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中国の粗鋼生産は34年ぶりに前年割れ。原料の鉄鉱石価格の上値は重そうだ。(写真:wonderland/PIXTA)
鉄鉱石の価格暴落によって次に起きること 需要減退の状況でも供給側は増産を止めず
http://toyokeizai.net/articles/-/78018
2015年07月26日 松浦 大 :東洋経済 編集局記者
鉄の原料となる鉄鉱石の価格下落に歯止めがかからない。鉄鉱石は石油や銅と違って先物市場がない。最大の購入者である中国の需要家と資源メジャー各社が交渉して決定された価格が、グローバルな指標となる。
指標のひとつである中国・天津港の輸入価格は、2011年2月に1トン当たり187ドルの高値をつけた。金融危機後の2008〜2009年にかけて、中国は4兆元(当時のレートで約57兆円)にも上る景気対策を実施。中国の資源“爆食"を見込んだ投機資金が石油などのコモディティに流入し、鉄鉱石の価格も高騰した。
中国経済はその後いったん息切れし、鉄鉱石価格は一時100ドルを割り込んだ。が、中国政府が12年秋に景気対策を実施したことで、道路などのインフラ建設で鉄鋼の需要が拡大。一方で、鉄鉱石の主要産地である豪州が洪水に見舞われて供給が滞ったこともあり、2013年1〜2月に価格は150ドル台まで持ち直した。
■供給側は増産やめず
その後、鉄鉱石価格は再び下落に転じた。中国の粗鋼生産量は2000年の約1億トンから2013年にかけて8.2億トンまで急拡大してきたが、潜在成長力の低下や世界的な景気減速で、2014年の生産は横ばいにとどまった。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は、「需要拡大を見越して増産していた鉄鉱石が余る見通しになり、2013年からいち早く価格下落が始まった」と言う。
2015年は8.1億トン弱と、実に34年ぶりに前年を下回ると、中国の業界団体は予測している。それでも鉄鉱石を供給する側の増産が続くことが価格下落に拍車をかける。鉄鉱石の生産はヴァーレ(ブラジル)、BHPビリトン(豪州)、リオティント(豪州)の3社で6割のシェアを握る。最大手のヴァーレは2014年に鉄鉱石を3.3億トンと前年比で7%増産。リオティントも11%増やした。
その結果、需給バランスが崩れ、価格も今年6月時点で62ドルまで下落。2011年のピークから4年で3分の1の水準へ暴落した。
各社が鉄鉱石価格の下落を覚悟のうえで増産を続けるのは、シェアを拡大して生産性の低い業界下位を駆逐するため。寡占化を進めることで、将来的に価格支配力を強めようという狙いがある。
■将来の安定調達に不安
日本の大手鉄鋼メーカーもこうした動きに困惑ぎみだ。ある購買担当の役員は「これ以上、供給側の寡占化が進むと安定調達に支障を来す」と表情は冴えない。足元の鉄鉱石価格の下落は原価低減につながるが、長期的には不利な状況に追い込まれる可能性があるからだ。
今後の価格見通しについて、今年5月時点でIMF(国際通貨基金)は、2016年まで50ドルを下回る展開が続くと予想している。新村氏は、「中国は今後、公共投資などの景気対策を講じてくる。そうすると2015年下期から2016年にかけて鉄鉱石の価格はやや戻すだろう」と見ている。ただ、かつての水準からすれば停滞感は否めない。
(「週刊東洋経済」2015年7月25日号<21日発売>「価格を読む」を転載)
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