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絶望のソニー、その惨状 平井社長への不信充満、穴だらけの成長戦略に酷評相次ぐ
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10851.html
2015.07.25 文=田沢良彦/経済ジャーナリスト Business Journal
ソニーが「資産切り売り」と酷評されたリストラの終了を宣言、成長への舵を切った。だが同社株主や株式市場関係者の間では、それを評価する声は少ない。逆に「リストラは、まだ終わっていない。新しく打ち出した成長戦略も穴だらけ」(市場関係者)という声が多い。6月23日に開催された株主総会でも、成長戦略をめぐって経営陣と株主の溝が明らかになるなど、同社が示した成長シナリオは批判にさらされた。
果たしてソニーは、本当に復活できるのか――。
■株主と経営陣の溝
株主総会で平井一夫社長は、中期経営計画(2012-14年度)の目標が未達となったことを冒頭で陳謝-。次いでパソコン事業の撤退、テレビ事業の分社化、本社・販売会社のリストラなど一連の構造改革の成果に触れ、「モバイル・コミュニケーション分野(スマートフォン事業)以外の課題はすべて解決した」と述べ、16年3月期の純損益が3期ぶりに黒字(1400億円)に転換するとの業績予想に自信を示した。
その上で2月18日に発表した新しい中期経営計画(15-17年度)の基本方針に掲げた「収益性重視の経営、各事業部門の自立と株主視点重視の経営、各事業の位置付けの明確化」の中身を説明。「前中計のテーマは『変革』だったが、新中計のテーマは『利益創出と成長に向けた投資』になる」と、「平井改革」が新ステージに移ったことを強調した。
要するに「従来のエレクトロニクス事業に依存したビジネスモデルから、電子部品、ゲーム、映画・音楽、金融(生保)などで収益を稼ぐ『脱エレキ』のビジネスモデルに転換する」(証券アナリスト)というものだった。
平井氏のこの説明に対して、総会に出席した「ソニーファン」といわれる株主の多くから「ソニーの固有技術を、なぜ利益創出につなげようとしないのか」と、不満を示す声が相次いだ。また、経営陣への質問では、同社OB株主が平井社長に過去10年間の敗因をただす次のような場面もあった。
「私はかつてソニーの中間管理職だった。今の惨状は、まさに今昔の感がする。この10年間でソニーは、なぜここまで凋落したのか? 平井社長の説明を聞きたい」
これに対して平井氏は「私たちも社内で、この問題を議論してきた。コスト、市場環境の変化など、さまざまな要因がある。だが、確実にいえるのは、海外の競合メーカーは為替の面でのコスト競争優位を背景に、積極的な価格で商品を提供してきた。その中で当社も価格とスペックで競争をしようとしすぎた。それが私の分析だ」と従来の持論を披露。続けて、「本来のソニーは手触りや意外性などがスペックに付加価値をもたらす、感性の高い商品を提供してきた。今後も、そうした感性価値のある商品を提供してゆく必要がある」と付け加えた。
新中計の基本方針に関しても、OB株主から「ソニーは経営数値目標に『ROE(株主資本利益率)10%以上』を掲げているが、例えばプレイステーションはROEを追求したから開発できたのか。ROE追求はアナリスト受けを狙った作文ではないのか」と辛辣な質問が浴びせられた。この質問は、短期的な利益追求により長期的な技術開発がなおざりにされることへの懸念だった。ソニーは長期的な開発投資を怠り、テレビ、パソコンなどのエレキ事業衰退を招いたとされているからだ。
これに対して、吉田憲一郎副社長兼CFO(最高財務責任者)は、「ROEは経営の目的ではない。経営の目的は、あくまでも商品価値の提供にある。ROEは経営の目標数値であり、経営の規律だ。短期的な利益追求指標ではない」と、新中計の経営数値目標への理解を求めた。
ソニーが新中計の成長領域としたのは、デバイス、ゲーム・ネットワーク、映画・音楽の3分野。テレビ、スマホなどの消費者向けエレキ事業は「リスクコントロール領域」に位置付け、事業リスク低減を最優先にしている。そのため、「平井社長に消費者向けエレキ事業への投資意欲はない。今は事業売却のチャンスを探っているだけ」(証券アナリスト)との見方も強い。
図らずも株主総会では、エレキ事業に「ソニーらしさ」や「ソニー復活のシンボル」を期待するOB株主やソニーファン株主と、経営陣との溝の深さがあらわれたといえよう。
■丼勘定
