上げが実施されれば市場は動揺し、投資マネーは新興国から米国に向かいます。その流れの中で中国の個人投資家がどう動くか。現金化したほうが得策と判断する投資家が急増したら、再び暴落が起きかねません。ここがポイントでしょう。
――中国経済全般への影響も無視できません。中国政府は4−6月期のGDPを7%成長と公表しましたが、海外メディアからは信憑性を疑う声が続出しました。
7%成長を達成するという意気込みを内外に示したのでしょう。GDPの内訳を見ると、成長の牽引役が2次産業(製造業)から3次産業(サービス業)に移っているのが分かります。サービス業が強いということは習政権の掲げる「新常態」が進展したことになりますが、一方で政府は4−6月期が好調だった理由のひとつはインフラ投資が進んだためと言っています。インフラ投資は旧来型の経済成長です。「新常態」は道半ばだということを図らずも露呈してしまった。不透明感は残ったままです。
――気になるのは、中国経済の減速による日本経済への影響です。
日本の輸出の約20%は中国向けです。ここを意識しなければなりません。これまでのように中国頼みの景気回復を思い描くのは楽観しすぎだと認識したほうがいいでしょう。
実は心配な点があります。中国景気が好転しても、日本の中国向け輸出が回復するとは限らないからです。というのは、中国国内でセメントや鉄鋼などがかなり余っているといいます。余った部材は消費しないといけない。中国経済が成長し、経済指標が上向いたとしても、余ったセメントや鉄鋼が使われるので、中国の輸入量は増加しません。日本やアジア諸国は、中国景気が回復してもその恩恵にあずかれない状況が生まれるのです。中国向け輸出の伸び悩みは、日本の雇用を直撃する危険性があります。日本経済にはダメージが大きく、この点は念頭に置いておく必要があるでしょう。
――消費市場としての中国も見直すべきですか。
中国が今後も大きな市場であるのは間違いありません。ただ、過度に依存するリスクを意識すべきでしょう。日本企業の多くは、どちらかというと中間層や富裕層をターゲットにして、日本ブランドの高級品を販売しています。富裕層は今のところ、それほど打撃を受けていないので、中国景気が失速しても極端に落ち込むことはないでしょう。ただし、これまでのように過度な期待を持つと判断を誤ります。
■中国リスクは経済再生シナリオを崩す威力を秘めている
――「爆買い」が消えるという流通関係者もいます。何しろ、中国人の訪日客は1人当たり約38万円の買い物をして帰国します。
多少の影響はあるでしょうが、基本的に爆買いをする中国人は富裕層です。中国株は暴落したとはいえ、現在も昨年に比べ1・5倍程度の水準にあります。富裕層は十分にキャピタルゲイン(株価上昇による利益)を得ています。しかも訪日の主たる目的は買い物なので、日本に来たら必ず爆買いをします。もっとも中国株が下げ止まらなくなったら、影響は少なからず出てくるでしょう。それに、ここ2年間の中国人訪日客数は異常なほど多かった(昨年は135%増)。通常の伸びに戻ると考えればいいのです。
――アベノミクスへの影響は?
中国発のリスクは考えなければなりません。アベノミクスそのものは速度が遅くなっていますし、中国リスクは経済再生シナリオを崩す威力を秘めています。中国経済が弱くなると、資源価格などに影響が出てきますし、アジア全体の経済もおかしくなります。世界経済の火ダネだけに、注意深く見ていく必要はあります。
▽にしはま・とおる 1977年生まれ。2001年3月、一橋大経済学部を卒業後、国際協力銀行(JBIC)に入行。ODA部門やアジア向け円借款の案件形成・審査・監理業務などを担当。08年1月、第一生命経済研究所に転じ、中国をはじめアジアや新興国のマクロ経済、政治情勢を分析。
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