昨秋開かれた新中計策定の経営企画会議で、吉田氏は「経営の規律を徹底しなければならない」と主張したという。13年12月に子会社のソネットからソニー本体に復帰した吉田氏は、かねてから「ソニーの丼勘定経営に危機感を抱いていた」(同社関係者)
その典型が事業管理だった。エレキ事業の売上高はピークだった07年度の約6兆円から13年度は約3兆円に減っているのに、13年度の同事業管理費は約1500億円で、07年度よりも増えている。これが、収益低下要因にもなっている。
平井体制の下で、責任も丼勘定になっていた。14年5月の取締役会で、平井氏は「13年度のエレキ事業の営業赤字拡大の責任を取らなければならない」と、エレキ事業に関わる本社と子会社の役員約40名全員の賞与返上を提案した。この時、吉田氏だけが「一口にエレキ事業が赤字といっても、利益を上げている部門もある。その部門の役員に赤字部門の役員と同じ責任を取らせるのはおかしい」と反対。ちなみに同提案は賛成多数で決議された。
本体に復帰した後の吉田氏は、「経営再建の鍵は規律徹底にある。責任の所在が曖昧な今の丼勘定経営では、どんな再建策も絵に描いた餅になってしまう」(ソニー関係者)と確信したようだ。
■誤解
この規律徹底策が、新中計の「新しい組織及び人事の体制」に盛り込まれた「分社化推進」にほかならない。新中計ではその理由に「結果責任・説明責任の明確化」「持続的な利益創出を念頭に置いた経営」「意思決定の迅速化と事業競争力強化」の3つを挙げている。
だが、この急激な経営方針変更は社員の誤解を招いた。
例えば、2月18日の新中計発表の記者会見では、「冗舌で、しばしば真意がわからない話し方をする」(ソニー関係者)といわれる平井社長が、分社化推進の狙いについて「権限の委譲と責任の明確化」という大木の部分を強調せず、「ソニー本体に残る事業も、これから順次分社化する」「小さな本社でグループ経営戦略のスピードを上げる」など末木の部分も冗舌に語ったため、「分社化の真の狙いは、赤字事業売却の意思決定を迅速化するためだ」(会見に出席した証券アナリスト)と解釈され、その文脈で報道するメディアが少なくなかった。
このため、平井氏の元には社員から分社化反対のメールが殺到。その後、ソニーが設定したメディア各社合同のグループインタビューで「分社化は、赤字事業の売却や撤退を意図したものではない」と釈明しなければならなかった。
平井氏は「分社化で権限委譲と責任の明確化を進め、経営再建を軌道に乗せる」と言う。しかし社員は「今度は赤字事業切り売りが本格化する」と、経営陣と真逆の不安を抱いている。ソニー関係者は「新中計発表以降、社内では経営陣と社員の対立も深刻化している」と打ち明ける。
■求心力の低下
では、ソニーが新中計で成長領域に位置付けたデバイス、ゲーム・ネットワーク、映画・音楽の3分野の成長実現性は、どれほどあるのだろうか。
証券アナリストは「一番の懸念は、収益成長の持続性に関する保証が何もないことだ」と指摘、次のような不安を口にする。
リストラに成功した家電大手は、いずれも消費者向け事業の縮小で復活してきた。例えば、パナソニックは車載電子機器・部品や住宅設備、日立製作所も社会インフラと事業者向け事業を柱に再成長の道をたどっている。ところがソニーは「消費者向けの脱エレキ事業」を唱えているものの、勝算があるわけではない。脱エレキに代わる事業が育っていないからだ。
そもそも、成長領域に位置付けた3事業も、本質的には消費者向け事業と変わらない。デバイスの大半は、デジタルカメラやスマホ向けの画像センサ。デジカメ・スマホ市場は成熟しているので、デバイスがいつまで成長できるかわからない。車載向け、医療機器向けなど事業者向け画像センサに強いわけではない。ゲームや映画も消費者向けのエンタメ事業なので、水ものゆえにヒットするかどうかは予測が難しい。前出アナリストは、「成長シナリオを描いた3事業は、いずれも『やってみなければわからない』危うさがつきまとう」とため息をつく。
ソニーは14年度までの5年間に4回も最終赤字に転落するなど、業績低迷が続いた。その間も業績の下方修正を繰り返し、株式市場の信頼を失っている。4月30日に発表した15年3月期連結決算も、純損益は1260億円の赤字。「平井氏は就任以来、実質的に建設的な成果は何も出していない」(証券アナリスト)と厳しい評価も広がる中、社外では株主との溝、社内では社員との溝が深まり、求心力の低下が懸念される。
ソニーが「リストラ終了宣言」を出すのは、まだ早すぎるようだ。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)
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